盗賊団の首領は女の子?
設定を付け足すために少し改稿しました。
まず先にそれに気が付いたのは貴族の男だった。そしてすぐに、後に続いて馬車に乗って逃げてきた冒険者たちも気づく。彼らの目の前を、一本の大きな木が道を塞いでいた。
「くそっ盗賊たちの仕業か!」
冒険者の一人が悪態をつく。
馬車はそこで止まるしかなく、貴族の男は冒険者たちに馬車を下りてその大木をどかせるよう、指示した。
それに従い、馬車から冒険者たちが下りて道を塞いでいる大木の近くへと寄ると、その横から、小柄な人物が姿を現した。キティだ。
「おい、そこの荷物と貴族を置いてさっさと失せろ」
キティは辺りを威圧するような大きな声で、そう言った。
暗くてよく見えないが、見える範囲では相手は独りしかいない。しかも相手は、声と体の大きさからして少年だろう。そう判断した貴族の男は、冒険者たちに震える声で命じた。
「相手は1人だ!全員でかかって、殺せ!」
それを聞いて冒険者たちはそれぞれ武器を手に取る。
辺りに一瞬緊張が走った。
キティは、それを見て内心でため息をつきながらも、仕方がない、と割り切り剣を抜いた。キティにしてみれば、これから起こる戦いがほとんど一方的な虐殺になることが分かっていた。それでも、自身の矜持に従い、全力で敵対している者たちを殺すことに迷いはない。
剣を向けられた以上は、情けはかけない。自らに殺気を向けてくる以上は、相手にも相応の覚悟を求める。キティにとって、この場はそういう類の戦場だった。
数秒の沈黙の後、冒険者たちは痺れを切らしてキティへと切り掛かるが、それらはすべていなされたり躱しされたりされて、届くことはなかった。そしてそのたびにカウンターのようにして、致命となる剣撃を浴びせられ一人二人三人と地面に倒れていく。
「何をやっている!魔法が使えた者がいたはずだ!あいつを殺せ!」
馬に跨ったまま貴族の男がそんなことを喚いている間にも、4人目の冒険者が切り伏せられた。それを見て残った冒険者たちは逃げようとする。その中で、少年の冒険者だけは覚悟を決めた目で、キティと対峙していた。
(へぇ・・・)
キティは一瞬その少年を興味深く眺めるが、すぐに気を取りなおして、逃げ始めた冒険者を背中かから斬った。
「おい、お前。何やってる!そいつらはもう戦う気がないだろ」
少年がキティを責める。彼にとって、逃げている敵を追ってまで殺すというのは人道に悖る行いだった。ただし、それはあくまでも年の浅い冒険者の考えであって、戦場で生きてきた者にそんな理屈は通らない。
「先に降伏勧告を蹴って剣を向けたのはそっちだろ」
とキティは呆れたような調子で言った。
「それでも!逃げる奴を追いかける奴がいるかよ」
キティはそれ以上返事を返しても無駄だなと考え、何も言わず、ただ、先に少年の顎を蹴り上げることにしたのだった。
ほとんど見切ることもできずに、少年は気絶する。
しかし、気絶する直前、ほんの一瞬だけ灯りに映るキティの顔を覗いた。そこには、美人と言っていい整った顔立ちの女の顔があった。
女の子だったのか・・・
少年は、声に出すことはできず、ただ頭の隅の方でそのことを理解した。
ルビの振り方が分からないので読みにくいかもしれないです。機械音痴ですごめんなさい。