覚醒、ただ一人の白
どうもこんにちわ。
暇な時間が増えたので読み専だったのですが、書き始めてみました。
暇つぶしにでも読んで頂けたら嬉しいです。
皆さんは、気付いたら赤ん坊だった。なんて経験があるだろうか?
俺はある。
今日で3歳を迎える俺は、元々日本に住んでいた社会人だった。
なのに夜にベッドで寝て、起きたら自分が赤ん坊になっていたのだ。
最初のうちは、襲いくる眠気や、パニックでまともに何かを考えられなかったが、一年経つうちにそれも治まり、ようやくこうしてじっくりと考えている。
「失礼いたします」
そう言って俺のいる部屋に入って来たのは『アデーレ』この屋敷に住むメイドの一人らしい。他にもたくさんのメイドがこの屋敷に住んでいる。
ここで、俺のいる部屋の状況を説明しようと思う。
まず、俺の他にも2人の子供がいる。男女一人ずつで、二人とも白い髪の毛だ。俺も遠くにある鏡に映っているのを見る限り、白い髪だ。
「おや、アーロン様しか起きていられませんか」
この台詞で分かったと思うが、俺の名前はアーロンらしい。他の二人の名前は姉が『アウローラ』、兄が『ダヴィド』だ。二人はもう4歳だ。
「仕方ありませんね。また後で来ましょうか」
そう言ってアデーレは去って行った。どうやら用があるのは俺以外の二人だったらしい。俺はこの一年、ろくに外に出ていない。何時になったら外に出られるのだろうか…。
★☆★☆
よう、4歳になったぜ。この3年間は特に何も無かった。一つあるとすれば、この世界には魔法があるということだ。3歳からは文字の勉強をし始めた。といっても書く為の文字はひらがなの様な文字しか無く、すぐに覚えられた。そう、『書く為の文字は』だ。この世界には、幾つか言葉の種類がある。
一つ目は、書言語。文字通り、書く為の言葉だ。どんな種族でも共通しているものらしい。これはもう覚えられた。
二つ目は、話言語。これも文字通り、話す為の言葉だ。大陸なんかによってなまりの様な物はあるらしいが、これも種族共通の物だ。これはまだ練習中だ。
そして三つ目、精霊言語。なにやら、精霊という存在に願いを伝える為の言葉で、魔法を使う時に必要な物らしい。これは、日本語をカタコトで話している様な感じだ。音も日本語に近かったのですぐに覚えられるだろう。
まぁ、主に使うのはこの三つだろう。ほかにも家によっては独自の暗号の様な物も覚えさせられるらしい。俺の家にはなかった。どうやら、5歳になったら魔法が使える様になるらしい。兄貴と姉ちゃんに聞いた。
この白髪にも理由があるらしい。どうやら、5歳の時にいままで体内に蓄積された魔力によって体が変質して、精霊が見える目と、精霊の力を借りる為の器が体内に出来るらしい。精霊にはいくつか属性があり、その属性によって器と髪の色が変わるのだとか。兄貴は赤色に、姉ちゃんは青色になっていた。
「よう、元気か?アーロン」
「兄貴こそ、魔法の練習は大丈夫なの?」
話しかけて来たのは兄貴だ。いまは魔法の練習の時間のはずなのだが…抜け出して来たのか?
「基礎なんてとっくに出来てるって言ってるのに、基礎しかやらせてくれない先生が悪いんだよ。それよりお前もとうとう魔法が使える様になるな!お前は賢いからきっと凄い魔法使いになるぞ!」
兄貴はそう言い残して訓練場に戻って行った。なんやかんや真面目な性格をしているので訓練に戻ったのだろう。
「ここにいらっしゃいましたか」
そう声を掛けて来たのはアデーレだ。彼女は俺の子守りを任されているらしく、ほとんど俺と一緒にいる。
「明日はアーロン様の魔力解放の日でございます。準備は終わっているのですか?」
そう、明日は俺の誕生日だ。つまり俺も魔法が使える様になる。肉体が変質するというのは怖いが、 この世界では一般的な事なのだ。それに、俺も魔法という言葉には前世から憧れがある。どんな属性になるのか楽しみだ。
「お部屋に戻りますよ」
アデーレに手を掴まれ、強引に部屋に戻されて儀式のやりかたなんかをおさらいさせられた。それは夜になるまで続き、俺はいつのまにか眠ってしまっていた。
☆★☆★
「アーロン様!」
俺はアデーレの声で目が覚めた。その声はどこか焦っているように聞こえた。何かあったのだろうか?
「もう司祭様が到着されております!早くお着替えを!」
その言葉で俺は一気に目が覚めた。どうやら寝坊してしまったらしい。アデーレにも手伝ってもらい、すぐに着替えて父さんの部屋へと向かう。
「遅いぞ、アーロン」
「すいません、父さん」
「はっはっは!良いでは無いか。それだけ楽しみで眠れなかったという事なのだろう」
父さんの部屋には見た事の無いおじさんがいた。この人が司祭様なのだろう。
「こんにちわ、司祭様。私の名前はアーロンです」
「礼儀正しい子だ。私はクレマン、君のお父さんとは学園にいた頃から友達なんだ」
話しを聞くと、父さんとクレマンさんはずっと友達らしい。姉さんと兄貴の時もクレマンさんが魔力を解放したらしい。暫くの間、父さんとクレマンさんは話しをしたいらしいので、俺はアデーレと一緒に詠唱の最終確認を行っていた。
「じゃあ早速始めてしまおうか。詠唱は覚えているね?」
「はい」
クレマンさんが、懐から取り出した紙を俺の体に貼付けて行く。
「心配しなくて良い。これは儀式を助ける効果のある札なんだ」
魔力を外に向かってはじき出すのがどうこう、と説明するクレマンさんを見ながら俺は早くそれが終わるのを待っていた。
「さぁ、準備完了だ。詠唱を唱えてご覧。失敗しても大丈夫だよ」
失敗しても良いという言葉で安心した俺は、詠唱をゆっくりと、確実に唱え始めた。
『魔力、弾けて、混ざって、器を、我が肉体に』
詠唱が終わると、俺の体から粒子状の物が飛び出し、俺の目の前で器の形に変形しだした。それを感動しながら眺めていると、クレマンさんの口から「おかしい」と言う言葉が聞こえた。その言葉に不安を抱えながら儀式が終わるのをまつ。やがて光の器は俺の体の中に吸い込まれて行き、俺の右目に痛みが走った。
「うわぁぁぁぁ!」
俺はたまらずその場に転がる。父とアーデルが抱きしめてくれる。
「我慢しろ!そのじきに治まる!」
「しっかりして下さい!私がついています!」
痛みは10秒ほどで治まり、俺は立ち上がった。
その時、アデーレと父さんが息をのんだ。
「…?どうかしましたか?」
俺は何事かと思い、二人に疑問を投げかける。しかし、答えをくれたのは父さんでもアデーレでも無く、クレマンさんだった。
「…これをご覧なさい」
そう言って渡して来たのは一枚の鏡だった。それを覗き込むと、そこには『白髪』の俺がいた。
「え…?どうして…?」
思わず言葉が出てしまう。儀式が終われば髪は必ず違う色になるはずなのだ。
「…器の生成はうまくいっていた。アーロンくん、精霊は見えるかね?」
そう言われ急いで周りを見渡すと、そこには色とりどりの精霊がいた。
「見えます」
「!そうか!何色に見えるんだい?」
あくまで優しく言葉をかけてくるクレマンさん。そこには必死さが感じられた。俺もそれに必死に答える。
「いっぱい、色々な色がいます」
なんとかその言葉を発すると、今度は3人が息を飲むのが分かった。俺は魔法を使えないのかと諦めていると。
「…聞いた事が無い」
というクレマンさんの言葉が聞こえた。やっぱりかと諦めかけたその時だった。続きが聞こえて来たのは。
「精霊が大量。それも多属性だと?」
そんな声が聞こえて来た。
父さんの提案で俺たちは一回気を落ち着かせる為に、食事をとる事にした。
★☆★☆
食事中、俺以外の3人は話し合いをしていた。俺は一人で食事をしていたのだが、そのとき、赤色の精霊の一匹が近づいて来た。俺の周りで飛び回るそいつが微笑ましく思い、俺はつい手を伸ばしてしまった。すると、精霊は光り輝き、俺の手に吸い込まれた。驚いて椅子から転げ落ちてしまう。
「大丈夫です…かぁ!?」
アデーレが俺に近づいて来て、手を差し伸べて来たが、またしても驚きの声を上げて固まってしまう。
「どうしたのだ?」
「何があったんですか?」
二人分の足音が聞こえ、俺の姿を見た瞬間に足を止める。
「今日、驚くのは何回目だ?」
いち早く回復したアデーレが、自分の魔法で氷を作り出して俺に見せてくる。そこには『赤い髪』になった俺がいた。
「え?」
驚くが、原因は分かる。多分あの精霊だろう。たしかあの精霊も赤かったはずだ。吸収出来たのならと思い、出ろと念じると、手から粒子が飛び出して目の前に赤い精霊が飛び出して来た。氷を見ると、俺の髪は白く戻っていた。
「…」
全員が無言で俺を見つめてくる。俺はなんとか一言だけ口から絞り出す。
「…やっちゃったぜ」
俺の言葉を聞いてハッとした父さんが言葉をかけてくる。
「…アーロン、誕生日パーティーは明日だ。今日はひとまず部屋にいなさい。アデーレ」
「かしこまりました」
心無しかいつもよりぎこちない礼をして、俺の手を引き、俺を部屋に押し込んだ。詳しい説明は明日されるだろう。俺は整理のつかない感情と、疲れでベッドに倒れ込んだ。
これで1話は終わりです。
主人公の覚醒まで一気に飛ばしてしまいました。赤ちゃん時代とか誰得な話し書くのもあれなので。
週1程度の亀更新で頑張って行こうと思います。
ではでは