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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
132/134

偶然じゃない

この物語を書き始めてから、約一年です。

時の流れは速いですね。

「まずいわね……」

「まずいですね……」

「まずいな……」

「まずいの?」


「「「……はぁ」」」


 同調するメロディ、クロウ、クラウスの三人に合わせて私も神妙に頷くけれど、揃って溜め息を吐かれてしまった。


「いい?黒幕として捕まえた男爵夫人が、あれだけ余裕そうにしているの。

 つまり夫人はここから逆転出来るだけの札を隠してるって事よ」


 なんだ。たったそれだけの事か。

 数多の刑事ドラマを見てきた明ちゃんならば、そんな些細な問題の答えなど簡単に出せる。


「そんなの、こっちも新しい証拠を突き付けちゃえば良いじゃん」


「お前なぁ、そう簡単に見付かったら苦労なんか――」



 ドォォオオン!



「「「「……」」」」


 余りにもタイミング良く響いた轟音に、四人揃って振り返る。


「……街の外から聞こえたみたいね」


「……音からして木が倒れた様だが」


「……森ですし魔物の仕業でしょうか」


 皆が論理的な結論を出そうとそれっぽい事を並べるが、明ちゃんは己の直感を疑ったりしない。



「新たな証拠、見つけたり!」




 ―――領兵セバスチャン視点―――


 向き合った私とウインディは、互いに剣を構え戦闘態勢をとる。


「うおおぉぉ!必殺のカットラス!」


 先に仕掛けたのはウインディだ。素早く振るわれた剣を避ける事は出来ないと判断した私は、剣で()()()事で対処する。

 剣の刀身と柄を分割する(つば)は相手の剣から拳を守る為にある物だが、ウインディの攻撃は其れさえ切り裂いて私の拳に傷を付ける。


(ぐっ……相変わらず馬鹿げた()()()()だ。だが――)


「私を倒すのは構わないが、黒幕を知りたくはないか?」


「……!」


 私の言葉を聞いてもウインディの攻撃が止む事はないが、僅かに反応を示した。

 私の声が届いてる事さえ分かれば問題はない。本命はここからだ。


「私を使い、一連の誘拐を企てたのは……男爵夫妻だ!」


「なっ……嘘を吐くな!」


 そう、男爵を尊敬しているウインディを動揺させる為に吐いた嘘だ。

 男爵は今回の事件に一切関わってない。


「嘘ではない。私が此処に居るのも、疑われている夫人の罪を先程の村長に押し付けろと男爵に命じられたからだ」


「戯れ言を!ノール様は領民の事を第一に――」


「――考えた末の誘拐だ」


「子供達を切り捨てる人じゃない!」


 奴の反論に対し、直ぐに適当な嘘で返す。

 また直ぐに反論が返ってくるが、今は戦いの最中。


(口論に集中すれば、剣技の鋭さは消える!)


「ぐあぁ!」


 右腕を切り裂かれ、ウインディの手からカットラスが落ちる。

 腱は外したが、治療するまでは使い物にはならないだろう。

 左腕でカットラスを拾うが、痛みで感応魔法も不安定な様だ。怒りが乗ってないカットラスなど、只の(なまく)ら。


「お前の敗けだ。潔く死ね」


 ウインディの首目掛け、素早く剣を振るう。


「くっ!」


 だがウインディは利き腕でない腕でも反応し、私の剣にカットラスを合わせ――



 ズドォォォオオン!!



 ――吹き飛んだ。


「……は?」


 確かに全力で剣を振るったが、人一人をあれだけの勢いで飛ばせる訳がない。


(私の剣の勢いも利用して自ら飛んだ……?)


 直ぐにウインディの下に向かうが、特に逃げたり態勢を立て直した様子もない。寧ろぶつかった衝撃で満身創痍に見える。


「一体何の真似だ?」


「我一人で敵わないのならば、街に異常を知らせて増援を呼ぶまでの事……」


「音を立てる為だけに……?」


 呆れた。来るかもわからない増援を呼ぶ為に自爆など、不器用にも程がある。

 だが、ウインディを殺した後始末や誘拐に行かせた村長の事も考えると、確かに面倒ではある。


「見事……とは言えないが厄介な置き土産だな」


「貴様の……負けだ……」


「それは過言だな。では改めて、死ね」


 最早ウインディにはカットラスを握る余力すら残っていない。

 私が振るった剣は、今度こそ何者にも邪魔されずウインディの首を――




『プロト!』



 ――切れない。


「今度は何だ!」



 森の暗闇から現れたのは――


「悪の力の手下さん!」


 ――たった一人の少女


「さっさと土に還りなさい!」



「本当に何なんだ!」



雑補足

・ふたりはプリティ

明が大好きな子供向け美少女戦士アニメ

決め台詞の「さっさと土に還りなさい!」が物騒過ぎると物議を醸した。

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