見守美雲(妹)
詐欺グループ逮捕の捜査協力?をした私達に、警察から感謝状を贈りたいとの申し出を快く辞退。聞けばこれは結構な大捕物でニュースになるらしく、そこに私達のアホな経緯が明るみになれば、マスコミが面白可笑しく取り上げるのは明白。そうして押収された500万も返却、釈放となりました。
それから固城と話をした末に、
固城一途と見守優子は、
破局となりました。
◇ ◇ ◇
「…………………………固城の馬鹿」
身心共に疲弊しきった満身創痍で帰宅した後、夕食はいらないと伝えて部屋に入った瞬間に制服を脱ぎ捨てて、自分のベッドに倒れ込む。
「感情的に怒った私も悪いけど、彼女が別れるって言い出したら、食い下がってよ」
分かってる。
自分が騙されたと理解した時の固城は顔面蒼白で、この流れで別れ話を持ち出せば、受け入れない方がどうかしている。
「ひっどい彼氏だったのになぁ……」
息が重い。
今の自分の溜息には質量があるのではと思う程に。
現在進行形で文句を垂れ流し中で、そうする程に気分も急下降で、もう一生このまま枕に顔を埋めて生きていこうと思っていたら、1つの気配が近付いて来る。
「ユウ姉、寒くない?」
「…………………………寒い」
そう呟いた後、下着姿な私に布団を被せたのは妹の美雲。
2つ下の中3だけど背丈は同等、髪型以外は瓜二つの姉妹だ。
そうしてうつ伏せたままの私の横に座ってから、この重たい空気を無視した軽い口調で美雲が喋りだす。
「ユウ姉はもっと色気をプッシュした方がーって思ってたけど、そんなセクシー下着を持っていたとは」
「美雲には負ける」
「あはは、だよねー」
そしてこの通り私とは正反対な性格。
成績は悪いけど要領が良くて、料理も私より上手くて……、てゆーか私の尻を撫でるな。
「帰り遅かったけど、何かあったん?」
「別に何も」
「それ何かあったけど隠してる奴じゃん」
言えないというか、正しく説明できる自信がない。
彼氏がアイドルに500万使おうとしたら警察登場の捜査協力で詐欺グループ逮捕?
真面目に説明する方が馬鹿らしくなる事象だ。
因みに固城の500万騒動は不問、学校・家族への連絡もなしで、だからこそ全力で落ち込んだ私を家族が心配するのは至極当然だけど、それでも今はほっといてほしい。
そうして子供っぽく黙り続けていたら、美雲が立ち上がって自分の寝巻きを手に取る。
「分かった。じゃあ私はリビングで寝るから、ユウ姉は今夜ゆっくり1人で寝ていいよ。お母さんには私が説明しとくから」
「……………ありがと。今度お礼する」
「別にー。たまには恩返ししなきゃだしねー」
補足すると我が家はアパートで、私達姉妹は相部屋になっている。
そうして美雲が部屋を出ようとした時、
「因みに男絡みの悩みなら、ガッツリ相談に乗っちゃうからねー」
そんな余計な一言を吐いてから立ち去る妹。
固城がまともな男なら相談できたのに。
そうして寝ようとしたけど、せめて明日の用意と『アレ』の保管はせねばと体を起こして、乱雑に投げ捨てた自分のカバン拾ってから開けてみると、重さは500mlペットボトルと同等・厚さは畳と同等な紙束が出現。
これは彼氏彼女な関係でなくなってしまった、私と固城を繋ぐ唯一の接点。
きららちゃんに会う為に1年もの歳月で積み上げた大金。
500万円の札束である。
妹の美雲は今後も登場します。愛されキャラになる様に頑張ります。




