悪徳
今回は人によっては気分が悪くなるかもです。
街についてから、金銭の調達のためにまずは山菜と魔石を売る店を探す。ひときわ大きな通りには、店がたくさん並んでいる。
(いろんな店があるんだな。山菜と魔石を売るには・・・)
売る店を探していると、
(影狼見てください!!あそこに綺麗な宝石が売っています。ちょっと見てきましょう)
そのままアオは人混みの中を文字通りすり抜けて行ってしまう。仕方なく人混みをかき分けて後を追う。店の前まで来るとアオはうっとりした顔で青い宝石を眺めていた。
(アオ、まずは山菜と魔石を売ってからにしろ)
(少し見るだけです、本当です。それにしてもこの宝石綺麗だな~)
それに付き合って店の前に立っていると、店の人が気付いてこっちに向かってくる。
「いらっしゃいませ。お客様、お気に召した商品がありましたでしょうか?」
店の女性が笑顔で聞いてくる。文無しのひやかしとは言えないな・・・待てよ、宝石が売っているってことは、この魔石も売れるんじゃないのか。
「いえ、今回は物を売りに来たものでしてどうしたらいいかわからず、外の宝石などを見ていて少しこちらに立ち寄らせていただきました」
「そうですか。どのようなお品をお持ちになられたのか見せていただいてもよろしいでしょうか?」
俺は懐からリュミエールに貰った魔石を、出して店の女性に見せる。魔石を受け取り真剣に見つめること数分、女性は一言。
「屑石ですね。出せても銀貨3枚迄です」
そんなに安いのか、というより女性の顔つきと声のトーンが変わった気がするが。
(影狼、駄目ですよ。その魔石がそんなに安いわけありません。その女の人にもう一回見てもらいましょう)
アオは鑑定ミスと思っているようだが、まさかこの女はこの魔石を屑石として買い取ろうとしているのか?ほかの店にも見てもらった方がいいな。
断りを入れて店を出ていこうとしたとき。
「お客さん。店の品を勝手に持っていかれちゃ困るんだけどなぁ」
先ほどの女がドスを利かせた声で話してくる。何を言いっているのか分からないがとりあえず、
「お店の物には何も触っていませんが」
「その魔石だよ。それはうちの商品だよ」
なるほど。この女、屑女だったか。
「お客さん、盗みだよ。犯罪だよ犯罪。衛兵呼ぶよ。おとなしく商品置いて帰れば通報しないであげるけど、どうする?あと、うちには雇われの用心棒が2人いるから暴力沙汰もよろしくないけど、聞き分けならないなら仕方ないな」
救いようのない屑女だ。なるべく騒ぎは起こしたくないが・・・。
(アオ、どうする?)
・・・ん、反応がないぞ。
アオの方を向くと女のあまりの豹変ぶりに驚いて固まっていた。
その間に店の奥から、大男2人がのそのそと出てくる。片方は褐色スキンヘッドの大男。もう一人はなんだ?棍棒を持った緑色の・・・人間か?
(オークですよ。人間の街にもオークがいるんでね)
アオが正気に戻って教えてくれる。オークと種族なのか。
「お客さんどうします?この2人はこの街の傭兵ギルドでも有能な2人さ。戦うってんなら止めはしないけどねw」
「おいおい兄ちゃん、やめといた方がいい。そんな小さな体じゃ俺たちの相手になんねえwなぁ、ボブ」
「・・・」
「だんまりですか・・・。ナミーナ今日は早く店閉めてこ食事にでも行こう」
喋るオークに、静かなボブという大男。そして屑女ナミーナ。
「店にいるときはナミーナさんと言えって言ってるでしょ。お喋りはそこまでにして、さっさ潰しちゃって!!」
ナミーナが命令する。戦うとは言ってないが戦うことにいつの間にかなっていることにも呆れるが、どうしたものか・・・。
「死んでもらう」
オークが棍棒を振りかざし突っ込んでくる。それを軽く避けながら足をかけて転ばす。オークはそのまま店の壁に突っ込み穴をあける。まず1人・・・。
次はボブという男が後ろからホールドしてくる。しかし、所詮ただの人間の力。影狼は難なく腕を外してボブの腹に1発きめる。2人目・・・。
最後は屑女。ナミーナはおどおどしながら立っている。脅すだけでいいか・・・。
ナミーナに近づこうとしたとき、後ろから大声で棍棒を振り上げて向かってくるオークに気付く。咄嗟に懐の薬草をオークの顔に投げつけ、怯んだところの顔面を殴りつけたのだが、加減を間違えて頭が弾け飛ぶ。それを見たナミーナは奇声を発して失神してしまった。
「・・・」
(・・・)
「薬草が無駄になったな」
(そこじゃないと思います。どうするんですかこれ!!)
珍しくアオからの突込みが入るが、過ぎたことは仕方ない。騒いでも後の祭りだが、後始末はしておくか・・・。腰の刀を抜きアミーナの首筋に宛がう。
(影狼!!)
「どうした?」
(何をしてるんですか?!)
「とりあえず、口封じ」
(殺生はいけません)
「何故だ?もう、1人殺している。そしてこの2人も加害者であり目撃者だぞ?殺さない道理はない」
(それでもです。お願いします)
アオがすごく真剣に説得してくるものだから、
「・・・」
とりあえずアオに従い刀を納めると、外が騒がしいことに気付く。どうやら衛兵が駆けつけてきたらしい。あんだけ騒いだなら外の人たちが気付かない方がおかしいか。衛兵から瞬時に身を隠して、裏口から店を後にした。
タブレットよりPCのが打ちやすい。執筆時間は変わらないですが・・・。