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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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ありえない行動 

 大分話が逸れてしまった。


「で、その服で頼りになる人の処に行くんでしょ!」


 私が話を戻すと、クラウスは顎に手を当てて考える。


「そうだな……行くのは行くんだが、少し待て。

 貢ぎ物を準備してくる」


 二階に上がろうとするクラウスを慌てて止める。


「待って待って!貢ぎ物とか要る人なの!?

 接しやすいって言ってたじゃん!」


 私の驚きに、クラウスは坦々と説明する。


「接しやすいぞ。談笑など要らず交渉さえすれば良いんだから。

 ただ貢ぎ物さえ持っていけば、誰にでも平等に服を作ってくれる」


 明ちゃん絶句。

 クラウスが接しやすい人、それ!?


 一人くらい友達居るのかと思ってたけど、これは友達じゃない。

 うん、クラウスはぼっちだ。


「悪い奴ではないんだが……何言われても怒るなよ」


「明ちゃんの度量の広さを舐めないで」


 私が胸を張って答えると、クラウスは苦笑いをして二階に上がっていった。



 ――――――



 クラウスの準備が整ったので、向かうとする。


 身一つの明ちゃんに準備などない。

 数十秒で支度できる。


『ゲート』


 待ちくたびれたので「とう!」と掛け声と共にさっさと潜り抜ける。


 繋がった先は、民家の一室らしい。

 作りは豪華では無いが、隅々まで綺麗に掃除されている。


 私が辺りを見回していると、突然扉が開き話しかけられた。


「クラウスかと思ったが……誰だ?」


 金髪のイケメンで、クラウスと同い年くらいのおじさんだ。 

 なんて答えようか私が迷う間もなく、後ろから声が聞こえる。


「よぉテイラー、久し振りだな」


 そりゃクラウスもすぐ来るよね。


「君の連れか、珍しいね。その破けた服の修繕かな?」


 私を見て目的をピタリと当てるテイラーさん。

 ……まぁ服を扱う人の処に、破れた服着た人が来たら目的は一つか。


「貢ぎ物は?」


「将棋というボードゲームだ。一人で遊ぶ為の詰め将棋と呼ばれる問題集付きだ」


 クラウスは詰め将棋なんていつの間に作ったんだ。

 どういう物かは教えたけど、問題なんて私でも作れないぞ。


「良いだろう。ただ他の服も必要なら足りないぞ」


 この人凄いな。私の服が無い事も見抜いたらしい。

 しかも貢ぎ物を当たり前の様に受け取ってるし、更にまだ足りないと申されるか。


 将棋って異世界物なら主人公に結構な財を齎したりするんだけど、服の修繕と同価値かぁ……


「そう言うと思って、用意してきた。

味噌玉と言って、お湯で溶かせば味噌汁になる。三十食分ある」


 クラウスの方も用意が良い。

 少し喜んでるみたいだし、テイラーさんは味噌汁好きなのかな?


「……三着だ」


 交渉の方は成立したらしい。


「服はテイラーさんが見繕ってくれるのかな?」


 どちらに問いかけた訳でもないが、クラウスが答えてくれる。


「いや、後で色んな服を展示してある場所に行くから、そこで好きに選ぶと良い」


 どんな服があるのかと私が想像を膨らませていると、テイラーさんは私の周りを回りながら、無言でセーラー服を観察している。


「服がお好きなんですね」


「……」


 私が気さくに話しかけたのに、テイラーさんは全く答えない。

 聞こえていないのだろうか。


 見かねたクラウスが代わりに答えてくれる。


「お前の服はあまり見かけないから、興味深いんだろうよ」


 成る程。クラウスにとっての魔導具や地球文化みたいなものか。


 少し納得したが、それでも会話くらいはしてほしい。




 そして何故かテイラーさんは私が着ているセーラー服の裾に手をかける。


(破れ具合でも観察してるのかな?お腹まで見えてるから服を預けてからにしてほしいんだけどな)


 そんな風に私が暢気に眺めてると――






 いきなり服を持ち上げられて、一気に上を脱がされた。







 何が起こったのかわからず呆ける私とクラウス。

 手に持っても尚セーラー服を観察し続けるテイラーさん。




 一瞬の静寂の後に――




「ぎゃああああああ!!!!!」

「うわああああああ!!!!!」




 私とクラウスの悲鳴が木霊した。



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