ミニライブ・出会い編2
「きららちゃん直行じゃなくていいの?」
「大丈夫。今日は見守がいるし、ちゃんとエスコートさせて下さい」
ベタな発言だけど、それでも彼女としては嬉しい気遣いだ。
ここがアイドル会場でなければ心から喜べたのに。
「じゃあ何処に行くの?」
「まずは正規メンバーの握手会見学かな。説明するより見た方が早いだろうし」
そうして説明がないまま会場内を移動。
この巨大ドームで一番広い場所に出て来てみると、
「何、これ」
そこには数千人は居るであろうドルオタ集団を2人1組で高速握手するアイドル達がいて、工場のベルトコンベアーと遜色ない働きっぷりである。
「物凄く早い握手ね」
「うん、1人2秒だから」
「たった2秒!?」
「初回限定CD付属の握手券1枚で2秒のルールで、ファンはその2秒で認知してもらう為に全力アピールだから」
「認知って、アイドルに顔や名前を憶えてもらう事よね?」
「うん。それにコスプレOKだから頑張っちゃう人も居るよ」
「そうね。あの人なんてリオのカーニバルに居ても違和感ないレベルね」
他にも武士・お祭り姿・女装・全身タイツ・仮面●イダー・●メック星人が紛れていたりなカオス状態で、それでも笑顔を絶やさずに握手を続けるアイドル達には敬意を評したい程だ。
「あれ? 握手後にまた並び直す人が居るけど?」
「CD1枚で握手1回のルールだけど回数制限ないから、人によってはCD100枚購入で1日中握手って人も居るよ」
「アイドルCDがバカ売れなのも納得だわ」
そして会場内にはCD(握手券)販売所もある訳で、CD売上UP=オリコン上位=大人気という構図になる。本当に良く出来た仕組みだわ。肝心のCDがオマケ状態だけど。
「ところで固城、まさか貴方もCD100枚って暴挙はないわよね?」
「……………やっぱり駄目?」
ぐりっ
「あいたたたたたたたたた!!! してないです!! 握手会2枚・ミニライブ2枚の計4枚しか買ってません!!」
「なら結構。それできららちゃんは何処?」
「ココには居ません。きららちゃんは研修生だから」
「研修生?」
「見守は“どるこれ”って聞いた事ない?」
「名前だけなら。確か大手ファッション企業と提携のアイドルよね? アイドルしながらモデル業もこなすグループで合ってる?」
「うん。正式名称は“アイドルコレクション”略して“どるこれ”。パリコレを意識していて、最新ファッション服でバンバン宣伝だからメディアも大注目、だから女子からも結構支持されてます」
「だからドルオタ女子率が高いのね」
アイドルに限らず+αの付加価値は重要で、同性に興味を持たれない有名人は短命になりやすいと聞いている。それによく見れば“どるこれ”の皆さんは大手ファッション企業連携だけあってモデル体型で、それを売りにしているらしい。
「アイドルって、凄いのね」
「うん! 僕はきららちゃん一筋だけど、他の人達も凄いと思う」
何というか、アイドルが遊びじゃないって事だけは理解できた。
そんな感嘆に浸った後、固城が手招きする。
「じゃあ研修生の握手会場に行こう! ここより小規模で人も少ないから、初心者な見守でも安心して楽しめるから!!」
「了解。じゃあ生きららちゃんに会ってみましょう」
現実のアイドルの形は様々ですが、正規メンバーの下に研修生が主流です。そこに選挙(人気)要素を絡めて格付けされる感じだと思います。
そしてこの小説では“どるこれ”というグループでアイドル話を広げていきます。




