魔石
海の日
店を出た後、影狼とアオはまだ魔石を売る店探しをしていた。
「なかなか見つからないな」
(そうですね。もう日が暮れそうです)
2人して途方に暮れていた。あの後何軒かあたったのだが、「うちでは買い取れません」の一点張りで売ることもできなかった。
夕暮れのなか、通りには閉まっている店の方が多くなってきた。
今日は、あそこで最後にするか・・・。通りの突き当りの小さな建物に入る。
中に入る日暮れ間近もあり、薄暗い部屋の中にランプの灯が怪しく揺らめく。その奥の方のカウンターに1人の老婆が座っている。
あまり期待せずに老婆に話しかける。
「すみません」
「なんじゃ?こんな時間に珍しい。店を出したいのか?」
「いえ、魔石を売りたいんですが」
「魔石?どれ見せてみぃ」
魔石を取り出し老婆に見せる。老婆はそれをずっと眺めてから、
「小僧、これをどこで手に入れた?」
「エルフから貰いました」
「なるほど、エルフか・・・さぞかし位の高い・・・ぶつぶつ・・・」
老婆が1人でつぶやき始めた。ここも駄目そうだな。あきらめかけたとき・・・
「この魔石、金貨10枚で買い取るがどうじゃ?」
(影狼、いいんじゃないですか。妥当な値段だと思いますよ)
アオが納得するならその値段だろうと思い、
「わかりました。金貨10枚でお願いします」
「では、そこで待っておれ」
そういうと老婆は奥の部屋に入っていき、数分後に出てくる。
「ほれ、金貨10枚じゃ。持っていけ」
麻の袋に入った金貨10枚を1枚1枚並べて見せてまた詰める。
「確かに金貨10枚貰いました」
「しておぬし、エルフの王族と繋がりがあるのか?」
いきなり奇なことを聞いてくる老婆だ。
「ありませんが」
「そうか・・・、この魔石は魔力の質もよく、天然ものにしては形が綺麗じゃ。となると作られたものということじゃが、今はエルフでも王族以外の魔石作成は禁じられておるからのぉ。ましてや、人間の手に渡ることなど滅多に無くなってしもうたんじゃよ」
なら、リュミエール達は王族だったわけか?
「なんにしろ、また珍しいものが手に入ったら持ってきてくれ。相応の値段で買い取るぞ」
「その時は、よろしくお願いします」
店を出た頃は、日が落ち暗くなっていた。
(良かったですね、お店は古かったですけどちゃんと買い取ってもらえて)
「そうだな、お金も手に入ったし明日はこの街を見て回るか」
(わーい。明日が楽しみです)
その日の夜は適当な宿屋に泊った。
今年から山の日があるらしい。