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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
124/134

舞う明は戦わない

 ―――クラウス視点―――


『ゲート』


 男達が此方に辿り着く前に白衣を広げ、奴等の視界から消えてる間に子供達を『ゲート』に落とす。

 行き先は衛兵の詰所だ。子供だけで事件の事を証言出来るかは分からないが、少なくとも此処に居たら人質にされるだけだ。

 守りながら戦う事の大変さは前の盗賊戦でよく学んだから、対象は減らすに限る。


「「喰らいやがれ!」」


 染色男が振り回してくる鉄パイプを冷刀オオデンタで粉々に砕き、別の盗賊の剣をムラマサで受け流す。


 以前より相手の人数が少ないとは言え、魔法をほとんど使えないアカリじゃ少しの戦力にもならず、一人で相手するには少々部が悪い。


(それを相手に悟らせずに戦わないといけないな……)


 額に滲む汗は袖で隠し、不敵な笑みを張り付けた。



 ―――明視点―――


 クラウスが子供達を送ってくれた事で、心置きなく戦える様になった。

 尤も、舐めてる飴で回復した程度の魔力じゃ大した事は出来ないが。


「わわっ!……わわわっ!」


 振るわれる剣を跳んでしゃがんで(かわ)す。

 ほとんどの攻撃はクラウスが捌いてくれいるから、魔法を使わなくても、なんとか避けられる。

 体育のドッジボールではずっと内野で活躍していた明ちゃんに隙はないのだ。


 だが、盗賊達も二度目の戦いとあってかなり落ち着いてる。

 前回の戦いで私達を翻弄したヒットアンドアウェイを徹底して、体力切れを狙ってくる。


「余所者の癖に頭面(かしらづら)してた剣舞のハチャの野郎は気に食わなかったが、あいつの戦略はなかなか役に立つな。

 これからは俺様の盗賊団で活用してやろう」


 染色男の発言は小物臭いが、やってる事は堅実だから腹が立つ。


「正々堂々勝負しなさいよ!」


「はっ!それで頷く様な奴に盗賊が務まるかよ」


「悪いが俺もその言葉は嫌いだ」


 クラウスにまで否定され、堪らず地団駄を踏む。

 だが、命の奪い合いをしてる場で、一人だけコミカルな動きをしてる者が見逃される筈もなし。

 私が避けられない瞬間を狙って盗賊の剣が振り下ろされる。


 刹那の時間で私がどうすべきか()()()いると、腕を引っ張られ私が何もせずとも刃は空を切った。

 クラウスに抱き止められ状況を理解した私は、取り敢えずホッと息を吐く。


「油断するな。雑魚とは言え一丁前に武器は持ってるんだ」


「ざ、雑魚だと!?お前ら、やっちまえ!」


 クラウスの安い挑発に乗り、盗賊達の動きが攻撃的に変わる。


 対するクラウスはオオデンタを鞘に戻し、ムラマサと私を手に舞う。優雅な動きで全ての攻撃を躱し、いなす。

 その美しい動きはさながら舞踏会。ハチャよりもよっぽど剣舞している。

 常に予期せぬ方向に引っ張られる私は飴を喉に詰めない様に必死だ。


「糞が!おちょくりやがって!」


 キレのあるダンスは盗賊達には余裕があるかの様に見えてるのだろう。

 だが実際には私で片手が塞がってる為、より反撃が出来なくなっている。



 その上、エレベーターが降りてくる音が聞こえてくる。



「チッ……敵の増援か」


 以前の戦いとは違い、ここは完全に敵地。

 例え消耗させたとしても向こうは補給が可能なのだ。


(このままじゃ駄目だ……)


 クラウスの実力から考えれば、私を守りながらでなければ簡単に勝てる筈だ。

 なのに、勝手に着いてきた私のせいで窮地に立たせてしまってる。



()()()()()場合じゃない!)



 覚悟を決めた私は、なけなしの魔力で魔法を使う


『この声よ届け』『クラップ!』


「「「ぐあぁぁ!」」


 盗賊達が怯んだ隙に、私達は態勢を立て直す。


「お前、突然何を……」



「私も、私の持てる全力で戦うよ。それが例え――」



 左手をムラマサの刃に添わせ、思い切り振り抜く。

 当然、強烈な痛みと熱が襲ってくる。

 突然の自傷行為に盗賊もクラウスも驚く。尤も、クラウスの驚きは私の行動の意味を理解したからかもしれないが。



「――っ!……例え、私が()でなくなるとしても!」



 伸ばされた左腕から舞い散った鮮血が翼の様に広がり、(あか)き竜が降臨する。




「さぁ、漸く俺の時間だ!」

また一回休みで次は8日です。

更新頻度ガタガタですみません。

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