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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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だらけない為に

 窓から降り注ぐ暖かな陽射しが私を包み込む。

 こんな日はもう少しだけ眠っていたい。


「おい、そろそろ起きろ」


 誰かのうるさい声が聞こえる。

 私の眠りを妨げないで頂きたい。


「乙女の寝室に勝手に立ち入るとは、感心しませんわね」


「もう昼過ぎだぞ、いい加減起きろ」


 駄目だ。お嬢様モードでも全く相手にしてくれない。


「クラウスの研究に付き合わされて疲れたの!

 もう少し寝かせてくれたって良いでしょ!」


 約束だから付き合ってるが、しんどいものはしんどいのだ。

 少しは明ちゃんを労りたまえ。


「お前それ言い続けて、今日で三日目だぞ!」


「……あら?そうでしたっけ?」


 ちょっと何言ってるかわからないので、明お嬢様は静かな眠りに……


「毎日夕方に起きてきて、よく夜も眠れるもんだな!

 ここまでくると感心するわ!

 だが、流石にもう俺を言い訳にはさせないぞ!」


 そう言うと私の掛け布団を取り上げるクラウス。


「わーん、お母さん布団返してよ~」


「誰がお母さんだ!」


 怒鳴り声で流石に目も覚めてきた。


 二度寝とは、絶妙なコンディションで成り立つ物なのだ。

 一度妨げられたら、なかなか難しいのである。


「お前は甘やかすと永遠にだらけ続ける様だな。

 ……よし、決めた。朝飯後は魔法の訓練だ」


 なんか面倒臭そうな事を決められてしまった。


「お前はまだ若いんだから魔法を使いまくって、魔力を出来るだけ鍛えた方が良い」


「えー、でも女神様の加護もあるし大丈夫なんじゃない?」


「いつ何時危険が訪れるかはわからん。まだ伸び代はあるんだから頑張れ」


 クラウスは時々正論で私の言い訳を封じる。

 そういうのズルいと思います。



 ――――――



「とりあえず、お前の使える魔法を色々使ってみろ」


「教官、手の内は秘密にした方が良いのではありませんか?」


 綺麗な敬礼を決めて問いかける。

 この言い訳なら短めに終わらせられるんじゃなかろうか。


「基本的にはそうだが、教官にまで隠す奴があるか」


 話に乗ってきた上で叩き潰されたので、大人しく魔法を使う。



 手始めに『結露』で濡らした服を『ドライヤー』で乾かし、『スチームアイロン』をかけてみせる。


 私がかっこよく服を整えていると、クラウスが質問してくる。


「空気魔法はそこまで幅広い温度変化が出来るのか?」


 クラウスの質問に頬が緩む。

 遂にクラウスも知らない事を私が披露してみせたのだ。


 せっかくの異世界なのに何故か教育水準が高くて、今までチートやら無双要素が全然なかった。


 女神様の加護はあったけど、疲れないってくらいであまり目立たない。

 ……いや、感謝はしてるんだけどね。それはそれよ。


「あれ?空気魔法の温度変化って当たり前じゃないの?」


 ふっふっふ。やっと言えた「何かやっちゃいました?」系の台詞。

 今までやっちゃった事と言えば作物泥棒くらいだったから、名誉挽回のチャンスだ。


 さぁ、私の独創性に驚いたと素直に言いなさい!


「俺の知ってる空気魔法使いはプライドばかり高い奴でな、研究に協力なんかしてくれなかったからな」


 ……はしゃぎ辛い!


 私が独創的かすらわからないの想定外過ぎる!

 せめて是か非かはっきりしてほしかった。


 他の空気魔法使い!自分の事だけ考えずに他人の為に行動しといてよ!


「お前のお陰で一つ判明した。感謝する」


 ……居た堪れない!


 無双だのと夢想してたのが恥ずかしすぎる!

 なんでこういう時は素直に感謝するんだよ!


「それだけの温度差があれば、光魔法みたいな事も出来そうだな」


 しかも私が思い付かなかった事提案してくれた。

 もう感謝するのはこっちだよ。


「温度差で光魔法って言うと……蜃気楼みたいな感じ?」


 確か暖かい空気だと光が曲がるとかそんな感じだった気がする。


 よし、よく覚えてたぞ私!

 十分に天才を名乗れるよ!


「そうだ。自然現象だと精々浮いて見える程度だが、上手く使えば幻影魔法の領域までたどり着けるかもしれない」


 成る程、天才明ちゃんならば辿り着けるに決まっているな。


「よし、そうとわかれば特訓だよ!」


 クラウス指導の下、特訓に明け暮れる日々が始まった。


 火が点いた明ちゃんの進化は凄まじいのだ!








(こいつの扱い方が、だんだんわかってきたな)


 クラウスもある意味進化していたことを、明が知ることはなかった。


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