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序:未来の話

 周りを見渡せば、正殿に座す数多の臣下。

 みな、目の前の玉座に座す新たな皇帝を待ち望んでいた。勿論、男もその一人である。


 ――ついに、この日が来たのだ。



 始まりは十数年以上前に遡る。

 その日、男は炎の中に全てを失った。しかし、代わりに一縷の希望を手に入れた。

 それが彼の主との出会いだ。


 主君と出会ってからの人生、まさに波乱万丈と呼ぶにふさわしかった。

 時に名前を変え、時に姿を変え、身分の無かった男は、一夜にして宮城へと出仕する地位を得た。


 主君と共に駆けた十数年。


 出会った当時は細く、みすぼらしい身なりをしていた男も、人並みの体躯となり、肩で切り揃えられていた髪も、今は背中ほどまで伸びた。

 逆に、出会うまで無かった目元の隈は、今も堂々と男の目元で主張をしている。


 何度も怪我を負うわ、閉じ込められるわ、挙句殺されかけたりもした。

この十数年退屈だと思うことは一度も無い。それほど目まぐるしい日々だった。



 長いようで短い今日までに思いを巡らせていると、始まりの合図が殿中に響き渡る。

 合図と共に正殿に居るすべての人間が一斉にこうべを垂れた。


 一つの塵もない床が視界を覆う中、静まりかえった殿中に衣擦れの音だけが聞こえる。

 玉座の前で立ち止まったであろう(くつ)音に、男は思わず息を呑んだ。今更ながら、心臓がばくばくと音を立て始める。

 数秒後、顔を上げた先に見える景色に、高揚がとまらないのだ。


 一斉におもてを上げると、先ほどまで誰も居なかった玉座に一人の青年が座っていた。

 冕冠(べんかん)と呼ばれる冠には(りゅう)と言う飾り玉が幾本も垂れており、顔は見えない。


 すらりと伸びた背に、男よりも背が低かった少年時代の面影はない。体躯に恵まれた目の前の青年は、龍の刺しゅうの施された真新しい漢服がよく似合っていた。



 男は儀礼の合図が鳴るまで、何度も目の前で一際輝く旒の数を心の中で数えた。


 ――十二本の旒。



 すなわち、青年の被るそれこそが皇帝のみ許された冕冠である証拠だった。

それを被った主君が、目の前に居る。その姿だけでも男にとっては胸が締め付けられるような光景だった。


 背筋を伸ばし、両手を肘置きに乗せて、肩幅ほど足を広げて座す若き王の貫禄に、男を含んだ従者たちの目元がきらりと光る。


 隣に座す古参の男も同じことを考えていたのか、肩が時折小刻みに震えていた。

 普段の冷静で寡黙な姿からは想像もできない姿に、最古参であるからこそ感じる熱い思いが胸中にあるのだろう。


 まさに、今。

 男の主君の即位の儀が、盛大な音楽と共に始まろうとしている。



 男――楊武(よう ぶ)と、主君・朱 央晧(しゅ おうこう)の長い復讐の()()が、此処に完結した。


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