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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
131/134

その条件なら仕方ない

ロキまでに投稿しようと思ってたのに、ブラックウィドウ前日になってしまった……

 ―――クラウス視点―――


「黒幕が誰か。

 そんな事は条件を整理すれば直ぐに分かる事です」


「条件?」


 広間の誰かから挙がった声に、メロディは指を掲げて数え始める。


「1つ、バリトン商会と言う大店からの充分な信頼がある事。

 2つ、関わらせた領兵が領主へ密告する危険性を無視出来る事。

 そして3つ、領兵が拘束している犯罪者を駒として使える権力を持っている事。

 これだけの条件を達さなければ、今回の犯罪は不可能でした。

 そして、その条件を満たす人物は――」


 皆が息を飲んで待つメロディの言葉を、場違いな明るい声がを遮る。


「はいはい!4つ!

 街の子供達と頻繁に会って、ターゲットの目星を付けられた人物……それは貴方だ!」


 そう高らかに宣言するのは、当然アカリだ。

 明らかにメロディの役目だった台詞を掻っ攫い、自信満々に犯人に指を突きつける。

 やや不満そうなメロディと共に告げたその名前は――



「「セイヴィア男爵夫人――ソプラ=セイヴィア!」」



「なっ……」


 唖然とする男爵に対し、当の夫人はピクリと眉が動いただけだ。メロディとアカリが条件を挙げている段階で、自分の名前が呼ばれるのはわかっていたのだろう。


「さて夫人、何か申し開きは有りますか?

 いずれにせよ、暫く拘束させて頂く事にはなりますが」


「待ってくれ!状況証拠だけで拘束なんて――」


「状況証拠でも充分な数が揃えば王族権限での拘束は可能です」


「しかし!」


 淡々と説明するクロウに対し男爵は必死に弁明するが、当の本人は黙ったままだ。


(一見すると仕方ないと諦めた様だが、それにしては表情が――)


「ソプラ!君もどうして黙ってるんだ!

 君はこんな事を企む人間じゃないと、きちんと伝えなければ――」


 すると、夫人は遂に口を開く。

 その表情は変えぬまま。


「必要ありませんわ」


「え?」


「何故なら――」


 ()()()()ままで。



「――(わたくし)が関わってない事は、()()()()()()()()()から」





 ―――???視点―――



「――手順は以上だ。何か質問はあるか?」


 セイヴィアの街から少し離れた森の奥。

 私の言葉に、男は必死な形相で聞いてくる。


「この誘拐さえ成功させれば、本当に我がスタッカート村を最優先で支援してくれるんだな?」


「当然だ。信じられないと言うならば契約魔法を使ってやろう」


 スタッカート村の村長である男の前に手を差し出し、握手を求める。

 当然、友好の証などではなく契約魔法を行う為の手順だ。

 しかし、村長は警戒して手を握ろうとはしない。


「待て、契約魔法と言うのは意図して破れば死が待っているんだろう?

 私に求める条件はなんだ?」


 死の危険性を前にして、村長も少し冷静になった様だ。

 条件の確認は契約において最も重要な事だからな。


「お前に求める条件は、もし()()()()捕まった時は、この街で起きた全ての誘拐を自分が企んだと供述する事だけだ」


「……そ、それだけで良いのか?」


 村長からすれば破格の条件だろう。誘拐に成功さえすれば、デメリットはほとんど無いのだから。

 そして村長は遂に私の手を握った。


(哀れなものだな。

 村が貧困に喘ぐ原因となった盗賊が、誰の指示で集まったかも知らないで)


 握られた手に魔力を流し、魔法の詠唱を開始する。


『我らが交わすは命の契り――』


「誘拐が成功した際には、スタッカート村の支援を最優先に行うものとする」


 私の言葉に村長も続く。


「私が現行犯で捕まった際には、この街の全ての誘拐の罪を私が背負うものとする」


『――契約は成った。破らんとする者には死を――コントラクト!』


 手に込められた魔力が互いの全身を駆け巡り、契約魔法は確かに発動された。

 これで村長が捕まれば真の誘拐犯となり、夫人を拘束する理由は消え去る。


(それでも王女からの疑いは晴らしきれないだろうが、奴がこの街に長居できない事はわかっている。

 奴さえ居なくなれば、後は幾らでも誤魔化し様はある)


 思考も一段落したところで、契約魔法の反動で呆けている村長に発破をかける。


「……何をしている。さっさと誘拐を済ませてこい」


「あ、ああ!」


 素性もわからない男に縋るしかなかった村長は、私が()()で誘拐犯として()()()()()()誘拐を依頼したとは露程も考えていないだろう。

 誘拐に成功すれば私が捕まえ、失敗すればそこらの領兵か衛兵に捕まる。どちらにしても()()()なので、契約魔法によって村長は一生真実を話す事は出来ない。

 夫人の軽率な行動の尻拭いを、ここまで有効活用した自分に賛辞を送りたいくらいだ。


(尤も、暫く目立った行動は出来なくなる為、痛手である事に変わりはないが――)



 パキ…



 後ろから聞こえた枝を踏んだ微かな音。

 人気の無い場所である事に胡座をかいて油断していた。


 気付いてみれば余りにも分かりやすい気配に、振り返る事なく話しかける。


「尾行とは、()()()なお前にしては珍しいな」


 私が問いかけた事で、隠れていた人物は茂みから姿を現し答える。


「生憎、今日はその直情的な行動で失敗したばかりだからな。

 珍しく()も反省したのだ!」


(この特徴的な一人称……やはり間違いない。()()の中でも一番厄介な奴に見つかったものだ)


 一部始終を見られていたのは間違いないだろう。

 始末するしかないと殺気を出した私に応じて、その()は愛剣を掲げ私に名乗りをあげる。



「我が名は、疾風の()()()()()

 ――覚悟しろ、()()()()()()!」


間が空きすぎてキャラ名を忘れた方は107話と115話辺りを読むと良いと思います。

次回、シャンチーの公開日までには。

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