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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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予定にない死人

 私は高校一年生、日野明。

 幼なじみの七海理の痴話喧嘩に介入した私は、黒髪ロング女の怪しげな言葉を耳にしてしまう。

 恐らく何か勘違いされて刺された私は、目が覚めると……


 体が死んでしまっていた!


「そりゃ刺されたら死ぬよ!」


 思わずセルフツッコミをしてしまった。

 一人きりの空間は気が狂うって本当だね。

 ……まだ全然いつも通りな気がしないでもないけど、そんなこと誰にもわかるまい。

 私は変な人じゃないよ。


 さて。死んだ筈の私が、何故自我を持って話しているのか。

 夢オチという線も無くはないが、恐らく違う。


 周りを見回してみれば、何もないだだっ広い空間。

 地面は雲。もう辺り一面真っ白な雲の平原。


「考えうる限り一番雑な天国だよ」


 結論は出たが、そうなってくると困った。

 こんな無に閉じ込められたら退屈で死んでしまう。

 ……もう死んでるけど。


「神様とか女神様とか、誰でも良いから案内してくれないものかねぇ」


 そんな私の願いに答える様に、何処からともなく綺麗な声が聞こえてくる


『目覚めなさい……勇者よ……目覚めなさい』


 おお!女神っぽい声がテンプレな事を言ってる!

 私が勇者だって。なんか照れちゃうね。

 これから異世界で魔王倒して、明ちゃんを皆が崇め奉っちゃうかもしれない。

 いや、落ち着け落ち着け。ここで勇者だの異世界転生だので浮かれる奴は、ろくな目に合わないからね。


「とっくに目覚めてます。それはもうパッチリです」


『え!?は、早起きさんなんですね。すみません、こちらからは見えないもので……』


 私が起きてるのが予想外だったのか、一気に威厳が霧散する。

 こっちが女神様の素なのかもれない。

 それはそうと、姿は見せてくれないのか。少し残念。


『えー、こほん!勇者オサム=ナナミよ。あなたは死んでしま――』


「いや、私アカリ=ヒノですけど……」



『……え?』


 いや、え?じゃないが。

 なんで理が死んだことになってるんだ。


『オサム=ナナミじゃないんですか!?』


「違いますってぱ。性別からして違うでしょう!声だけでも気付いて下さいよ!」


『でも運命では、今日オサム=ナナミが刺されてここに来るって決まってるんですけど……』


「知りませんよ。私の幼なじみ勝手に殺さないで下さい!」


 運命って言葉で人の生死が決まってるのは嫌だな。

 そう感じた為か、少し攻撃的に返してしまった。


『こんなこと今まで無かったので、マニュアルにも載ってないです!ど、どうしましょう!?』


 慌ててる女神が可愛くて、私の苛立ちも収まる。

 これは最早才能の域だなぁ。

 ……まぁ、私の方が可愛いけども。


「女神様、落ち着いて。私が理の代わりに勇者やるのはダメなんですか?」


『そう出来たら良いんですが、勇者は全魔法適性を持った魂しかなれないんです。アカリ=ヒノは一つしか魔法適性が無いので……』


 うわ、全魔法ですってよ奥さん。

 その万能チート感なら理にピッタリだわ。


「……私の魔法適性って何ですか?」


『えっと、空気魔法ですね。』


 空気かぁ……あんま良い思い出が無い言葉だなぁ。

 しかも、強そうに感じない。

 少なくともエアコンは要らなそうかな。


『空気魔法……そう言えば龍の巫女なら……外界との接触も……それに私も……

 よし、これなら大丈夫かもしれません!』


 お、なんか良い案が出たみたい。


『こほん!アカリ=ヒノよ。あなたにはこれから異世界へと旅立って貰います』


 異世界!改めて言われると、やっぱりワクワクしてしまう。


『扉よ!』


 女神の言葉に合わせて、私の目の前に大きな白い扉が生えてくる。

 大理石かな?触ってみると結構ツルツルしてる。


『細かい座標の調整はまだなので、触らないで下さいね。触ると転移してしまいますから。

 う~ん、もう少し待って下さいね。まだ話もありますし。

 ……出来ました!それではアカリ=ヒノよ、龍の巫女として龍の里により一層の安寧と幸福を齎して来なさい!』


 威厳のある言葉が静かな空間に響き渡る。



『……アカリ=ヒノ?返事くらいしてくれても良いのですよ?』






『……寂しいと、私泣いちゃいますよー』

次回からやっと異世界です。

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