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握手会・練習編1

「え? 何で見守に500万?」

「このままじゃその500万が哀れ過ぎよ! 何で握手しながら話すだけで500万? それなら私と話す方がずっと安上がりだし、自分で言うのもなんだけど、私って結構美人だと思うけど?」


 そう言い放ってきた見守は確かに美人で、スラッと体型に長い髪がとても似合っていて、男子人気もすこぶる高いと聞いている。


「けど見守は中身がなぁ。そもそも僕はきららちゃん一筋で、他はどうでぼっ!!!」

「ごめんなさい手が滑ったわ。そのせいで私の手がとても痛いわどうしてくれるの?」

「殴って文句とはこれ如何に!?」


 やっぱり僕にはきららちゃんしか居ない!

 運命の出会いを遂げる為に一刻も早く500万使わないと!


「大体、固城は女子と握手した事あるの?」

「……………母親はカウントに」

「含まない。OKもう分かった本当に可哀相」

「可哀相って言うな! これはその、ほんのちょっとだけピュアなだけで」


 どんどん綺麗になっていく同い年の女子達にどう接していいか分からず、つい遠慮勝ちな態度を取ってしまい、同世代で遠慮なく話せる女子は目の前にいる見守くらいなのだ。


「はぁ、滅茶苦茶な行動力があるのに何でそこだけ臆病?」

「仕方ないだろ。緊張しちゃうんだから」


 だからこそのアイドルだ。

 こんな情けない自分でも、きららちゃんなら受け入れてくれるに違いない!


「てゆーか、そんなチキンハートで話せるの? 仮に握手できたとしても、ロクに話せずに終わりそうだけど?」

「ふっふっふっ、心配無用! こんな事もあろうと秘密兵器を作ったのだ!」


 意気揚々と携帯を提示。

 そこにはニョキッと手が生えた物体?が写っている。


「何これ超気持ち悪い」

「きららちゃん抱き枕の手首部分に綿の詰まった手袋を縫い付けたのだ! これで毎晩練習すれば自然と話せる様に…」



   バキッ!!!


「僕の携帯がああああああああああ!!!」



「ごめんなさい手と殺意が滑ったわ。でも安心して。代わりに私が病院に連絡するから」

「病院より携帯ショップに連絡して!!」


 急いで携帯を調べたが故障はなく、安堵して立ち上がると、見守が手を差し出している。


「練習だと思って握ってみなさい。綿袋よりはマシな筈よ」

「え? いやでも…」

「早くしなさい握り潰すわよ」


 何を!?

 だがこれはまたとないチャンスで、ここはご厚意にあやかろう。


「ありがとう見守、では失礼して…」

「あーごめんちょっと待って」


 そう断ってから軍手を装着・更にその上からゴム手袋をめ、顔はマスクとゴーグル、胴体にレインコートを着用してから、



「はい、どーぞ」

「僕は汚染物質かっ!!!!!」



 こんな完全武装と握手しても1mmも嬉しくない!

 つーかどっから出てきたそのセット!!


「え? でも握手会ってこういう物じゃないの?」

「いや確かに安全確保は必要だけども、ココまで酷くないからね!」


 そうして渋々と見守が脱いだ後、再び手が差し出される。


「はい、どーぞ」

「お、おう。では失礼し…」



   五寸釘(指の間に3本)



「刺さる刺さる風穴あいちゃう!!」

「あっごめん。藁人形とセットの方が良かった?」

「どういうオプション!? 僕の手は神社に奉納されちゃうの!?!?」


 再抗議で五寸釘を排除、再び手が差し出される。


「もう何もしないから早く握りなさい」

「おっ、おおおおおう。了解した」


 くっ、何てプレッシャーだ!

 見守の手に近付く度に心拍数が跳ね上がる!!


 だがここで臆している様ではきららちゃんと握手なんて到底無理で、しかし戦略的撤退も時には必要な訳で、てゆーか見守の顔がどんどん険しく…、


   ガシッ!!


「おまっ! 僕の初めてを強引にっ!!」

「固城がグダグダするから悪い。じゃあ私をそのアイドルだと思って喋ってみなさい」


 そうしてギュッと手を握りながら目の前にいる見守と対峙。

 ええっと、何を、一体きららちゃんと何を話せば……………、


「本日はお日柄も良く」

「もう放課後、日も落ちかけだけど?」

「今日はいい天気だね」

「それ会話に困った時の常套句」

「春な季節に…」

「天気しか喋れないの?」


 会話って難しいな!!!

 自分でも酷い内容だと分かるけど、軌道修正できる未来が想像できない!!!


「はぁ…、じゃあ何でファンになったのかを喋ってみたら? これなら相手を褒める話になるし、固城も話しやすいでしょ?」

「成程! お前頭良いな!!」


 そうしてきららちゃんとの出会いについて語り始めたのだ。

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