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始まり

「ハロ~、マイすうぃ~とエンジェルきららちゃ~ん★」


 お風呂に3時間篭って洗い尽くした潔白なボディで格好良いポーズを決めつつ、歯茎が痛くなるまで磨いた真っ白な歯で満面スマイルを彼女にプレゼントする。


「君に会えて嬉しいよ。何、もしかして照れてる? ははっ、それは僕も一緒だから安心していいよ。(キラッ★) それにこれはお互いのドキドキハートがライジングだから造作もないことだよ。この日この時この場所で君に会えなかったら、僕らはいつまでも見…



   ズガッ!!!



 突如横っ腹にボディーブロー炸裂で意識覚醒!

 激痛&横隔膜の痙攣で声もなくのたうち回っているとハイソックスな脚が目に入り、見上げてみると哀れなゴミを見るかの様な凍てつく眼光が浴びせられる。


「邪魔、帰れ、そして死ね」


 嫌悪100%音声(ボイス)で罵ってきたのはクラスメイトの見守みまもり優子ゆうこ

 優しそうな名前だがとんでもない! 容姿端麗・才色兼備で校内屈指の美人と評されているが、実際は優等生とドSを使い分ける二面性があり、しかも僕に対しては惜しげもなくドSを振り撒く悪魔の様な女だ。


「あれ? きららちゃん居た筈なのに何で教室…、ってまさか夢だばっ!?」


 体を起こそうとしたら見守の上履きが腹にめり込んで再びダウン。

 真上から強制的に呆れと憐みの目で蔑んでくる。


「学校は寝る場所じゃない。寝たいのなら家で好きなだけ寝なさい。何なら今すぐココで永眠させてあげてもいいけど?」

「そんな事はどうでもいい! 何でもう少しだけ待ってくれなかったの!? 今の夢はマイベストきららちゃんメモリアルのトップ10入り確実があああああああああ!!!」


 腹を踏む見守の足がグリグリと圧迫。

 ズッシリな重圧が腹筋に襲いかかってくる。


「ごめんなさい。まだ睡眠中だったみたいね。早く起こしてあげないと」

「起きてます! ごめんなさい全部僕が悪いです許して下さい!」


 掠れた声で謝罪を続けた末に釈放。

 体を起こしてクッキリ跡が付いた見守の足跡を払ってから周りを見ると誰もおらず、どうやら放課後になってかなりの時間が過ぎてしまった様だ。


「どうせ今日もバイトでしょ? 早く行ったら?」

「いやバイトは昨日全部辞めた。明日に備える為に」


「備えるって…、やっぱりアイドル?」


「その通り! 今まではCD1枚・グッズも1つで我慢だったけど、このままでは駄目だと判断して高1はバイトに専念して資金調達。そして高2になった今、遂にその資金を投入する時が来たのです!!」


「ふ~~~~ん、狂おしい程どうでもいい」

「どうでもいいとは何だ! 結構貯まったんだぞ!」

「はいはい、それで一体幾ら使う気なの?」



「500万円」



「………………………………………は?」

「500万円です。バイト掛け持ち・余裕があれば短期・家で内職、休日は朝から晩まで働き詰めで、本当に大変だったなぁ」


 これには見守も唖然。

 500万は紛れもない大金で、社会人でも中々稼げない金額だ。

 それを1年で貯めた行動力には素直に感心だけど、なのだけど……、


「へぇ~、凄いね。でもそのお金、使っちゃうの?」

「ああ、全部使う」

「アイドルに500万使っちゃうの?」

「ああ、全部使う」


 そう言い切ると、見守が満面の笑みを提示。

 なのでこちらも笑顔を返そうとしたら、



   バシーーーーーーン!!!!!



 とてつもない衝撃が左頬で爆発。

 あまりの威力に体がクルクルと回転しながら、傍にあった机と一緒に薙ぎ倒される。



「死ね!! 100回死んで両親に謝れ!!!」



「何をする? 痛いじゃないか」

「痛いのはあんたの頭と私の手!! たかが握手に500万とか馬鹿じゃないの!? 今すぐ考え直しなさい!! 自分の将来か親孝行に使いなさい!!!」


「いやいやちょっと待て、流石に500万で握手だけな訳ないじゃないか」

「えっ? あ、そうよね。流石に500万なら他にもあるよね」


 500万もあれば高級車が買えるし、ペアで世界一周旅行も可能だ。だからアイドルと2人っきりで長期旅行、彼氏になれる権利等なら釣り合うかもしれない。



「なんと握手をしながら、2人っきりで5分も話せるんだぞ!!」



「……………………………………はい?」

「しかも当たり2枚なら10分、3枚なら15分! もう何話しちゃおっかなー、今からもうワクワクが止まらない。やだなーもー」


 たったそれだけで500万?


 だけど本人は本当にワクワクしっぱなしで、それが余りにも哀れで、そのせいで見守から表情が消滅。目の前でうごめく可哀相な生物を死んだ目で見続けている。


 きっとこういう可哀相がいるから、アイドル業界が潤っているんだろうなぁ。

 てゆーか500万くれたら、私脱ぐよ?

 手が痙攣するまでおっぱい揉んでいいですけど?


 そうして佇む間、倒れた机を元通りにして帰り支度を済ませた可哀相が振り向く。


「じゃあ明日から予約開始のCDに500万投入だから帰らないと。じゃあね見守、最近は物騒だから帰り道に気を付け…、がっ!!!」


 近くにあったゴミ箱でブン殴られた後、見守が馬乗りになる。


「今からあんたを殺す」

「お前が一番物騒だった!!!」


「大丈夫、きっと死ねば目が覚めるから」

「いやいや死んだら覚めない! 覚めずに人生終わっちゃう!」

「安心して、あなたの人生は既に終了済みだから。これはもう病院が逃げ出す事案で、安楽死させてあげるのが優しさだとは思わない?」

「いい笑顔で何酷い事言ってんの!? だが僕は死ねない!! きららちゃんと握手をしながらお喋りをするまでは!!!」

「はっ(失笑)、どうせ全部ハズレてアイドル運営がほくそ笑むだけよ。きっとそのキラキラちゃんも、あなたのピエロっぷりを陰で嘲笑うに違いないわ」

「きららちゃんはそんな事しない! そういう悲しい事言うなよ泣いちゃうぞ畜生!!」

「泣きたいのはこっちよ! 何でこんなアホな討論しなきゃいけないのよ!!」


 そうして見守の感情が極限まで昂ぶったせいで、目の前にあるゴミ(※固城こじょう一途かずと)にこう叫んでしまったのだ。



「アイドルに500万使うくらいなら、私に使いなさい!!!」

勢いだけで書き上げました。続く予定です。

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