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異世界でもペンは剣より強し  作者: ラドクリフ
第1章~召喚と出会い~
2/5

その男……

 見上げた一面ガラス張りのビルには日本の国内文具シェア40%を占める大手文具メーカーの本社が入っている。それだけ、あってビルの前には鉛筆と消しゴムとノートをかたどった像が置かれていた。そのセンスは今にしても謎だが、創業者の意向で置かれているらしい。初心を忘れるなとでも言いたいのだろう。まぁ、あまり自分の勤めている会社を悪く言うのも良くはないだろう。


 俺の名前は蝶間ちょうま 優輝ゆうき、この文具メーカーの開発部門に勤務するまだ大学を出たばかりの若手だ。このメーカーに就職した理由は、単純なもので理想の文具を作りたかったからだ。それも、特にボールペンの改良には力を入れていた、どんなところでも使え、手が全然疲れず、書きやすく滑らか、そんなペンを作りたかった。今の技術ではまだまだ難しいことも多いが、そこは、俺を含め開発部門の皆がこれから頑張っていくことだ。


 そんなことを考えながら、自分のデスクに向かっていく。まだ、だれもこの階にはいない。それもそのはずで、俺の密かな自慢というか習慣というか、誰よりも早く来るというのがポリシーだった。自分の椅子に荷物置いて、コーヒーを淹れようと机の上のカップに手を伸ばした時、机の上に見慣れない小包が置かれていた。俺は、そのなんの変哲もない茶色の小包に妙に気を惹かれた。そもそも、自分のデスクに昨日までなかった小包が置かれている事自体が不思議なことだが、それ以上に目の前の小包の発する気のようなものに俺の心は捕らわれたのだ。


 椅子に置いた荷物をどかして、椅子に座り、小包を手繰り寄せた。すぐに、開封すると中から一枚の紙と黒色のペンが出てきた。黒色のペンは特にこれといって外見的な特徴もなく、何よりうちの会社のマークが入っていない、てっきり誰かが考えた新しいペンかと思ったがマークが入っていななら違うのだろう。ならば、これが何なのかという証拠はあの紙に書かれているに違いない。そう思った俺は、紙を広げて読み出した。


 「ふぅ~、なんじゃこりゃ?」

 

 つい、正直な感想が、口から出てしまった。それもそのはずその紙には荒唐無稽なことしか書いていなかったのである。まず初めに目にしたのは“当選おめでとうございます”の文字だった。何かの懸賞に応募した覚えはないなと思いつつも、紙を読み進めるとざっとこんな感じのことが書いてあった。

 “あなたは、今回見事人類初の体験をする人間に選ばれました。そこにあるペンはどんなことでもできるペンなのです。言いたいことはわかりますか?つまり、そのペンを使って面白いことをしてください。あなたの夢のままに ps インク切れは気にしなくてOK!君の力がインクとなる。”


 俺の感想も的外れなことは言っていないはずだ。普通こんなものが自分のところに来たのなら誰でも怪しむし、不思議に思う。第一“どんなことでもできるペン”などあるはずがない、魔法の道具だって言われても、前提となる魔法の存在自体ありえないことだ。ここから、考えられることは一つしかない、つまり、誰かが俺をからかっているってことだ。


「何もこんな無駄なからかいなんてしなくていいのに」

 

 つい、呆れ口調で言ってしまう。普通はそうなるだろう。だが、さっき強く感じたものは一体なんだったのだろう?あの時感じた不思議な力、偶然か何かだったのだろうか?ふと、ある考えが浮かび上がってきた。その考えを実行する前に部屋の中を見渡して時計を見た。大丈夫、誰もいないし皆が出勤してくるまでゆうに30分近くある。そう、俺はあえてこのからかいに引っかかってやろうと思ったのだ。別に特段の理由はないが、さっき感じた力が気にかかったのと暇つぶし程度にやろうという気になったのだ。


 白紙を取り出して、例の黒いペンを取り出した。何を書こうか一瞬考えたがすぐにいい考えが浮かんだ。こう見えても俺は中二病を悪化させ、高校を卒業するまではたいへん痛い奴だったのだ。今でも若干その気はあるが、昔ほどじゃない。そんな俺が書こうとしたのは、昔からの夢というか妄想「異世界に行きたい!」だった。どうせ、いたずらに乗ってやるのだこれぐらいノリがいいほうが仕掛けた方もうれしいだろうと思い。そうすぐに書いたのだ。


 待つこと10秒特にこれといって変化は起きなかった。まぁ、当たり前だろう。俺だっていたずらだと思ってやったわけで、別に何も気にしていたわけではない。本当だからな……。ゴホン、まぁいい、これで5分ほど時間を潰せたのだ。さっさとコーヒーを淹れてこようと右手に持っていたペンを自分のバックの中に入れようと荷物を手繰り寄せた瞬間、椅子の下に円形の魔法陣が登場したのだ。いや、冷静に登場したのだとか思っているが、頭はヤバイと警告していた。急速にその陣が光りだしたのだ。俺の頭は直ぐにそこからでろと警告していたが、体が動かなかったのだ。そして、爆発したかのような閃光が走ったのだ。


 その日を境に、彼の姿は見えなくなり、捜索願は出されたものの結局見つからずじまいであった。

 

 

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