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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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変わらない夢のままで……

「あ、そうそう。クラウスに質問がある事自体は本当なの」


 クラウスとの会話をこなしつつ、逆に堂々とチョコが入ったボウルに手を伸ばす。


「そうか。だが、さりげなく指をボウルに入れるのは――」


「熱っ!」


「――止めた方がいいって言おうと思ったんだがな」


 ヘラに付いてたチョコが熱いんだから、ボウルに入ってるチョコが熱くない訳がなかった。

 再び冷水のお世話になる。


「で、質問ってなんだ?」


「この『蜃気動』をさ、空間魔法の『ゲート』に潜らせてから『ゲート』を閉じたらどうなるの?」


 見えない向こう側で変わらず動かせるのか、それとも接続できなくなるのか、霧散してしまうのか。

 この答えによって出来る悪戯が……いや、単純な学術的好奇心だよ。


「なんであんな凄い魔法が出来るのに、そんなことがわからないんだ」


 クラウスは少し考えると、マジックバッグ(収納の魔導具)から懐中電灯を取り出した。

 勿論これも魔導具なので、正確には懐中()灯ではないが。


 呆れた様に「なんでわからない」とか言いつつ、きちんと説明してくれるクラウスである。


「お前の『蜃気動』は、この魔導具(ライト)みたいな物だ。

 お前が魔導具自体で、照らされてる地点が幻だと思え」


 クラウスがカーテンを閉めて部屋を暗くしたので、今はライトで照らされた食器棚だけがよく見える。


「そして『ゲート』はこのホースの両端だ」


 いつの間にか太めのホースもマジックバッグから取り出している。

 このホースは魔導具ではなさそうだが……ゴムっぽい素材も普通にあるんだね。


「さぁライト(蜃気動)ホース(ゲート)に潜らせてみろ」


 何かもう教育番組みたいになってきたね。


 言われた通り懐中電灯をホースの口に当てる。

 すると、ホースのもう片方の口から出た光はシンクを照らしている。

 勿論、ホースを外してみれば再び食器棚を照らしている。


「つまり、上手くゲートを潜らせても、閉じちゃったら私の居る方に戻ってくるって事だね」


「そう言う事だ」


 クラウスの説明は実に分かりやすい。

 せっかくの機会だから、前から地味に気になってた事も聞いてみよう。


「魔法の仕組みが大体科学的ってのはわかったけど、空間魔法はどういう仕組みなの?

 それだけは見当もつかないからファンタジー感凄いんだけど」


 空気魔法は気体に関する範囲全般、熱魔法は色んな物の熱運動。

 なら空間魔法は?

 それがずっと疑問だった。


「良い質問だな。空間魔法は脳に()()できるんだ」


 もう教育番組と言うより、時事問題番組の人って感じだなぁ。


「記録って、記憶と何か違うの?」


「記憶の様にぼんやりとした物ではなく、細部に至るまで完璧に保存するんだ」


 う~ん……コピーとかバックアップとか、そんなイメージで良いのかな?


「例えば俺の『感知』は、周囲を記録する事を繰り返す魔法だ。

 その記録の僅かな違いから、動く存在を見つけ出す」


 ひょえー。なんか凄い面倒臭そうだ。

 ファミレスの間違い探しより難しそう。


 ファンタジーは現実の面倒臭い事を、ふわっと解決してくれるからファンタジーなのかもしれない


「あと『収納』なんかは、物体を記録して一度分解するんだ。取り出す時は記録を元に再構築する。

 だから、収納した物をメモしておいたりしないと、()()は有るのに()()が無いから永遠に脳の片隅に葬られる物が生まれたりするな。

 ……ここは笑う所だぞ」


 なんか余計な話まで始まった。

 それよりも物騒なワードが聞こえたのが気になる。


(分解?……再構築?……)


 私の中で恐ろしい想像が生まれつつある。



 これを確認する事は大きなリスクを伴う事だ。



 だが、この時の私は不安に負けてしまった。




「……じゃあ『ゲート』は?」


「あれは、記憶にある二地点に膜を張ってな。その膜に触れた物を分解、もう片方の膜で再構築している。

 勿論光も同じだから、向こうの景色が透けて見えて――」


 クラウスが何か言っている。

 それを理解したくない私は、否定を求めて核心に触れる質問をしてしまう。



「そ、それは『ゲート』を潜った私も?」



「勿論、一度分解されて――」




「いやあああ!!!」



 実際に使ってて問題はないのだから、恐れる必要はないのかもしれない。

 でも、あんな言い方されたら怖いじゃん。


 知る事は良いことだけど、知らなくて良い事もあると思うの。



 ファンタジーはいつまでもファンタジーのままでいて。

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