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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
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誤解は減らない

 やっと宿に辿り着くと、何故か受付の人に悲鳴をあげられる。

 もしかしたら、宙に浮いた気を失ってる女の子と大男を連れてるからだろうか。


「あ、この人達なら大丈夫なんで、安心してください!」


「えぇ……」


 何故だかドン引きだ。

 ……あ、それとも私が血塗れだからだろうか。


「この血は、この彼の物なんで安心してください!」


「えぇ!?」


「本当にどうして、そこまで誤解を招く言い方が出来るのかしら」


 メロディは深い溜め息を吐くと、さっさと階段を上がってしまう。

 何か誤解があるとわかっているなら解いてくれても良いのに。


「え、あの……え?」


 受付のお姉さんは珍しくパニックになってるが、マグマとユウカちゃんを早くベッドに移してあげたいし、まぁ多少の誤解くらい良いか。


「とにかく心配は要りませんので~」


 それだけ受付のお姉さんに残して、私も階段を駆け上がっていった。



 ――――――



 マグマをクラウスのベッドに、ユウカちゃんを私のベッドに寝かせて、私達も椅子に腰かける。


 宿に入る前に土汚れはかなり落としたが、やはり血塗れのワンピースはそろそろ着替えたい。

 今この部屋で他に起きてるのはメロディだけだし、着替えるなら今のうちだろう。


 念の為にマグマの掛け布団を上げて目元まで覆い隠したら、ちゃっちゃとセーラー服に着替える。


 すると、退屈そうにしていたメロディが、突然目を丸くして私に聞いてくる。


「貴女、その()()どうしたの?」


 セーラー服を見て制服と言われたのには少し驚いたが、どうせ何代目かの勇者が制服として世に広めたんだろう。


「どうって……普通に――」


 通ってた学校のものだ。と言いそうになったが、ギリギリの所で気が付いた。


(やば。これ日本の学校の奴じゃん)


 制服と言うのは、着ている人が何処の学校に所属しているかを示すものだ。

 そんな所属先を見せびらかす様な服を着ているのに、何処の所属か説明出来ないなんて不自然極まりないだろう。


 もし日本の学校のものだとバレたら、きっと「勇者だ!」「やはり天才美少女だ!」と大騒ぎになって龍人の追っ手にも見つかってしまうかもしれない。


 クラウスの為にも、天才的な頭脳をフル回転させて必死に誤魔化さなければ。



「これは……コスプレ!そう、コスプレ衣装なの!」



 僅かな沈黙の後、メロディが口を開く。


「なんだ。コスプレだったのね……」


 メロディは残念そうに溜め息を吐く。

 そもそもコスプレと言う言葉が通じるのかすら賭けだったが、なんとか納得してくれた様で良かった。


「う、う~ん……」


 私が焦って声を張ってしまったせいか、ユウカちゃんが目覚める。

 私達が駆け寄ると、意識がハッキリとしてきたユウカちゃんは、突然ひしと私に抱き着いてきた。


「アカリお姉ちゃん、怖かった……」


「よしよし。一日に二回も気絶したら誰だって怖くもなるよね」


 慰める様に頭を撫でるが、ユウカちゃんは首を横に振る。


「あの、違うんです。さっきの……拐われる時に嗅がされた臭いと同じ臭いだったんです」


 さっきの臭い――コリオーバーの事だろう。

 それが、誘拐犯も使ってるものと同じだとしたら……


「それって……もしかして、さっきの事件も誘拐犯達の仕業って事!?」


「そうね。あの粉末は明らかに故意に投げられた物だったもの。

 幾ら入手が容易なコリオーバーと言えど、あれは私達を狙った物と考えるのが自然ね」


 私の天才的な推理にメロディも頷く。

 只、入手が簡単となると臭いから犯人を特定するのは厳しそうなのは残念だ。



ユウカちゃんはキョロキョロと何かを探して見回すと、私を見上げて聞いてくる。


「あの……マグマさんは?」


成る程。探しているのはマグマだったか。

丁度、私の体で隠れて見えなかった様だ。


「あぁ、そこだよ」



 私が指差した先には、顔まで白い布(掛け布団)に覆われて静かに眠っているマグマが居る。


(あれ?なんかこの絵面、まるで――)


 すると、私が思った事と同じことを考えたのか、ユウカちゃんはポロポロと涙を流し始める。


「まさか……マグマさん、死ん――」


「――でない死んでない!大丈夫、ちゃんと生きてるから!」


 私はユウカちゃんを安心させる為に、マグマの掛け布団を勢いよく捲る。


 この時の私は、自分が着替えたことですっかり忘れていた



 ――まだマグマが血塗れだと言う事を。



 そんなマグマの姿を見てユウカちゃんはワンワンと大声で泣き出す。


「うわ、なんだ!?」


 その大きな泣き声でマグマがガバッと起き上がる。

 驚いたユウカちゃんがくらりと倒れそうになり、メロディがそれを支える。


 もう、てんやわんやだ。


「な、何がどうなってんだ?」


 私は戸惑うマグマの肩に手を置いて一言。



「説明は、難しいよ」

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