ドルオタ部屋編5
「じゃあそろそろ帰るけど、今日はしっかり寝て、明日はちゃんと学校来なさいね」
「了解しました! ………あ、ちょっと待って。渡したい物が」
そう言って固城が机を漁った後、ブレスレットが登場。星型の水晶を基調としたもので、オーダーメイドっぽいけど石の組み合わせにセンスを感じさせる可愛らしい一品になっている。
「良ければ受け取ってくれませんか? その、彼女へのプレゼントです」
「えっ!? いいの!?」
まさかのサプライズに色めいた声で驚いた後、早速右腕に装着。制服にこのブレスレットは合ってないけど、家に帰ったらどの服に合うか探してみよう!
「無理して付ける必要ないから。気が向いた時に付けてくれれば…」
「ありがとう! すっごい嬉しい!! 大切にする!!!」
「お、おう。喜んでくれて僕も嬉しいです」
何これ!
こんなに嬉しいのは初めてかも!
勢いで固城の彼女になったけど、彼氏彼女ってこうなんだ! 友達が彼氏からのプレゼントにすっごく喜んだり、渡すプレゼントに悩んだりな話に正直ピンとこなかったけど、こういう事だったのね!
「あっ、もしかして土日、私の為に探してくれたの?」
マズい、顔がニヤけそう。
だけどこの感情に抗えないというか、固城がどんどん格好良く見えてきて、ドキドキの加速が止まらなくてどうしよう!!
「いや、買ったのは随分前で、気に入ったならトートバックもどう? これも女の子が使っても変じゃないし、ブレスレットの星とお揃いだよ?」
……………あれ? 何かがおかしい。
私へのプレゼントじゃないのに、何で女物アイテム持ってるの? あとこのトートバックにプリントされた星マーク、どこかで見たというか、ついさっき見た気がする。そうしてこのオタク部屋を見回すと、どうやらきららちゃんグッズは星を基調とした物が多いみたいだ。
「固城、このブレスレット何処で買ったの?」
「ん? きららちゃんイベント会場だけど」
そっかー、そういう事かー
この回答に心から納得した後、改めて彼氏からの初プレゼントを凝視。
このブレスレットに罪はない。
嬉しかったのも本当だ。
だけど……
「固城、今からよく眠れる呪いをしてあげるね」
「本当に!?」
「うん、じゃあそこに立ってリラックス。目を瞑って全身の力を抜いてね。そして大きく息を吸ってから、ゆっくりと全部吐き出してね」
この指示に従い、全ての息を吐ききった所で、
ドゴスッ!!!(渾身のボディーブロー)
「………………………………………かはっ」
「知ってる? 脇腹の筋肉は鍛えない限りペラペラで、そこにある肝臓がダメージを受けると体の奥底から鈍痛がして、身体機能が一気に低下するの。あと息を全部吐ききった瞬間が最も効果的だから、これでぐっすり眠れるね」(ニッコリ)
そうして音もなく倒れた彼氏をベッドに移動させてから家の戸締り確認・置手紙をしてから固城家を後にする。
「まだ昼前だし、今から戻れば午後の授業には出られるかな」
そうして学校に戻り、担任に頭を下げてから午後の授業に参加したけど、クラスの皆がやけによそよそしかったのは、気のせいかな?
呪い=呪い