邂逅
続きで来ました。
「チチチ・・・」
鳥の声の声が聞こえる・・・。瞼越しに光を感じる。瞬きを数回・・・眩しい。手を目の上の持ってきて影で眩しさを和らげて上体をを起こす。
「ここは・・・」
辺りを見回すと、知らない森の中だった。見たこともない種類の木々や草花、見慣れぬ地形、それに先程まで夕刻だったのに今は日が高く昇っている。
「気を失っていたのか?」
周りを警戒しながら立ち上がり、もう一度辺りを見渡す・・・が、やはり自分の知る森ではなかった。
「誰かに運ばれてきたのか?」
一番最初に思いついたのは、先程まで対峙していた男の姿だった。しかし、それらしい人物はどこにもいない。なぜこのようなところにいるのか、悩んでいると突然・・・
(・・・こっち・・・)
頭の中に女性の声が微かに響く。身構えるも、それっきりその声は聞こえてこない。一抹の不安は残るが、このままここに居ても仕方がないので、取り敢えず適当に進んでみることにした。進む道中に見る虫や動物も見たことがないものばかりだった。
「本当にここは何処なんだ?」
さらに進むと、人工的な建築物が見えてきた。かなり古くボロボロに崩れた石の遺跡だ。入口を探してみようと周りを一回りしてみることにした。すると入口らしき空洞を見つけた。入り口付近は昼間なので明るいが、奥はかなり暗く無闇に入るのは得策ではないだろう。しかし何故か心に引っかかるものがあり、とても気になる。普段なら無駄な好奇心は押し殺すのだが・・・入ろうかを悩む。すると・・・
(・・・こっち、こっち!!)
またあの声が聞こえた。先程よりも嬉しそうに聞こえるのは気のせいだろうか?
「取り敢えず入ってみるか」
今さっき見つけた遺跡にいきなり入るのもどうかと思ったが、この森がどの位の広さなのかも分からない為、雨風が凌げる場所も欲しかったので入って見ることにした。
暗い道を松明で照らしながら進む。ほぼ一本道なので迷うことなく30分ほど進むと、大きな広間に出た。外からみたらそこまで大きくない遺跡だったが、どうやら少しずつ傾斜になっており地下まで延びていたらしい。広間に足を踏み入れようとすると・・・
(ここです。ここ、見えますか?)
また、声が聞こえた。今度は頭の中ではなく広間の奥の方からだ。その広間の奥の闇の先に青白く光るものが見えた。周りを警戒しながら発行源の元まで近寄ると、そこには澄んだ蒼い色をした大きな結晶が、台座の上に浮いていた。
(やっと会えました!!)
間違いない。この結晶から声が聞こえる。
「意思があるのか?」
そう問いかけると
(はいっ!!)
元気で嬉しそうな返事が返ってきた!?どうやらしの疎通はできるようだ。少し怯むも、続けて質問をした。
「できれば、ここが何処なのか教えて欲しいのだが?」
(え〜とですね、ここはあなたのいた世界とは別の世界です)
「別の世界?ならここは異国ということか?!」
(違います。国が違うんじゃなくて世界ですよ世界。わかり易く言いますと、黄泉の国に来たとかそのぐらい位違います。・・・あっ、黄泉の国に〝国″って付いちゃってます!!ちょっと、待ってください。今、違う例えをですね。う〜ん・・・)
何かよく解らないことで悩んでいる声の主は置いておいて、少し状況を理解したがさらに次の質問が湧いて出て来た。そしてそれを聞いてみた。
「元いた世界とは世界が違うとか、詳しく知っているようだが何故なんだ?」
少し威圧的に聞いてしまう。だが、この世界の住人なら、今いるこの世界のことを知っていることはおかしいことじゃない。むしろ当然だ。しかし、こちら側の事情を知っていることが引っかかる。まさかとは思うが・・・。
(それは・・・ですね・・・。あなたに会う為に私がちょちょいのちょいと、力を使ってですね・・・あなたをこちら側に・・・・ごにょごにょ・・・)
語尾に行くにつれて声が小さくなる。何かを察したのか、俯きながら申し訳なさそうにチラチラとこちらを見てくる。さっきまでの元気は何処に行ったのか。最後の方はもう聞き取れないほど小さい。
「つまり、そっちの都合でこの世界に呼んだということか?」
(はいっ!!)
また元気な返事が帰ってくる。先程までの罪悪感は何処へ・・・。
「ならもう目的は果たしたな。元の世界に還してくれ。あちらにはやり残したことがある」
(ダメです。あなたには、これから私とやってもらわねばならないことがあるのです。)
苛立ちを抑えつつ元の世界への帰りを要求したが、きっぱり断られた。流石に一方的過ぎるむこうの都合に付き合う義理もなく。
「知らん、そちらの都合など関係ない」
(うぅ〜、そんなこと言わないでください。あなたとこうして会うことは、あなたが産まれたその日から決まっていたんですから。運命・・・そう運命、いわば運命というやつです!!)
「なにを戯言を言っている。今取って付けたその物言い、誰が聞いてもおかしい。まさか、狸か狐が化かしているのか!」
(むぅ、私は狸でも狐でもないです。失礼ですよ!!)
どちらが失礼なのかと思いつつも、むこうも元の世界に返す気がないらしいので、ここにいる意味もないと思い踵を返して帰ろうと歩を進める。
(わわわっ!!ちょ、ちょっと待ってください!!お願いします!!)
しかし、聞く耳を持たないと言わんばかりに無視して歩く。すると・・・
(わ、わかりました。元の世界に還しますので待ってください)
そこで歩を止め、振り返る。
(その前にお願いがあります。この姿のままだとあれなので、まず元の姿に戻して貰いたいのですが。)
どうやら結晶が本来の姿ではないらしい。仕方なく結晶の近くに戻る。
「それで、どうすればいいんだ?」
(そんなに難しいことじゃありません。あなたの手で3回ほど撫でてもらえれば・・・キャッ///言っちゃいました。)
何故恥ずかしがっているのか理解できないが、とりあえずその結晶を撫でてみる。
(そこじゃありません、もうちょっと上です。う〜ん、違います。もう少し左です・・・行き過ぎです。戻って、右に戻ってください。その辺なんですが・・・あっ、そっそこは・・・エッチです。変態さんですか?・・・あっ、すみません!?冗談です!!冗談ですから撫でるのをやめないで下さい。お願いします!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ、そこ、そこです。はぁ〜気持ちいいですぅ)
何回も指図をされながら撫でること数分、望みどおりの場所を撫でれたらしく満足?したらしく、結晶がより一層強い輝きを放つ。
そして、ヒビがはいり真っ二つに割れた・・・だがしかし、何の変化もない。二つに割れた結晶の残骸も先程までの綺麗な色ではなく、ただの透明色だ。
「成仏したか・・・」
何故だか、達成感をあとにその場を立ち去る・・・
(成仏してないですよっ!!)
不意にまたあの声が聞こえた。声のする方に視線を動かすと、そこには頬をぷくっと膨らまして怒っている仕草をする女がいた。髪は先程の結晶を思わせる蒼色で腰辺りまで長く、瞳も見透かされそうな蒼色だ。肌も透き通る位の白さで、この世のものとは思えないほどの神秘性を持つ美女だった。ただ、衣服はなにも付けておらず、そして何より宙に浮いたことに驚く。
そして、女が空中を泳ぐかのように滑らかに近づいてくる。少し恥ずかしそうに目を逸らしている。そのような者がいきなり近づいてくるものだから、咄嗟に足元にあった小石を拾い近づいてくる女に投げて牽制しようとするが、小石は女性をすり抜けて後方の壁にあたる。
(な、なにするんですか!?わ、私ですよ!!さっきまで仲良くおしゃべりしていたじゃないですか。そこに無残に転がっている元結晶です)
仲良く話などした覚えなどない。
「黙れ、悪霊め。そう簡単には取り憑かせるものか」
(あ・・・悪霊・・・、こんな美少女が悪霊に見えますか?)
「その姿、先程の言動、人を惑わして取り憑こうとする悪霊以外なんだというのだ」
(悪霊なんかじゃありません。こう見えても歴としたー)
そう言いかけたが、今度は刀で斬りかかり話を遮る。当然刀はすり抜けるが、攻撃の手を休めることなく斬りかかる。
(話を聞いて下さい。・・・もぉ、聞く気がないのなら力ずくで抑えさせてもらえますよ。)
そう言うと女の体が青く光はじめ、女の目の前に直径2メートル程の深い青色の円が現れる。その円は穴らしく、中から無数の青い手が伸び出てこちらに迫ってくる。最初は無数の手を避けつつ攻撃するも、数が数だけについにそのうちの一本に左腕を掴まれてしまう。急いで刀で斬り払うも、立て続けに右脚、左脚、そして両手、最後に頭を掴まれて地面に押さえつけられる。両手を後ろで押さえられ身動きが完全にとれない。
「クソ、煮るなり焼くなり好きにしろ」
(えっ!?何してもいいんですか。ジュるり・・・)
女が何かを想像したらしく、よだれを垂らす。何かの危機感を感じる。
「だが、取り憑かれるぐらいならここで死ぬ」
口にはいざという時の為に毒薬を仕込んでおいた。これを、噛み砕けば苦しむがすぐに死ねるだろう。
(わっわっ!ちょっと待って下さい!!取り憑いたりしないから、死なないで下さい!!)
毒薬を噛み砕こうとした寸前で女が言った。
(拘束もすぐに解きます)
すると、青い手は離れていき自然に青い穴に還っていく。そして、手が全て戻ると穴も消えて行く。
拘束を解かれ自由の身になると、そこにあぐらをかいて座り込む。まだこの女を信用したわけではないが、危害を加えてくる様子もないので、とりあえず話を聞くことにした。
(えとっ、まずは自己紹介をしましょう。私の名前はアオ。結晶に封印されていましたが、あなたに助けて貰いました。ありがとうございましたっ!!)
「封印?やはり危険な存在なのか?」
(封印と言っても、自分で自分を封印したのです)
「見た目と同じで、またおかしなことをするな。」
(なんか引っかかる言い方ですね)
そう言うと、頬をふくらます。
「ならば、何か着るものを纏ってから反論してくれ」
アオは「ぁ」と言うと小さく呟く。
(エッチ・・・)
すると、アオは空中を円を描くように縦に回ると一瞬輝き次に目にした時には、白いドレスを着ていた。
(えへへ・・・お姫様みたいでしょ?)
そう言いながら、くるっと一回転スカートをなびかせながら回って見せた。
「ならこちらも名乗らなければな」
ドレスのことに何の反応も示さず話を続けたのが気に食わないのか、また頬をふくらましているが、こちらが名乗ろうとした時にアオはいった。
(あなたのことは、知っています)
紹介は無用とばかりに、腰に手を当て胸を張って威張っている。そういえば、あなたに会う為とか言っていたな。最初の方の会話を思い出す。
(あなたのことならなんでも知っていますよ。産まれた時から観ていましたから。初めてしたウンチの形まで覚えてます)
「!!」
おぞましいことをサラッと言うアオに、寒気を感じた。しかし、まだ虚言の可能性も・・・
(あなたの名前は影狼。歳は16。信濃の山奥で育ち幼い頃から父親と厳しい修行に明け暮れてましたよね。)
・・・は無さそうだ。
(そして一年前から、とある姫様に仕えていたけど・・・)
「やめろ・・・」
低い声で話を遮る影狼だった・・・。
ーーーー 彼の名は影狼、先の決闘で侍と戦っていた忍者【人狼】だ。 ーーーー
「はいっ!!」
アオさんのお返事100点!!




