ドルオタ部屋編2
心臓と共に体が飛び跳ねてすっ転んだ後、見守の左手が僕の顎を固定。そして高らかに上がった右手にはメロンが握られている。
「お見舞いのメロンよ~、はい、あ~ん ♥」
「無理っ!! 1/1メロンは口に入りません!!!」
メロンは果物ではなく瓜科の野菜、つまりカボチャの仲間で結構な硬さを誇っており、その分厚い皮を切らずに林檎っぽく食べるとか絶対に無理!!!
「そう? 勢いよく口に何度も叩き込めば入るかもしれないわよ?」
「それただの拷問!! メロンの正しい使い方思い出して!!!」
倒されながらも見守の手首を掴んで応戦。
激しく見つめ合う絵になってはいるが、ハートフル成分が皆無なのは言うまでもない。
「てゆーか何で背後に!?」
「庭に回って空いていたベランダからお邪魔させてもらったわ。だから観念してメロンを喰らいなさい。病気なんでしょう?」
「喰は動物の食事! あと病気じゃないから!!」
「え~、じゃあ何で学校休んじゃったのかな~?」
「それは……、その……」
くっ、これはもう制裁を受け入れるしかない。
観念して抵抗を解き、メロンの皮を噛み砕いて消化するのは大変そうだなーと思いながら目を瞑って覚悟していたら、
こつん(メロンがやんわりと額に着地)
「……………あれ?」
予想外な衝撃に困惑しながら目を開けると、怒りが消え失せた見守の顔が目に映る。
「病気じゃないなら、ちゃんと来てよ」
それはとても悲しそうな声で、更に何かを堪える表情になり、見守の瞳が潤みだした所で、
「ごめんごめんごめんなさい!!!」
勢いよく額を地面に叩き付けて土下座。
今の見守を見ちゃ駄目だ!
こういう姿は誰にも見られたくない筈で、許しが貰えるまで何時間でも待とうと決めて土下座を続けていたら、見守の気配が近付いてくる。
「本当に病気じゃないの?」
「はい! だけど寝不足で顔色悪いから休めって親に言われたのは本当です!!」
「どうして寝不足?」
「うぐっ、それは……」
言いなくない。
言いたくないけど…、くぅ……、
「み…、見守の告白で悶々とし続けて、全然眠れない休日だったからです」
恥ずかしい!!!
やっぱり勇気を出して登校すれば良かった!!!
「……………そっか」
そんな呟きが聞こえた後も延々と土下座タイムが続き、流石に足が痛くなってきた所で、
「もういい、許すから顔上げて」
そうして恐る恐る顔を上げるといつも通りの見守がいて、どうやら本当に許されたみたいだ。
「今後休む時は私に連絡、だから携帯アドレス教えなさい」
「はい、こちらになります」
すぐに携帯を差し出してアドレス交換。
生まれて初めて同世代の女の子の連絡先をGETしてしまった。
「私がコメントしたら1秒以内に返信ね。でないと…」
「せめて3秒で! つーかメロン振り揚げながらのお願い止めて! 食べよう!! 一緒に美味しく食べましょう!!!」
そうしてリビングに移動、見守をソファーに座らせてから僕は台所でメロン(凶器)を解体、飲み物も用意して見守の所に戻る。
「とにかくお見舞いに来てくれてありがとう。……見守? どうしたの見守?」
さっきまでの威勢が一遍、借りて来た猫の如く縮こまって僕を見ているけど…、しまった!! 女の子だから麦茶じゃなくて紅茶にすべきだったか!? それともメロンにはメロンソーダなのか!? 女の子の来客なんて初めてだから勝手が分からない! どうしよう!!
* * *
何でこうなっちゃったの!?
不満をぶちまける事しか頭になくて、彼氏の家で2人っきりは早過ぎだよ! とにかく冷静に振る舞いつつ、メロンを食べたら速やかに帰ろう。そう思って待ち構えているのに中々メロンが差し出されず、どうして?という思いで固城の顔を凝視、お互いにじーーーっと見つめ合っていたら、固城の面持ちがどんどん神妙になっていき、それにつられて私も畏まっていたら、
「見守、僕の部屋で一緒に食べない?」
メロンに合う飲み物って何だろう? 生ハム?