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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
126/134

鴉には敵わない

 ―――クラウス視点―――


「なっ……!」


 自身の攻撃が片手で止められた事に驚愕するアカ。

 アカの拳を掴んだ黒髪の男はそのままアカを横に投げ飛ばす。


「状況も判断出来ていないのに、いきなり殴りかかるとは感心しませんね」


「ちっ……舐めやがって!」


 頭に血が上ったアカは、体勢を立て直すと再び男に殴りかかる。

 初撃の時点で力の差は明白。勝てる可能性はゼロに等しい。


(急いでカバーに入らねぇと)


 エレベーターから降りた男の方へ駆け出そうとするが、それを許すほど盗賊達も甘くない。


「させるか!全員で止めろ!」


 黒髪の男が一人でアカと互角以上だとわかった途端、盗賊達は俺の妨害に全力を尽くしだす。

 一人一人は大した事は無いが、数が集まれば制圧には時間がかかる。


 俺がもたついてる間にも、アカと男の戦いは続いている。


「申し遅れました。私は名前はクロウ。

 以後宜しくお願いしますね、アカリさん」


 戦闘中にも関わらず(うやうや)しく御辞儀で挨拶するクロウ。

 嫌味にすら感じない程に綺麗な振る舞いだが、その言葉には一つだけアカの逆鱗に触れるものが含まれていた。


「俺は(アカリ)じゃねぇ、(アカ)だ!」


「おやおや……本格的に聞いていた話と違う様ですね」


 火が点いたアカの攻撃は勢いを増すが、クロウは暢気に会話しながらも涼しい顔でそれを躱していく。


 魔法が無くとも感情的でもアカの攻撃力は一般人と比べれば桁外れだ。それを軽々と対処するクロウはかなりの実力者なのだろう。


 だが、それにしては奴の動きは妙だ。



(あいつ、もしかして――)




 ―――ダイ(染色男)視点―――


 魔法使い達の次に商会から送られてきた助っ人は、優男かと思ったがとんでもない実力者だった。


(商会がこんな秘蔵っ子をを隠してやがったとはな)


 優先的に魔法使いを送れと言ったのは俺様だが、ここまで桁外れの実力者が居るなら最初から寄越せって話だ。


 何にせよ、化け物女さえ封じれれば後は只の白衣の剣士だけ。

 奴も強いとは言え所詮は只の人間だ。俺様の盗賊団と商会の魔法使いが全員で相手をすれば勝てない道理はない。


 勝ちを確信した俺が奴等を叩きのめした後にどうしてやろうかと考えていると、化け物女と相対してるクロウが話しかけてくる。


「貴方が指揮官の方ですか?状況の報告をお願いします。

 助っ人で来たのですが色々と聞いていた話と違う様でして、正直誰が味方なのかすら曖昧で……」


 道理で先程から化け物女の攻撃を躱してばかりで大した反撃もしてい訳だ。一人で状況判断が出来ない間抜けだとは思わなかったが、間違えて味方を攻撃されては堪らないので答えてやる。


「敵はその化け物女と白衣の男の二人だけだ。

 残りは俺様の部下と商会が雇った傭兵だ」


「成る程。アカリさんの様子以外は情報通りでしたか。

 であれば、話は簡単ですね」


 そう言うとクロウは化け物女を白衣の男(クラウス)に投げ飛ばし、意識がそちらに向いている隙に拳を握りしめ――



 ――()()()殴りかかった。



「ガハッ!」


 化け物女よりはマシな威力だった為に気絶する程ではなかったが、強烈な痛みと衝撃で吹き飛ばされた俺様は訳が分からず怒鳴り散らす。


「何すんだよ!話聞いてなかったのか?

 敵はあの二人だって言ってんだろ!」


「ええ、そうでしたね。()殿()()()敵はあのお二方だときちんと聞きました」


 当然だと言わんばかりに俺様の言葉を肯定するクロウ。

 尚更意味が分からない。


「お前……商会が寄越した助っ人なんじゃ……」


「助っ人とは言いましたが『商会の』とも『貴殿方の』とも一切言っておりません」


「なっ、何ぃ!?」



 ―――クラウス視点―――


 クロウの言葉に驚愕する染色男。

 だが、戸惑ってるのは奴だけじゃない。


「おい、どうなってんだ!」


 俺に抱えられながら、ぎゃあぎゃあと騒ぐアカも居る。

 そんな彼女らを置いて、クロウは盗賊達を制圧していく。


「あいつは結局、敵なのか?味方なのか?」


 ある程度の予想は出来ているが、まだ明確な答えではない。

 今とにかく一つハッキリしてる事は――



「お前の仕事は終わったって事だ」



 不意打ちのデコピンでアカを眠らせる。

 前回と同じく左腕の出血で変わったと言う事は、同じく目覚めた時にはアカリに戻っているだろう。


 流れ弾を切り捨てつつ、俺は事の成り行きを見守る。



 ―――ダイ(染色男)視点―――


 最強の味方だと思っていた男が、次々と味方を倒していく。

 直ぐ傍にあった勝利が、今では見えない程に遠くへ行ってしまった。


「何なんだよお前……商会が雇った奴じゃねぇのかよ……」


 俺様の呟きを拾ったクロウは、笑顔で俺様の部下の腕を捻りながら答える。


「私はバリトン商会とは一切関係ありません。

 私がお仕えするのは、生涯で只一人――」


 その言葉に合わせるかの様に、ゆっくりとエレベーターが降りてくる。

 降りてきたエレベーターの扉が開かれ、見覚えのある()()が姿を現した。



「この国の第二王女、メロディ=ミューゼ様だけです」

次回は16日

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