方針と基本
PCメガネが行方不明
(それは・・・世界を救ってもらいたいのです)
アオの口から意外な言葉が出てくる。今まで隠密行動から護衛や物資調達などの仕事をしてきたが、世界を救うなどと大それたことを考えたこともなかった。どこぞの大名が、天下を統一して太平の世をつくるなどと言い出す可能性はあるかもしれないが、影狼は一介の忍者である。主君の命に従い行動するだけだ 。それだけに、何をすればいいのか想像もできなかった。
「それで、世界を救うにはどうしたらいいんだ?」
(世界を救うと言っても天下統一をしろとかではないです。今はある理由でこの世界に存在していませんが、これから数年後に一人の人物がこの世界に現れます。その人物を打ち負かして欲しいのです)
その人物だけで世界を脅かす存在になるものなのか?と思う。それに・・・
「だったら、あんたが直接倒しに行った方が早くないか?」
そうだ、あれほどの力があるなら俺の力を借りるよりも確実な気がするが。
(今の私は力を長時間使用することができません。見ての通り存在が不安定です。昔は実態があったのですが、もう肉体は消滅してありません。今はアストラル体・・・つまりあなたが思っているように幽霊と考えてもらっても構いません。常にこの状態を維持することに力を使っています。なので私が直接力を行使するよりも、他の者に魔力を注ぎ込んで戦ってもらう方が楽なのです。ただ魔力を送るだけですから)
「つまり魔力だけはよこすが、戦い方は俺に任せるということか」
(そうです。ですからこれからは魔力の使い方にも馴れていってもらいます)
これで整理できた。まずこの世界で一番最初にやらなければならないことが魔力の扱い方を覚える。そして、それに応じた戦い方を身につける。充分に力を付けたら、そこからの目的はふたつ。ひとつは数年後に現れるらしい人物の打倒。そして、もうひとつがあの侍の抹殺。このことだけを考えていけば良いわけだ。
「ではこれからについてだが、あんたに・・・」
と言いかけたところに
(ちょっと待って、これから生活を共にするんだからお互い名前で呼び合いましょう)
とアオがこちらに提案してくる。断る理由もないので了承したら、なんだか嬉しそうに何度も呼びかけてくる。その度に「なんだ?」と聞くと「くすくす・・・、呼んでみただけ」と意味のない行動をしてくるものだから、途中から無視をしつつ話し合った結果、当分はこの遺跡を拠点として修行を行うことにした。
次の日・・・早朝から魔力の使い方についてアオから教わった。アオから魔力を身体に流し込まれると、確かに熱を帯びた力が入ってくるのがわかる。
最初に魔力の扱い方について教わる。まずは体に中にある魔力の管理から始まった。これは、魔力の残量を知ることと体の各部位への魔力移動や魔力放出の加減調節する為の基本らしい。どうやらイメージが大事とのこと。目を閉じて頭の中で自分の体をおおまかに想像する。そしてそこに魔力のイメージを付け加える。すると体全体に青い揺らぎが包み始める。このイメージは目を開けている状態でも瞬時に思い浮かべられることが大事だそうだ。だが全体的右半分に魔力が偏っている。魔力にも利き側があると教わった。本来才能がある者は、小さい頃からこの偏りを矯正するとこから始まる。俺が偏りを治すのに2日かかったが、まだ意識しないとすぐに右側に偏ってしまう。
次に体内の魔力移動を練習する。だが基本的な魔力移動は魔力の偏りを治すものと感じが似ているためすぐに修得できた。
その日のうちに、放出の仕方も教わる。攻撃手段や他者への回復時など体外への干渉に必要らしい。これは一番難しい。身体の内から外へと魔力がなかなか出て行かない。魔力のある者は体内に一定以上溜まった魔力を外に出さないと、心身共に異常を起こす為、息をする様に自然とできることらしいが、魔力のない者には本来不要な行為の為に、苦労しているらしい。体外に魔力を放出できるようになるまでに、一週間かかった。
これで魔力の扱いの、基本中の基本を覚え終わった。
後半は説明回です。