ミニライブ・出会い編8
今更ですが再スタートします。今度こそ迷走しない様に頑張りますので。
「見守、今日は最高の1日だったね!!」
そう言い切った我が彼氏は満面の笑みで、これはまぁ良しとしよう。
ただ、
・両手に紙袋(inドルオタグッズ)
・奇抜デザインTシャツ(新作きららロゴ)
・リュックからはみ出たポスターブレード
電車内でこんな呪われた装備の横に立つ居心地の悪さが半端ない。「おかあさーん」「しっ、見ちゃいけません」ってリアルに言われちゃったんですけど。
「どうしたの見守、もしかして気分悪い?」
そしてこの中途半端な優しさが腹立たしい。私が疲れた反応を示せば休憩と飲み物をくれたり、私の為にアクセサリーを買ってくれたりで、何で場所がドルオタ会場・プレゼントがドルオタグッズなのかと、神様に意見書を投げ付けたいと思った程だ。
私が間違っていたのだろうか?
アイドルも趣味の範囲ならOKにしたけど、もしかしたら固城がドルオタに染まり切る前にどうにかした方がいいのではないだろうか?
「見守? 黙り込んでるけど大丈夫?」
「……………固城、今日はありがとう。おかげで色々分かったわ」
「そっかそっか。見守もきららちゃんの魅力に気付いたんだね。じゃあ…」
「じゃあ早速、診断結果を報告するわ」
「ナースさん!?!?」
「大丈夫。私の知識不足で末期だと思っていたけど、他のドルオタと比べたら固城はまだ初期症状。適切な治療を施せば生き延びられるわ」
「僕このままだと死ぬの!?!?」
「ええ。社会的価値と未来が」
「辛辣!!!」
そんな口論をしている内に最寄り駅に到着。固城が両手でドルオタグッズ満載な紙袋を持って下車した後、ニッコリ笑顔で手を差し伸べる。
「重そうね。私が持ってあげようか?」
「いやいやいいです! 女の子に重い物は持たせられない! てゆーか渡したらどうする気!?」
「うーん、分別作業?」
「鬼っ! 悪魔!!」
ああ、この感覚懐かしい。
彼氏彼女な関係になる前は、幾度となくこんな喧嘩を繰り返したっけ。
「み、見守? 僕の趣味を許してくれたんじゃないの?」
「うん。確かに許したけど、二審で有罪?」
「控訴してたの!?!?」
「だけど安心して。固城とは別れないし、私がちゃ~んと幸せにしてあげるからね♥♥♥」
「怖い! 僕の趣味関係なしに怖いんですけど!!」
そうして閑散とした駅ホームの片隅で彼氏に迫る私。
大丈夫、私は何も間違ってない。
「とにかく落ち着いて見守! きららちゃんの顔を見れば落ち着くから!」
そんな謎理論で固城がスマホを差し出し、きららちゃんTwitterの最新情報を私に見せつけてきたのだが、
・きらら@ 4時間前
今日の握手会で面白いカップル遭遇!
横に彼女がいる彼氏が私に告白でシュラバー!!
何を言っているか分からないと思うが、私にもよく分からない。(^_^;)
ぶちっ!!!
今現在も“いいね”数値が激増中。しかも返信には「彼氏は勇者」「彼女が可哀相」「そんな彼氏に何故惚れた?」という言われたい放題な有様に、私の理性が消し飛ぶ。
「ってあれ? これってまさか僕と見守…」
「これで最高裁も有罪ね」
「まさかのスピード判決!? 異議あり! 異議を申し立てる!!」
「却下。最高裁の判決は絶対よ」
「魔女裁判もビックリな異端審問だ!!!」
そんなこんなで固城を更生して真人間にする決意を新たにした私と、それに抗う哀れなドルオタとの戦いが始まったのである。
見守にドルオタ現状を認識してもらってからの対立構図。そしてこれから見守さんの辛く険しい固城ドルオタ脱却更生プログラムがスタートです(笑)




