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プロローグ

少し改稿しました。

 夕暮れ時の朱色に染まった草原の脇を、数台の馬車が道なりに連なり走っている。そこは王都へと続く街道の一つで、道の反対側には木々で覆われた小高い丘が不気味に覆いかぶさっていた。

貴族の男が一人と、その護衛として冒険者を10名ほど乗せた馬車は、王都へ向けて街道をまっすぐに進む。

一応王国が管理しているものの山賊の被害が絶えない危険な道だった。護衛のために馬車に乗っている数人の冒険者の表情は、自然と険しくなる。

そもそも、一行の王都へ向かう旅の道程はいささか不自然なものであった。というのも、彼らが現在進んでいる道の付近の山には、周辺の街では有名な盗賊団が根城としているものがあり、通常の旅人であれば、よほどの事情が無ければ、この辺りの道は避けて通る。

ではなぜこの馬車はそんな危ない道を我が物顔で突っ切っているのか。

この馬車は、王国へと向かう貴族が急ごしらえで用意したもので、自前の食糧や少しの趣向品以外に金銭的な価値のあるものは載せていない。そのことから、最悪の事態になれば、荷を置いて裸の馬に跨り、逃げのびることもできる。ゆえに、「もし襲われたら盗賊の狙いである荷物を捨てて逃げれば追ってこないだろう」というような安易な打算からこの街道を選んだのだ、と知恵の回る商人ならば考えそうだが、実際はそうではなかった。


単純に、この貴族はそのことを知らなかったのだ。

 元々王都を本拠としている貴族だ。領地へはたまのバカンスや、祝い事でもない限りほとんど戻ることはない。実際、ここ数年は一度も、本来の領地へ帰っていなかった。それゆえに、自身が納めている領地に着いても関心は少なく、彼はここ数年で有名になった盗賊団の存在を知らなかったのだ。


 左手に見える地平線の下に太陽がほとんど沈みこみ、薄っすらと漏れる赤い陽と細くたなびく雲とが、赤と黒との美しいストライプを作っていた。その場にいた誰しもが、その光景を見ていただろう。貴族も冒険者も。そして今か今かと身を隠し、襲う機会を待っている盗賊達も。


 陽完全に沈み終わってから、数分してから辺りは暗闇に支配された。

 出来れば陽が沈む前に、山から逸れたかった護衛の冒険者達は最悪の心境だっただろう。一方で、盗賊団の恐ろしさを知らない貴族の男は、何の気なしに魔法の光で辺りを照らしながら、野営の準備を始めようとする。

そして、その光を合図に盗賊たちが動き出した。

 まず、草原の草むらに潜んでいた十数人の盗賊の男たちが一斉に、護衛の冒険者たちへ襲い掛かった。

貴族の男は盗賊達の出現に驚き、すぐに先頭に停めた馬車のところまで逃げる。一方で、冒険者達は、盗賊達を相手に、それぞれ剣や槍や杖を手に取り戦う構えを見せようとする。

 しかし、盗賊達はやたら強く、しかも初動のさもあって、数人が斬られ手傷を負う。

 冒険者たちも負けじと盗賊へ立ち向かうが、盗賊達の方が明らかに強い。人数さや士気のだけでなく、単純な戦闘力が冒険者とは大きく違っていた。兵士で例えるなら練度と経験値が違うのだ。そこには人を襲うことを生業にしている野蛮な強さがあった。

そうして一人二人と目の前で殺されるのを目撃した冒険者達は徐々に逃げ始める。元々はした金で雇われていた彼らは、雇用主への忠誠心は薄く、根無し草の冒険者にとって命よりも大切な物などなかった。加えて、真っ先に護衛対象が逃げてしまったのだから戦意など消え失せるというものだ。

 徐々に、そしてついにはほとんどの冒険者が、貴族の男のあとを追うように馬車へと走っていった。

 そして、大人の冒険者の中に混ざる1人の少年もその後に続いた。逃げることには抵抗はあったが、自分一人ではどうあがいても盗賊たちには勝てない。それが自然の摂理だと自らに言い聞かせていた。

そしてそのころ、貴族の男は少し先に裸の馬に跨り振り落とされないように気を付けながら少し先を慎重に走っていた。

盗賊たちは、傷を負って動けない数人を切り伏せた後、逃げる一行を見送り、残された馬車の中身を漁ることに専念する。誰一人として、彼らを追う物はいなかった。



夕暮れ時の朱色に染まった草原の脇を、数台の馬車が道なりに連なり走っている。そこは王都へと続く街道の一つで、道の反対側には木々で覆われた小高い丘が不気味に覆いかぶさっていた。

貴族の男が一人と、その護衛として冒険者を10名ほど乗せた馬車は、王都へ向けて街道をまっすぐに進む。

一応王国が管理しているものの山賊の被害が絶えない危険な道だった。護衛のために馬車に乗っている数人の冒険者の表情は、自然と険しくなる。

そもそも、一行の王都へ向かう旅の道程はいささか不自然なものであった。というのも、彼らが現在進んでいる道の付近の山には、周辺の街では有名な盗賊団が根城としているものがあり、通常の旅人であれば、よほどの事情が無ければ、この辺りの道は避けて通る。

ではなぜこの馬車はそんな危ない道を我が物顔で突っ切っているのか。

この馬車は、王国へと向かう貴族が急ごしらえで用意したもので、自前の食糧や少しの趣向品以外に金銭的な価値のあるものは載せていない。そのことから、最悪の事態になれば、荷を置いて裸の馬に跨り、逃げのびることもできる。ゆえに、「もし襲われたら盗賊の狙いである荷物を捨てて逃げれば追ってこないだろう」というような安易な打算からこの街道を選んだのだ、と知恵の回る商人ならば考えそうだが、実際はそうではなかった。


単純に、この貴族はそのことを知らなかったのだ。

 元々王都を本拠としている貴族だ。領地へはたまのバカンスや、祝い事でもない限りほとんど戻ることはない。実際、ここ数年は一度も、本来の領地へ帰っていなかった。それゆえに、自身が納めている領地に着いても関心は少なく、彼はここ数年で有名になった盗賊団の存在を知らなかったのだ。


 左手に見える地平線の下に太陽がほとんど沈みこみ、薄っすらと漏れる赤い陽と細くたなびく雲とが、赤と黒との美しいストライプを作っていた。その場にいた誰しもが、その光景を見ていただろう。貴族も冒険者も。そして今か今かと身を隠し、襲う機会を待っている盗賊達も。


 陽完全に沈み終わってから、数分してから辺りは暗闇に支配された。

 出来れば陽が沈む前に、山から逸れたかった護衛の冒険者達は最悪の心境だっただろう。一方で、盗賊団の恐ろしさを知らない貴族の男は、何の気なしに魔法の光で辺りを照らしながら、野営の準備を始めようとする。

そして、その光を合図に盗賊たちが動き出した。

 まず、草原の草むらに潜んでいた十数人の盗賊の男たちが一斉に、護衛の冒険者たちへ襲い掛かった。

貴族の男は盗賊達の出現に驚き、すぐに先頭に停めた馬車のところまで逃げる。一方で、冒険者達は、盗賊達を相手に、それぞれ剣や槍や杖を手に取り戦う構えを見せようとする。

 しかし、盗賊達はやたら強く、しかも初動のさもあって、数人が斬られ手傷を負う。

 冒険者たちも負けじと盗賊へ立ち向かうが、盗賊達の方が明らかに強い。人数さや士気のだけでなく、単純な戦闘力が冒険者とは大きく違っていた。兵士で例えるなら練度と経験値が違うのだ。そこには人を襲うことを生業にしている野蛮な強さがあった。

そうして一人二人と目の前で殺されるのを目撃した冒険者達は徐々に逃げ始める。元々はした金で雇われていた彼らは、雇用主への忠誠心は薄く、根無し草の冒険者にとって命よりも大切な物などなかった。加えて、真っ先に護衛対象が逃げてしまったのだから戦意など消え失せるというものだ。

 徐々に、そしてついにはほとんどの冒険者が、貴族の男のあとを追うように馬車へと走っていった。

 そして、大人の冒険者の中に混ざる1人の少年もその後に続いた。逃げることには抵抗はあったが、自分一人ではどうあがいても盗賊たちには勝てない。それが自然の摂理だと自らに言い聞かせていた。

そしてそのころ、貴族の男は少し先に裸の馬に跨り振り落とされないように気を付けながら少し先を慎重に走っていた。

盗賊たちは、傷を負って動けない数人を切り伏せた後、逃げる一行を見送り、残された馬車の中身を漁ることに専念する。誰一人として、彼らを追う物はいなかった。

 


 その日、キティは、冒険者ギルドに張り出された依頼を眺めていた。彼女は、多方面から寄せられる依頼書を一か所に張り出しているクエストボードと呼ばれる掲示板を、食い入るように見つめている。

(お、ほうほう。これもいいな。ふーん)

そこにあるのは生の情報だ。自分たちの力ではどうにも回らなくなって、誰かに助けを借りる時に、冒険者ギルドが利用されることが多い。そういう情報の中には、キティが欲しがる情報のカケラが混ざっている。キティはそう信じていた。

というよりも、彼女の求めている情報がどこで手に入るのか、現状ではその手掛かりはほとんどないのだ。結局、本業の次いでとしてこの方法で情報収集を行うしか、彼女には手立てが思いつかなかった。

(よし、これがいいな)

キティは一枚の張り紙に書かれた内容を暗記して、受付に行く。

「ここの領主様の護衛の依頼を受けたい」

「こちらですね。わかりました」

と受付の女性は受け答えする。

キティはそれに無言に頷くと、一枚のカードを渡した。

女性は一瞬怪訝な顔をしてから、一度キティの顔を覗き、元の笑顔で対応した。

 「Bランク冒険者のキルティー・エルディーさんですね。はい、わかりました。これで依頼は受注されましたので、詳細などは依頼主様のところでお聞きください」

 受付はそれだけ言うと、カードをキティに返し、今度はキティの後ろからやってきた少年に応対する。

 キティもそれ以上することはないと、冒険者ギルドを出た。

 

 依頼主である貴族の男はこの辺り一帯の領主だ。普段は弟に領地の管理を任せて自らは王都で栄華を極めているという噂が、街では実しやかに流れていた。実際のところどうなのかキティにはわからない。しかし、ともかくあまりいい噂は聞かなかった。

 

 当日、実際にあってみると、幾つか奇妙に思えることはあったが、キティは特段気にもせず、護衛として馬車に同乗する。こうして一行は町を出て、滞りなく王都へと続く街道を進み始めた。



初投稿で、おまけに文体も作風も設定も定まっていないので途中色々と変わったりすると思います。

取りあえずお試しで書いているので大目に見てください。

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