ミニライブ・出会い編3
「ここが研修生の握手会場です!」
「正規メンバーと比べて人が疎らね。しかも人数格差も激しい」
100人近い行列もあれば0人のアイドルも居て、人気格差が如実に現れている。なので不人気アイドルが必死に声を掛ける姿は涙ぐましく見えるけど、残念ながら成果は乏しい様だ。
「誰でも応援って人は居ないの?」
「少数派かな。DDって揶揄する人も居るから」
「DD?」
「“誰でも大好き”の略。僕は全然気にしないしDDでもきららちゃんを応援してくれたら嬉しいけど、色んな考えがあるからね」
派閥みたいなものだろうか? そうなるとアイドル素人な私もDDな気がするけど、固城がきららちゃん一筋だから、きらら推しに分類? 因みに推しは尤も応援するメンバーだそうです。
「研修生って何人居るの?」
「さぁ? 正規メンバーも姉妹ユニット・派生があったり、研修生よりも下があったりで、運営ですら何人居るのか把握できてないって話だよ」
アイドルも大変だ。
それに運営は儲かるアイドルなら誰でもOKだろうし、その中で人気という曖昧な概念を捥ぎ取って這い上がるには、きっと努力だけでは不可能。努力と才能の双方が必要不可欠。更に運まで重要で、サーカスもビックリな綱渡り業で間違いないだろう。
「じゃっ、じゃあきららちゃんに会いに行きましょう!!!」
「あー、はいはい」
上擦った固城の掛け声に素っ気なく相槌。因みにきららちゃん行列は10人くらいで、研修生ではそこそこの立ち位置らしい。そして行列に加わると、運営スタッフが握手券のIDチェックを実施。それからレーン列に加わり、程なくして次の番になった所で荷物を運営スタッフに預けて、握手券を渡した際に手の平チェックで準備万端となる。
「空港の持ち物検査よりも厳重ね」
「……………」
「固城? 何をボソボソと…」
「きららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきららちゃんきら…
ぺちーん(固城の頭を叩く)
「はっ!? さっきまで僕は何処に!?」
「落ち着きなさい。異世界に飛びかけてたわよ」
「くっ、僕の情熱が治まらない!! 空気っ!! このへん空気薄くない!?」
「そうね。固城の周りだけ酸素濃度が薄くなってるから、この酸素スプレーを使いなさい」
マラソン選手が走り終えた時に吸うアレで固城を落ち着かせる。
「相変わらずの緊張っぷりだけど、アルバイトで女子と話す場面なかったの?」
「高時給な肉体労働ばっかりで、女子との接触は皆無でした」
ほんと固城は思い込んだら一直線の愚直馬鹿だ。
しかも私以外の女子に対して緊張というヘタレ体質で、私が居なかったらどうする気だったのかしら?
「とっ、とにかく落ち着くんだ僕! おちっ、おちちっ、おちっちおちっちぽっ!!」
「下ネタ垂れ流しだから黙りなさい。まずはこのホットミルクを飲んで落ち着く。次にイヤホン装着で癒し音楽、最後にアイマスクで視界遮断。どう? リラックスできた?」
「凄いよ見守!! 一瞬でリラックスできた!!」
「はいはーい。じゃあ移動しましょうねー」
「うん、分かっ………って!!! もしかして順番!?!?」
「騒がしくてすみません。握手は2人一緒でいいですか? あとこれが騒いだら私が黙らせるので」
「待って見守! リラックス効果消滅!! 何も見えない上に心臓が暴れん坊将軍!!!」
「はいはい。移動しましょうねー」
「ちょっ! まっ! 心の準備がーーーー!!!!!」
そうして騒がしい固城を押し込み、遂にきららちゃん対面となりました。
握手前チェックの件は、乃木坂46様を参考にさせていただきました。




