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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
127/134

姫は予想に収まらない

遅れました!

―――クラウス視点―――


現れたメロディが引き連れてきた衛兵達が雪崩れ込み、クロウに戦闘不能にされていた賊共は一人残らず拘束されていく。

染色男なんて未だに呆然としたまま取り抑えられている。


やっと状況が落ち着いたのでエレベーターで中庭に出る。

そして、俺達も誘拐犯も騙して只の獣人の少女のフリをしていた奴に詰め寄る。


「さてメロディ()()()()、一から十まで説明してもらおうか」


「あら?貴方なら大方は理解してるんじゃないかしら、クラウス」


挑戦的な笑みを浮かべるメロディに溜め息が出る。

常識人かと思っていたが、本質はアカリと似たようなものかもしれない。


「誘拐事件の担当は領兵だと自分で説明した癖に、やけに衛兵に頼る事を勧めるから何か関係あるんだろうとは思っていたが、それだけだ。

まさか衛兵の雇い主である王族だとは思わなかったがな」


「そこまで分かっただけでも上出来よ。

やっぱり貴方もアカリとは別方向に面白いわね」


微笑んだメロディは猫耳の()()()()()()を外し、ティアラを身に付ける。

そうすると確かに王女らしいが、となると疑問は――


「まず、何故王女がこんな田舎で誘拐されそうになんかなってんだよ」


事の発端はそこだ。アカリがメロディとユウカが拐われる所を目撃しなければ、態々こんな面倒事に首を突っ込む事もなかったのだ。


「最初は仕事で不正なお金の流れを調べるだけの用事だったわ。

でも、ここに来る途中の船内である情報を入手したの」


「ある情報?」


「ええ。平和な筈のこの街で連続誘拐事件が起きてるってね。

そんなものを見過ごす私じゃないわ。

だから事件について調べた私は、ターゲットである獣人のフリをし、(わざ)と拐われて手っ取り早く犯人のアジトを突き止めようとしたの」


予想以上にアカリみたいな事を言うメロディ。

なまじ権力はあるからアカリよりも性質(たち)が悪い。


「拐われる所までは上手くいったわ。

けれど、そこで不測の事態が起こったの」


「あぁ、アカリに助けられちまったのか」


「そうよ。まさか誰一人目撃者すら居なかった事件で、子供一人が食い止められるなんて思ってもみなかったわ。

それで『この子は使える』と思って、そこからはアカリの思うままで行動させてみたの」


自衛の為にアカリに鍛えさせた魔法が、面倒事を引き込むのに大活躍した訳だ。


「途中からは貴方(クラウス)のアシストも有って、結果は完璧よ!

見事に共犯者を捕まえて、尚且つ黒幕まで炙り出せた。

もし私の計画がアカリに邪魔されずに上手くいってたら、バリトン商会がスケープゴートにされて黒幕の存在が明るみに出る事は無かったわ」


今までの捜査やアカリの話、それに染色男の言っていた事から俺も黒幕の見当は付いた。

アカリが持ってきたのは確かに面倒事だが、それでもその行動の結果がこうして誰かを救う事に繋がっている。


(不器用で浅はかで無鉄砲でも、アカリの強い想いは人を救える力を持っているのかもしれないな……)


研究者らしくもない非科学的な事を考えてしまう程には、俺もアカリに感化されてる様だ。


「フォースホースの一件と言いアカリには驚かされてばかりだったけれど、私が王女だって事で驚かせ返せたんじゃないかしら。

さぁ、どうなのアカリ!」


ドヤ顔で尋ねるメロディだが、地下へ降りてくるのが遅かった彼女は知らない事が一つだけある。

アカからアカリに戻す為に必要な工程。



「――って寝てるぅ!」



俺の腕の中の眠り姫に、その叫びは届かなかった。

次回は24日くらい

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