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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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私は一人じゃない

 魔法の特訓を始めてから、約二週間が経った。

 私が一人で練習してる間、クラウスはクラウスで色々している。


 自室で研究成果を纏めたり、作業場で魔導具を試作してたり。

 農家紛いの事もやってるから、本当に幅広い分野の知識があるんだなぁ。


 今はキッチンでお菓子作りをしている様だ。

 覗いてみれば、箆でボウルに入ってる何かを一生懸命かき混ぜてる。

 この匂いは……チョコだ!


「ねぇねぇクラウス~」


「なんだ?」


 かき混ぜていたボウルを置いて、私の居る方へ()()()()()クラウス。


 畑にあったカカオから作ったのだろうか。だとしたら凄い。

 私なんて、バレンタインに板チョコを溶かして固めるのが限界だ。

 いや、ああいうのは手間暇よりも大事なのは愛情だからね。


「魔法について聞きたいことあるんだけどさ」


「ふ~ん。()()()()()()ねぇ……」


「そう。魔力を込めると脳から魔素に信号が送られるって言ってたけど、魔素の濃度とかによって信号の強さも変化するのか気になって……」


 ()()クラウスの気を引いてる間に、()()チョコの味見を――


「……其処だ!」


 突然クラウスは後ろを向いて、持っているヘラに付着していたチョコを()()()()()()に飛ばす。


 そのチョコは透明な何かにぶつかり、滴る。


「痛っ!熱っ!」


 クラウスに話しかけていた明は霧散し、()()()()()()()()()()()明が姿を現す。


「ちょっと!火傷したんだけど!」


 おでこを蛇口からの冷水(魔導具の力)で洗いながら文句を言う私。


「知るか。お前が変に高度な悪戯を仕掛けるからだろ。

 ……今の魔法はなんだ?」


 クラウスも行動には呆れているが、私の魔法の発想力には驚いて居る様だ。

 それに嬉しくなった私は胸を張って答える。


「クラウスのアイデアから創り出した光を屈折させた幻だよ。

 更に独自のアイデアで声の振動も曲げる事にも成功したの。

 今回はその二つを合わせて幻が喋ってる様に見せかけたんだよ!」


 光の方は『蜃気()』音の方は『この声よ届け』と名付けた。


 姿と声の発生源を別の場所に置いたまま、私は別行動が出来る。


 欠点としては、私の感覚は本体にあるので、触れられたりすると幻だとバレる。

 それをわかっていたので、私の目が届く範囲に幻を置いて、物に触れない様に注意していたと言うのに。

 何故バレたし。


「幻のクオリティは称賛に値するよ。まさか本体と別の動きまで出来るとは……

 だが、本体の行動が杜撰だ」


 私の行動が杜撰?

 天才明ちゃんの完璧な作戦に穴があったと言うのか……


「まず、話しかける内容が大雑把過ぎる。

 お前は普段話しかける時に態々「〇〇について聞きたい」なんて言わない」


 うっ……なるだけ普段通りのつもりだったんだけど、出来てなかったか。

 私より私をわかっているとは、クラウスもやるな。


「その時点で、目の前のお前が幻の類いだろうと見当をつけ、小声で『感知』を使った。

 そこで、視覚聴覚が目の前のお前に無いのはわかった」


 そんなことしてたのか……空間魔法はずるい。

 クラウスの姿は確認してたけど、後ろ姿だったから口の動きまでは見えてなかった。


「それと、忍ぶ事に集中してたのかしらんが、お前の発言の知能指数が高すぎる。普通逆だろうに……

 あのときは「難しい!」と文句を言ってた癖に、ちゃんと理解してるじゃないか」


「いや、理解はしてないけど覚えてはいたから、なんとなくそれっぽい事を適当に……」


「良い質問だと思ったのに、質問者が質問の意味を理解してないのか……」


 数日ぶりに溜め息を吐くクラウス。

 天才明ちゃんは、感覚で全てを理解する生き物なのだ。



「ちなみにその質問に答えると、魔素の濃度は、地下だろうが建物内だろうが体内だろうが、常に一定で物理的な干渉は一切――」


「簡単に。簡単にだってば!」


「基本的にどこでも同じ感覚で魔法を使える」


 もう思考時間もなく簡単に纏めてくれる様になった。

 私が言い直させるの最初からわかってたな?





「ちなみに、電気を通すと魔素を引き寄せるアダマンタイトいう金属なら――」


「わかった!その話はまた今度聞くから!」



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