気にしないよ
「ぎゃああああああ!!!!!」
「うわああああああ!!!!!」
慌ててクラウスが、着ていた白衣を掛けてくれる。
クラウスは思ってたより紳士な様だ。
……なんでクラウスまで悲鳴上げてるんだ?
いや、そんなことより――
「何してんだお前ええええええ!!!」
指を差してテイラーを糾弾する私。最早敬語など要らぬ。
日本では私も「空気を読め」や「常識的に考えてよ」等と言われる事は多かったが、それでも最低限の良識はある。
流石にいきなり他人の服を脱がせるのはありえないでしょ!
しかも異性の!
そんな非常識なテイラーの反応はと言えば――
「安心して。別に君の裸や下着に興味は――いや、待って。
さっきの下着も気になるな。やっぱ。貸して」
うっそだろ……
この期に及んで下着まで剥ぎ取る気かこいつ。
「クラウス!これの何処が悪い奴じゃないんだよ!
行動言動、全てが悪いわ!」
「いや、すまん……
俺もまさかここまでするとは思わなかった」
「その下着も差し出すなら、もう二着まで――」
「「今お前は喋るな!!」」
二人でテイラーの言葉を封じる。
って言うか、こいつ今下着でもう二着とか言わなかったか?
味噌汁二十食と同じ価値かよ!価値観どうなってやがる!
「本当にすまん。
今思い出したが、前に見たことない服の事が書かれた文献持っていったらテイラーに引ったくられた事が――」
「言ってよ!その情報を先に!
思い出してよ!今でなく過去に!」
……いや、わかってる。
クラウスを責めるのはお門違いだよね。
「と、とりあえず新しい服選びに行こう」
どうやらクラウスは服を置いてある場所は知っているらしい。
行くよ!選ぶよ!
何故なら服を着たいからね!
――――――
廊下を抜けた先の部屋に入ると、そこは衣装部屋だった。
スカートやワンピースが多いな。
パンツも一定数あるが、どうやら女性物だけの部屋らしい。
クラウスは部屋の前で待機だ。
デザインも素敵だが、肌触りも良い。
正直、味噌汁よりは価値があるのは納得。
貴族王族が着そうなドレスから、冒険者の初期装備感のある革鎧まで選り取り緑だ。
下着が置いてある所にはポップみたいな物が貼り付けてある。
……何が書いてあるんだろう。
《ご自由にお取りください》
「……勇者はそんな文化まで伝えたのか」
見たところ、現代のよりも少し古めな作りだ。
だからこそテイラーは私のにも興味を持ったのかもしれないが、そんなのは知った事ではない。
これは自由に取って良いらしいので、詳細は省くが何着か貰った。
――――――
結局服は、あまり派手すぎないワンピースがあったからそれと、動きやすそうなハーフパンツとシャツにした。
今はハーフパンツに、念のためシャツインだ。
もうテイラーに裾は晒さない。
最初の部屋に戻ると、テイラーが待っていた。
あまり話したくないので、セーラー服直してもらったらさっさと帰ろう。
「ほら、セーラー服だよ」
(そう、セーラー服を直してもらったら――って、ええ!?)
テイラーから渡されたセーラー服は、新品同然に綺麗になってる。
破れた所なんか全くわからないし、ファスナーもちゃんと締まる。
「早っ!」
裁縫は魔法じゃないと聞いていたのに凄い……
クラウスが驚いてない所を見ると、テイラーとしては普段通りのスピードとクオリティで仕上げただけなのだろう。
「……ありがとう」
どんな心境でも感謝は大事だ。
「いや、大した事じゃないさ。それと、ごめんね。
久し振りの新しい服に、少々取り乱してしまった様だ」
少々と言う部分がかなり引っ掛かるが、一応ちゃんと謝ってくれた。
あの行動にはクラウスも驚いてたし、本当に取り乱しただけなんだろう。
「同じ失敗しない様に気を付けてね」
「善処するよ」
あんまり信用できない答え方するなぁ……
まぁ我を忘れない様に意識するのは難しいか
駄目でもその都度反省すれば良いんだよ。
態とじゃなければ問題ないさ。
あんな事されて、さっきまでボロクソ言ってたのに許すのかって?
許すよ。明ちゃんは度量が広いからね。
私は今まで度量の広い人に助けられて生きてきたのだ。
私もそんな人であろうと思うのです。
うん。そんな明ちゃんかっこいい!