第1話「異世界”アルゲンヴルグ”」
僕······いや、俺の名前は羽田孝太郎。別名柿本篤。
神とやらの不注意によって死んでしまい、そのお詫び(?)として異世界へ転移することになった。
「さてと、転生(憑依)した途端、頭の中にもの凄い情報量が流れ込んできたな。整理する前に一人称を変えるか」
一人称を僕から俺に変え、流れて来た情報を整理することにした。
まず、この世界”アルゲンヴルグ”はヒトやエルフ、人魚にケットシーなどといった様々な種族が共に共存する世界。種族の垣根を越えて仲良く暮らす世界。
さらにこの世界には10の都市があり、その一つ一つに”学園”というものが存在する。”学園”とは別に学校も存在する。学校では普通に一般教育が受けられる。
じゃあ”学園”では何を学ぶのかって? それはだな。
”学園”とは「戦える生徒」を育てあげる機関だ。ここにも小等部から高等部まであり、高等部は4年間通うと卒業となる。
さらに普通とは違い、自由に編入が出来る。又、高等部では実力を認められると人より早く卒業をすることが出来る。(するかしないかは本人の自由)
この世界では年に2回、時期は決められていないが、学園同士が生徒交流という目的のために”戦争”をする。そのために”学園”では「戦える生徒」を育てあげている。
死ぬ可能性があるからだ。
そして、4年に1回、”全学園”で争う”大戦”が行われる。それに優勝した都市は重宝されるのだ。
さて、次は”俺”の説明か。
俺もとい柿本篤は都市ブリュンヒルデに住んでいる高校2年か。普通の家庭に生まれ、幼馴染みのいる普通の子供。
幼馴染みとは小学校までいたが、卒業と同時に転校。篤はそのまま地元の中学に上がり、普通の学校生活を送っていた。
そんな中、高校生の時、”学園”を追放された生徒による襲撃事件が発生。それに巻き込まれその際、剣の才能に目覚める。
そして篤はアーサー学園にスカウトされ、編入することになる。
編入した篤を待っていたのは、大変かつ楽しい学園生活だった。編入した初日に生徒会長に喧嘩を売って、見事勝利。さらには、風紀委員長の先輩に目をつけられ(篤がだらしなかったから)、中学時代からの親友や妹までもがアーサー学園に編入し、許嫁と名乗る少女まで現れる始末。
けれど、良き後輩に恵まれ、それぞれと互いに絆を結んでいった。
「ふーん。”俺”強かったんだな。そして、俺が得たこの3つの特典を合わせればより強くなるな」
俺は再び整理することに集中した。
篤がアーサー学園に編入して1年が経ったある日、その年最初の”戦争”が行われた。闘うことになった学園は都市ギルガメッシュに存在するエンキドゥ学園。”アルゲンヴルグ”において1、2を争う学園だ。
篤たちは既に2度の”戦争”を行っていたが、それら全て無傷で生き残っていた。だが、3回目の”戦争”は違った。
篤は命じられた作戦を遂行中の際、生徒の奇襲に簡単に戦死してしまった。
本来ならば、誰かが戦死したら全ての学園に通達される。だが、篤が死んだことは一部の者しか知らず、篤は行方不明者として扱われている。
「とまぁ、こんなもんかな。しかし”俺災難だな。よし、とりあえず俺の荷物を確認するか」
そう言って俺は自分の体を見回した。そうしてネックレスとブレスレットがあるのを確認して終えた。
「よし。ちゃんとあるな。こいつがなくなるとやばいらしいから何処かにしまうとするか」
俺は転生した時に一緒に持ってきたと思われる鍵付きの匣を取り出してそこにしまった。
「後で自分の名前を書いてそれも一緒にしまって置こう。忘れると困るからな、名前」
とりあえず俺はこれからやることを決めた。
「よし。都市ブリュンヒルデとやらに帰るとしますか」
俺は都市ブリュンヒルデへ向け、足を踏み出した。
目覚めた時にいた見知らぬ荒野を抜け出し、帰るために。
異世界転生って面白いですよね。
初等部ではなく、小等部になっているのはあえてです。小等部と中等部は学年が定められていないので、こんな形となっております。
後々、ちゃんと明かされます。
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