プロローグ
「あー...早く帰りてぇ」
「何回言うんだよそのセリフ」
ある夏、ある高校の2年の教室で俺と友人の快斗が自分達の席でだらけていた。
「早くあのクソゲー終わらせてぇんだよ」
「おいおい、まだやってんのかよ。
ストーリーがめちゃくちゃだとか選択肢がキモいのばっかだとか好みのキャラがヒロインじゃねーだとか文句しか言ってなかったじゃねーか」
「俺は快斗クンみたいに毎日リアルが充実させてくれるような彼女がいないんでね。まじつまんねぇけど全ルートやれば推しも見つかって面白くなるかもしんねーだろ?
あと古本屋でなぜか買っちゃったんだからその分は楽しまねーと損だしな」
「本当お前って悪い意味で人生損してるやつだよ...
青春なんてあっという間に過ぎちまうぞ?
いつまで失恋引きずってんだよ。
二次元にいかねーで現実見ようぜ」
「そんな事は分かってるっての」
「今度誰か人紹介してやっから」
「まじ!?じゃあかわいいってよりは綺麗系の美人で頼む。
あー、あとは...」
そんなこんなで軽口を叩きながら昼休み、そして5、6校時が終わる。
帰る生徒、部活に行く生徒で騒がしくなる放課後、他の部活に行く友人と別れ、俺と快斗は校門へと向かう。
ちなみに俺ら2人は帰宅部だ。
帰り際、
「ゲームばっかやってないで今度体動かしにいこうぜ。
フットサルとか」
「あーいいなそれ。じゃああのクソゲー全クリしたら連絡するわ。じゃあな。ちゃんと彼女さん送ってやれよー」
といつも通り背を向けてヒラヒラ手を振り明日からの土日の遊ぶ予定を考えながら家に帰る。
*******
「ただいま」
そう言い俺は両親が出張で誰もいない家に帰ると、鞄を置き部屋着に着替え、部屋にあるゲーム機を手に取って起動させる。
「よし、久しぶりにフットサルとかしたいし今日で早く全ルートクリアしてやるとするか」
確かヒロインは七人中五人は攻略したから頑張れば今日中に終わるかもな。
お願いだからせめてこれ以上うんざりするような展開は無しにしてくれよ...?
*******
ーーーしばらくして
「ふぅー...紆余曲折あったがこれでやっと全ヒロインのルート制覇したぜ。最後までイライラさせてくれたのに終わるとなんかめっちゃ清々しい気分だ」
でもやっぱつまんなかったな。出てくるキャラは性格ゴミばっかだしバトル要素は薄いし、主人公現実にいたらただのクソ隠キャだし。あんなんでフツー女子落とせねぇから。
しかもヒロイン全員最後まで好きになれなかったし。ヒロイン以外にはめっちゃ好きなキャラいたけど。
作者の歪んだ性癖が垣間見えるゲームだった...
ってマジでこのゲームの愚痴ならいくらでも出てくるわ。思い出しただけでもイラッとするし、なんでこんな無駄に時間使ってクソゲーやってたんだ俺。
高校入ってからダメ人間街道爆走中だなぁ...
俺はゲームを終え、正面からベッドに倒れこんだ。
ゲームに集中しすぎたせいか、自分がまだ帰ってから何も飲食していない事に気づく。冷蔵庫を覗くが、飲み物しか無かった。
とりあえず麦茶を飲み干す。
もう夜遅えけど飯買わないとな...
めんどくせえけどコンビニまで行ってくるか。
とりあえず財布と上着、スマホっと...あ、あとイヤホンも...
*******
飲み物と夕食を買い、イヤホンを再び付けて歩く。
そうして家まで帰る途中、突然イヤホンから音が消えた。
「あれ?音消えた。やっぱもうちょい高いの買うべきだったか...?」
そしてスマホをつけようとしたが、スマホもつかない。
「は...?スマホ充電絶対半分はあったぞ...?バッテリーそんなに悪くなってたのか...?」
仕方なくそのまま帰ろうとした所、後ろから突然ブスリ、と嫌な音が聞こえた。
何が何だか分からないまま、そのまま前に倒れ込む。
は...?まさか俺...刺された?え...死...
そして、呆気なく俺の短い人生が幕を閉じた。