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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
123/134

居ない訳がない

「あいつは、ずっとここに居るの!」



ガンッ!



硬いもの同士が激しくぶつかった様な音が響く。

少なくとも私が殴られた訳ではない。

慌てて振り返ると、左腕を抑えたクラウスと転がった変な色の鉄パイプが目に映る。


「え、何……?」


状況がまるで分からない。

確かに此処には誰も居なかった筈だ。

エレベーターから此処までに隠れられる場所なんて樽くらいしか無いし、其処もさっき確認したばかりだ。


「落ち着け。姿の見えない何者かに殴られただけだ。

咄嗟に腕で防いだから、怪我も大した事はない」


そうか。私だって姿を消せるんだから、敵に居たっておかしくはない。

と言うか、普通は鉄パイプで腕を殴られたら大怪我なのだが、流石は頑丈な龍人だ。


「アカリ、『感知』いけるか?」


私の『感知』は視覚じゃなくて触覚で感じる魔法。

それなら、見えない敵でも何処に居るのか直ぐに分かる。


「それくらいならいけるよ!『感知!』」


クラウスや樽。目に見えてる物と同じ場所にあるのが分かる。


「違和感のある場所は……あそこ!」


私が指差すと、クラウスはすかさず『収納』していた瓶を投げつける。

真っ直ぐ飛んでいった瓶は何も無い所で割れ、中の液体が何者かにかかる。



「ぎゃあああ!!!」



ジュウゥ……と焼ける様な音と叫び声が地獄のハーモニーを奏でる。


「うわぁ……悲鳴がえげつないんだけど。何を使ったの?」


「安心しろ。液体が触れた部分に魔法を使うと熱が発生するだけの薬品だ。

つまりは、あいつが大人しく姿を現せば痛みも収まる」


私達の会話を聞いていたのか、男は姿を消す魔法を解いた。

恨めしく此方を睨む顔は、()()()()()()事も相まって酷く凶悪に見える


「鉄パイプを見て染色魔法で保護色にして隠れてると見たからな。肌への魔法は封じさせてもらったぞ」


「おのれ貴様ら、また俺様を虚仮にしやがって……」


その言葉を聞いて、私とクラウスは顔を見合わせる。


「「()()?」」


既に一度私達に虚仮にされた様な口振りだが、正直全く覚えがない。


「あの~……何処かでお会いしました?」


「忘れたとは言わせないぞ

貴様と死闘を繰り広げた、この俺様を!」


「………………あ~……はいはい、久し振り!」


「何が久し振りだ!まだ一週間も経ってないだろうが!」


やっぱり適当な返事じゃ駄目だった。

情報も出揃って来たんだし、しっかり考え直そう。


(一週間以内、死闘、潰れた鼻、染色魔法。ここから導かれる答えは――)



「……あー!染色男だ!」



「なんだその雑な渾名(あだな)!俺様にはダイって名前が――」


「あぁ。アカに最初に殴り飛ばされてた染色男か」


「だからその渾名やめろ!」


忘れもしない……事も無いかもしれないが、こいつは私が竜人に変身した原因。

フルート村からの馬車の中で私の左腕を斬った盗賊だ。

だが、そうなってくると別の疑問が生じる。


「なんで貴方が此処に居るの!?」


盗賊は間違いなく漏れなく全員捕まえた。

特にこの染色男は透明化が厄介だったから個別でしっかり捕縛して、きちんと領兵に引き渡した筈だ。


「街中でお前を始末出来てたらとっくに自由の身だったのに、暴れさせた魔物が弱かったせいで積み荷の警備係に回されたんだよ」


街中で暴れさせた魔物……バンバの事だ。

許せない。あれもこいつの仕業だったなんて。

けれど、今の話の中で一つはっきりした事もある。



「成る程。誘拐犯の親玉と取引したって事だね」



私の言葉に「しまった!」と口を抑える染色男。

盗賊を逃がすなんて、余程の黒幕が後ろに控えてると見える。


「ちゃちゃっとしょっ引いて、洗いざらい吐いてもらうんだから!」


染色男は歯を食い縛っていたが、突然ニヤリと余裕の笑みを浮かべる。


「な、何さ。姿の隠せない貴方なんかクラウスの敵じゃないんだから!」


今の私は戦力にならないが、姿を消せない染色男一人ならクラウスだけでちょちょいのちょいだ。


「安心しろ。俺様も一人で勝てるなんて自惚れるつもりはねぇ」


(なら、どうして……)



その答えは()()()()()()()()()()



「え、エレベーター……」



扉が開かれ、十五人程の男達が溢れ出してくる。


「全員、お前達のせいで捕まった仲間(盗賊)だ。

お前達相手に油断なんてしない」


潰れた鼻の悪人達は、各々の得物を構える。


「さぁ、復讐の始まりだ!」

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