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異世界転生した俺、ハヤトの魔法製造師ライフ  作者: おしるこ
転生成功したから仲間とともに旅しよう
11/13

2人の使用人と理想

ついに闘技大会の日が来た。

闘技大会は城の中の闘技場で開催されるのだが、これがバカッ広い。城の中にサッカーコートくらいの闘技台に観客席、王様の金持ち加減が良くわかった。何より城の使用人に美人がすごく多い。狙ったとしか言いようのない程に。


城の前まで行くと参加申し込みをしている。観覧か参加か、と聞かれたので参加、と言っておいた。

その他は名前と年齢、性別しか聞かれなかったので誰でも気軽に参加出来るみたいだ。


「それにしてもマジで広いな...何のためにこんなにでかくしたんだよ...」


《ふふん、それは俺が解説しようー、王族の権力と金を形に示すことによって、反乱を防ぐ意味があるんだよー、》


「あー、そういうことか。それにしてもやりすぎなような気がするな...」


巨人の城、という表現が大袈裟では無いほどに大きいのだ。すでにハヤトは迷いかけている。さらにアルンちゃんも目を輝かせてそこかしらの装飾に目を奪われる。


《鬼ごっこでもするー?》


「アホか、絞首刑にされるわ」


広いところに出ると暴れ回りたくなる性質を持ってるみたいな謎の設定をひけらかすアルンちゃんはうずうずしているのが目に見えた。


豪華な装飾はしてあるものの、どこか質素で親しみやすいようなデザインが施されている城から、造った者の性格が垣間見得る。


闘技大会は、1日目に予選を5回行い、残った上位16名でトーナメントを行うという某天下一何とかのようなルールで開催されるようだ。


「予選もうすぐで始まるな...やっぱ初めは緊張するんだが...相手はどんなやつなんだろう」


緊張しながら歩くハヤトを傍からみると動く石像のようだ。右手、右足が一緒に出ている。


《歩き方、歩き方ー》


緊張の仕方が古臭いハヤトはアルンちゃんにツッコまれ正気をなんとか取り戻す。しっかりと左手と右足が出るようになった。


「そういえば、アリアは?」


《外の空気を吸ってくるらしいよー、そう言って出てったっきり見てないねー》


アリアは出場しないからここにいなくてもいいのだが、少しだけでも見ていてくれないのかと少し拗ねるような考え方になってしまう。


《魔法もOKなんだから優勝狙おうぜー》


ルール的には魔法はOKだが、武器なども使用可能らしい。まぁ戦えそうといえば戦えそうだ。実際上位まで残れる自信はある。この数日寝る間とアルンちゃんをもふもふする時間を惜しんで修行を重ねたから、少しは強くなっている。はず。


ちなみに俺の1回戦の相手は前回トップ16の選手だ。

俺ってついてねぇな...


会場のアナウンスと共に闘技台に目線が集まる。


「それでは予選1回戦をはじめます。ガリバーさん、ボブスキーさん、前に出てください。」


予選に使う闘技台は全部で8個ある。まずは1回戦で皆のお手並み拝見といこうかな。そう思った瞬間2人の怒声が飛び交う。


「はっ、お前みたいなひょろい剣士に負けるかよっ、さっさと帰ってママに慰めてもらいな」


「ゴツイだけのデブが威張りやがって...」


いきなり罵倒の嵐かよ...挑発も戦術のうち、とよく言うが、これはただの悪口である。


ガリバーが剣を突き出す。ひょろい剣士の方だ。

それもお世辞にも早いとは言えない速度だった。


ボブスキーがその剣を鋼鉄の腕、というと硬度が無さすぎるが。その腕で受け止める。


「はんっ、弱すぎるぜ...」


ボブスキーが鈍い大振りで拳を降る。その拳は軽くいなされ、空を斬る。


「俺の本領発揮はここからだぜ」


ガリバーの剣に炎を宿らせる。魔法剣を使える、というのは驚いたが、それも大した威力ではない。


だがその一撃でボブスキーは沈む。


「勝者、ガリバー!」


その後も2回戦、3回戦と見ていっても、目立った選手は見受けられない。


「これは優勝貰ったかな」


しかしそれは杞憂に過ぎないかもしれない。4回戦。


「4回戦、レグスさん、ドルドさん、前に出て下さい」


2、3回戦と違い静寂に包まれた4回戦。

黒いローブを纏った魔法使いと思われるレグスからはローブの外からでも分かる魔力を感じる。


「これは...」


ハヤトの直感は大当たりする。


「初め!」


号令がかかるその時、黒いローブから片手を出し、

魔法弾を打つ。その早さは今まで見たものの何よりも速い。音速を超えて音を捻じ曲げた魔法弾は静かに張り裂ける。その勝負は一撃で、両者両足も動かさぬまま終了したのだ。


「おい今の見たかよ...」


「一撃とかありえねぇ...しかもただの魔法弾だぞ...」


その経緯を見守っていた観客からざわつきが起こる。

一筋縄じゃ行かない相手がいきなり現れたな...

しかもあいつ綺麗な魔力じゃない。殺意と軽蔑が入り混じったような...そんな魔力をしていた。まぁ今そんなことを考えていても仕方がないので自分のことを考える。


「次は俺の番だな、頑張ろう」


「それでは5回戦、ハヤトさん、ベルガーさん、前に出て下さい。」


闘技台に上がる。相手は両手剣を扱う少し大柄な男だ。あの剣を直接体に受けたら致命傷を追うことになるだろう。


「なんだぁっ?こんなひょろいチビが相手なのかぁ?ひょろすぎて死んじまわねぇか心配になるぜぇ!」


「あぁ、そうだろうな。当てられたら、な」


「当てられねぇとでも言いてぇのかァ?後悔しても知らねえぞぉ!」


重い一撃が飛来する。ハヤトの体は真っ二つ、にはならなかった。その動きに感心したかのように呟く。


「...ほぉ」


大剣での攻撃は大振りでいなしやすい。攻撃を捌きつつダメージを与えるのはさほど難しいことではない。


【ブリザードランス】


低音の槍が敵の動きを鈍くする。

腕を、肩を凍らせて機能を低下させることに成功する。だがベルガーはいとも簡単に氷を砕き、機能を復活させ、攻撃を仕掛けてくる。


飛んでくる大剣を見切って最小限の動きで躱す。

躱す。躱す。躱す。13度目の攻撃で相手の大剣が闘技台に刺さる。それを力任せに抜いてから呟くように吐き捨てる。


「口で言うだけあって少しはやるようだな、だがこれで終わりと思ったら大間違いだぜ...」


【エアロ】


脚部の身体強化魔法だ。攻撃の速度が格段に上昇する。地を蹴った脚が闘技台を破る。


幾度も振る剣はハヤトには届かず、ただ地面だけを抉り続ける。その重量の剣を何度も振り続け、同じ速度を保ち、更に魔法まで使えると言うだけでその腕前は誇ってもいいと考えられる。


「速い、だがそれでも俺には届かねぇぜ」


【ライトニングレイピア】


光属性の中級魔法だ。8本の光が成す剣がハヤトの周りを囲む。凄まじい魔力が巻き起こりそれだけで並の剣士などでは近づくことも出来ないだろう。


「はっ、おもしれえ...できればお前とは決勝リーグで当たりたかったぜ...」


ハヤトはその内の1本を手に取り、音速を超えて突撃する。両者の剣がぶつかり鍔迫り合いをする。飛び散る火花が熱意を表現しているようだ。剣がぶつかる一瞬の隙にハヤトが7本の剣を操り、的確にダメージを加えていく。


「...何故ここまでの強さの人に今まで気づかなかったんだ」


「俺は大規模なお引越しでここまで来たからな、黒猫のなんとかさんにはお世話になった事だぜ」


「黒猫の...?ま、まぁ決着をつけるか」


「お前には悪いがまだ本気を見せるわけには行かないぜ、狙うは優勝だけだからな」


7本の剣は加速し、ベルガーの身体を切り刻む。

白い光がベルガーを包み込み、抵抗をさせようとしない。そこにハヤトは止めの一撃を打ち込む。


【テンペスト】


合成魔法の二つの詠唱、更にその合成魔法の詠唱までを省略して魔法を放つ。その試合を見ていたほとんどの者が少したりとも悪寒を感じる。そもそも合成魔法を詠唱省略して打つ者がこの国に存在していない。


豪雨と雷鳴が響き渡り、ベルガーを飲み込もうとする。ぶつかり合う魔力が彷彿とさせるのは魔人。下級の魔人なら余裕で超越する強大な魔力。



「そんなこと出来るやつがこの国にいんのかよ...」


ここになってようやくベルガーは気づいた。自分が戦っている相手に勝つのがどれ程無謀だったのかを。

自分の無力さを、今痛いほど実感したのだ。


そしてその魔力が止むと、辺りは静まり返りアナウンスだけが会場を響かせる。


「勝者、ハヤト」


その後も誰も口を開こうとしない、できないのだ。

2回連続で普通を超越した力を見せつけられている。


「俺は運が悪かった...こんな異常なブロックで予選をすることになるなんて...」


観客の1人がようやく声を絞り出す。このブロックのほぼ全員が考えたことであろう。

仮にも前回トップ16を圧倒して倒したハヤト、皆からは畏怖の対象として捉えられる。


「...ちっとやりすぎたかな」


ちっとではなくかなりやりすぎた感がある。

レグスのように一撃で終わらせた方がまだ良かったと思うハヤトだった。


ハヤトは残り全ての予選を全て一撃で終わらせる。

幸い特筆して強い者はいなかったので難なく終わらせることが出来た。


あのローブの男レグスも全ての試合を一撃で終わらせている。ほとんど動かずにだ。


「やっぱあいつだけは格が違うようだな」


《お前ら人間じゃねぇ!》


聞いたことあるような発言が飛び出すが敢えてスルーで、行きたいと思います。


見事最初の1日の試合を全て圧勝で終えたハヤト。

闘技大会の2日間は城の1室で寝泊まりするらしい。


上位16人まで残った人物には使用人が2人ずつ付けられる、という決まりがあり今日の夜から一緒に生活をするらしい。身の回りのことを全てしてもらえる2日間だ。


そうこうして自分の部屋にアルンちゃんと戻るともう使用人2人が部屋を掃除し出迎えてくれた。

使用人2人は自分の自己紹介から入る。


「イヴです、2日間よろしくおねがいします」


「アリスです、よろしくおねがいします」


その間ハヤトが考えたこと、それは


(やべぇ...超絶タイプだ...マジ可愛いんだが)


イヴさんの方。ショートの黒髪。整った顔立ちに身長は160cmくらい。そしてまな板より少しある程度の胸。一言で言うと「ハヤトの理想」である。アリアには悪いが...アリアよりかわいい。


「あ、あの、どうか致しましたか?」


「あ、いや、何もないです、思っていたより凄い美人がいてくれたもので」


「まぁ、お上手で、」


「失礼ながらストレートな口説き文句はイヴには通じませんよ」


クスリと笑うアリス。銀と白の中間の様な髪色の身長低めの美人。どことなくアリアとキャラがかぶってそうで怖い。


アリスは笑顔を見せるがイヴは笑顔を見せてくれない。この2日で1度は見てみたいよな。と考えているとこっそりとアリスが耳打ちする。


「もしかして本気でイヴに惚れちゃったりしてます?イヴは笑わせるだけでも難しいですから、頑張ってくださいね、美人がもったいないですよねー」


「...そんなんじゃないですよ」


顔を紅潮させて呟くハヤト。

それを一瞬で見抜くあたり女の勘は凄いんだなと思う。使用人を付けてもらえるのが2日だけ、というのを変えてもらいたい。一生一緒でもいい。


「今から昼食を作らせて頂きます。少し遅くなりましたが精一杯、作らせていただきます」


昼食にはエビとレタス、のようなもののマリネ、牛肉に近い食感のハンバーグ、後はパンが出てきた。


「シュリンクとレターのマリネ、ビークハンベーグ、パンです、味わってお食べ下さい」


「パンだけそのままかい」


恐らくこの世界の人にはわからないであろうツッコミを入れてしまう。イヴとアリスの頭には?マークが見えるようだ。


それはそうと料理の腕前は凄くいいようだ。

前食べたリザードマンを超える味である。さすが王宮の使用人、というところであるか。


「うん、すごく美味しい、これからも毎日食べたいくらいだね」


「ありがとうございます、嬉しき言葉にございます」


とイヴが答えたということはイヴが作ったのか、美人で料理も出来る、完璧だな。

少しだけ横目でアリスを見て軽蔑の視線を送る。

すると、


「ア、アリスも料理くらいはできるんですよ、イヴの腕には勝てないからイヴに頼っているだけで...!」


「別に聞いてねぇよ」


アリスの言い訳に苦笑いを向けるハヤト。

少しばかりアリスの顔が赤くなっていた気がした。


「そ、そこまで言うなら今度腕前をみせてあげますよ、美味しすぎて涙を流さないようにしてくださいねっ、」


「あ、あぁ、楽しみにしとくよ」


敬語を使っているだけで、友達のような反応を見せるアリス。今日初対面とは思えないコミュ力だ。


アリスとは少しづつ打ち解けてきていると思うが肝心のイヴさんは表情をあまり動かしてくれない。

いつもの事だ、と言いたげに俺達の方を見ていた。


「この後はどうなさいますか?」


「俺はなんでもいいけど...イヴさんとアリスはどうするんですか?」


「私達はハヤトさんの行動をお供します、この2日はずっと付いている、という決まりですから」


「じゃあみんなで散歩でもしますか、城案内よろしくお願いします」


「了解しました」


午後の最初は散歩をしてイヴさんとの仲を深める作戦にした。










読んで頂きありがとうございます。

この先もお願いします。

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