僕の性格事情
「おはよう。」が飛び交う廊下を抜けて、やっと自分の席へとたどり着く。廊下よりは静かだが、喋り声が聞こえるのをイヤフォンを付けて独特な世界へと1人で迷い込む。
そんな感じが僕、幼 咲見は「今は」とても好きだ。本当はこの学校らしい感じが好きだったが、今はそう思う事はないだろう。
なぜなら、僕はこのクラス、いや、この学校はあまり好きではない。噂に振り回され、いじめたり、1人にしたりする。そんなの、傷付くしかない。単なる噂にそこまでなるこの学校がバカらしく、とても嫌いだ。
ザワザワと人の動きが変わりだし、少し静かな教室へと変化する。彼が来たのだ。
そんな彼はとても優しい顔をとても悲しそうな苦しそうな困り顔へと変化させ、大きな背中がとても小さくして、「今日も」やって来た。
僕は腰をあげる。つけていたイヤフォンも外してポケットに携帯とともに入れ込んで、そんな姿の彼の元に向かって、腕を引く。
「おはよう、誠。モタモタするな、そんなところで。こっちへ来て、席につけ。」
自分でも気付いているくらいの横暴さで、彼の席へと連れていく。僕がさっき席に着いていた席へと連れていく。僕がさっき座っていたのは彼の席だ。僕の席はまた別にあり、荷物はそっちに置いている。
理由はこうだ。たまにになったが机が消えてしまうからだ。そう、彼の名前は葉谷口 誠。あの噂の1人だ。
「おはよう、咲見。今日もごめん。」
まるで見た目からは想像出来ないくらい小さな子犬のように小さくなる。彼の悪いクセだ。
「どうした。いつもの朝の幼馴染を守るような姿のように大きくいればいいじゃないか。」
「そ、それは、夜空はいつも気付いてばっかだからで、えーっと、だからで…。」
「…。」
僕はあえて黙る。
これは彼の優しさなのだ。
彼は人に優しく、自分に厳しすぎなのだ。
僕はその部分は難があるだけで良いところだと思っているから、あえて黙る。
しかし、あたあたと喋るのみの彼はつくづく犬のようにみえてくる。
彼の幼馴染、青伊 夜空はまた、彼と同じく噂の1人だ。噂の中で最年長の彼女は成績には関わるような事はないが、最年長なことでまとめ役と思われているので陰湿で虐められやすい。
そんな彼女を守る彼は警察犬のような強さのある犬のようだ。
そして、今の彼は小さな子犬のようだ、と思ったからだ。
「そういや、今日も図書館に行くのか?」
「ふぇ?あ、うん、行くよ。返す本があるの?」
不意を突かれて変な声を上げた彼は、もと通りになり、落ち着きを取り戻し、「いつもの要件」をきいてくれる。
「ああ、いつも通りで。」
「はいはい、お預かりします。」
彼に僕は借りていた本を渡し、彼は彼の机へと置いている。
彼は本を大切にする。そのため、鞄に入れず、いつも手で持ち歩く。今では、イジメで本が傷つかないようにという為、ずっと持ち歩いている。
僕らの「いつも通り」というのは、彼のおすすめということである。
僕は小さな犬のナイトと同じクラスで、楽しく過ごしている。