自殺して異世界転生を試してみよう
俺は21歳の切間颯斗。俗に言うオタクだ。
小、中、高とぼっち生活を続けすることもないまま生き続けてきた。好きなものはラノベ。今欲しい物は愛かな。
.........嘘ですかっこつけてすみません
さんさんと俺を照らしつける太陽が暑苦しく感じる。
今の皆は夏休みシーズン。外を駆ける子供達の声、やけに大きい蝉の声、家に打ち付けられる風の音...
俺の耳に入る全ての音が俺の腹を立てる要因に成り得た。家に引きこもりすぎて聞き飽きたよ。
どうせすることもない休日、ラノベでも読んでゴロゴロしようか。外に出るのは本屋かゲームを買いに行く時だけ、それ以外は休日に外に出ることはほとんど無いのだ。人と話した記憶なんてもうほとんど無い。
俺はそれから1時間程こうしていただろうか。現在時刻は2時半くらい。3時のおやつが待ち遠しい。
俺もこのラノベみたいに転生して異世界チートとかできればいいなーとか自分で抱いた幻想を鼻で笑う。
そりゃいっぱい女の子はべらせて、キャッキャウフフできたらいいよ、でもそんな妄想を真に受けるほど子供ではないつもりだ。
しかし読み終わってみると意外と出来てしまうのでは?と思ってしまうものなのだ。21歳もまだ心は子供、食欲、睡眠欲、性欲。3つの欲が全部自分を主張しているのだ。
(俺も異世界転生してハーレム作りたいな...)
いやいやでも、俺なんか転生してもいいとこ初めの村に出てくる通行人A、良くてアドバイスをくれるおじさんくらいだろう。同じことをエンドレスに教えてくる知能0なおじさんには成りたくないな。でももしかしたら...?
こういうものを読み終わったあとには必ず考えることがある。どうやったら転生できるのか?だ。
そして考えるうち、一つの考えにたどり着いた。
自殺すれば転生できんじゃね?
...無理だろ。そもそも転生自体が...いや、ものは試しだろう。幸いなのか、俺は特筆した才能もない、金も度胸も女もいない、ひとり暮らしで心配をしてくれる家族もいない。挙句の果てに仕事もない。考えてみるとない、ない、ない尽くしだ。言ってて悲しくなるわ。そして決断する。
「チーかま食いてぇ」
あ、間違えたわ。まぁチーかまうめぇからしゃーないよな。絶対皆も間違えるって。まぁ今の訂正。
「やってみるか。」
やってみるかと意気込んだものの、俺はヘタレだ。それも生粋の。高校生になっても注射が怖くて病院に行かなかったレベルの。自殺なんて出来るわけがない。
ということで、色々な方法を試してみる。
うーむ、首吊りをして見るか。
家の柱に縄を括りつけて、脚立を用意する。ようし、首吊りの用意万端!Let's go!異世界ライフ!
目が覚めたら俺は異世界の立派なハーレム系男子さ!
...首を吊れない。そもそも怖くて縄に首を通せない。
ヘタレすぎだろ俺ぇぇぇ!?まぁなんとなく分かってたけどね、次だ次。
次は包丁で切腹だ。手に持った包丁で思いっきりお腹をブスリ!昔の日本の武士の誇りの死に様、切☆腹!包丁を横にスライドして、さぁ今から楽しい異世界ライフに!行けねぇ!刺せねぇ。知ってた。分かってた。
...きっと溺死なら行ける!痛くないはずだから。
と考えて、自動給湯器のボタンを押す。
浴槽にお湯を溜めて...入浴剤入れ...なくてもいいや、行くぜ!いざ溺死!ボコボコボコボコ...
ぷはぁっ!おめでとう俺!肺活量が上がったよ!もしかしたら将来潜水の世界チャンピオンかも!
ふざけてんのか俺...意識ある内に溺死とか絶対できねぇわ、無理無理。
台所で使えそうな物を探す。引き出しを開ける。爪楊枝、無理。輪ゴム、無理そう。ゴム手袋、無理。
机の上、リンゴ、バナナ、塩、砂糖、胡椒...ないな。
まぁ自殺なんて想定して暮らしてないからな。あるわけないかな。
...あ、薬があった。これは俺でも絶対行けるぜ!早速異世界転生...
いや待て、そう言えば折角1時間半も並んで買ったプリンがまだ冷蔵庫の中に入っていたはずだ。これを食わずに死ぬのは絶対無理だな。あったあった。
「いやこのプリンマジうめぇ!」
なめらかな食感に絶妙なバランスの甘味と苦味のカラメル...!今まで食ったプリンの中で首位独占。プッチンプリンも俺の味方だけどね。あれ以外と楽しいんだぜ、プッチンするの。
忘れてなくて良かったわ。それじゃ忘れない内に薬を引き出しから1瓶、新品のまま取り出す。1回も使ってないとか俺健康。最後の最後に無駄な才能発掘しちゃったわ。
買いためていた睡眠薬を1瓶分全部飲む。
するとたびたび意識がなくなっていく。
こうして俺、切間颯斗の1度目の人生は幕を閉じた。
来世はラノベのチートハーレム系男子にして下さい...