表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最弱スキル〈保存庫〉で世界の秘宝を独占しました ~気づけば誰も勝てない最強冒険者に~  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/18

第8話 邪竜討伐の準備と新たな仲間

 王城の謁見を終えたルークとイリーナは、騎士団専用の宿舎に用意された部屋に入った。

 窓の外には王都の灯が広がり、街全体が祝祭のような熱気に包まれていた。

 竜を斬った英雄が現れた――その噂は瞬く間に王都を駆け巡り、広場では人々が酒を酌み交わしながらルークの名を口にしている。


 「まるで夢みたいだな……」

 ルークはベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。

 つい数週間前まで“無能の荷物持ち”と呼ばれ、追放されていた自分が、今は“国を救う英雄”として迎えられている。


 イリーナが机に地図を広げ、真剣な眼差しを向けてきた。

 「ですが……喜びに浸っている暇はありません。邪竜の復活はすでに始まっています」

 彼女の指が指し示したのは、王都の北方に広がる“黒き大渓谷”。

 「伝承によれば、邪竜は封印の鎖を三度震わせた後、完全に蘇るとされています。すでに二度、兆候が確認されています」


 ルークは地図を覗き込み、静かに頷いた。

 「残された時間は……多くても一か月ってところか」

 「ええ。だからこそ、あなたの保存庫から更なる力を引き出す必要があります」


 ルークは目を閉じ、保存庫へと意識を沈めた。

 漆黒の虚空に漂う光――その奥に、新たな存在感があった。

 手を伸ばすと、今度は冷たい輝きを放つ“鎧”が姿を現す。


 ――白銀の鎧。


 胸当てには神代文字が刻まれ、肩からは青い光が淡く揺れている。

 纏った瞬間、身体が驚くほど軽くなった。

 筋肉の力が倍増したかのように、指先まで力が漲る。


 「これが……神代の鎧」

 イリーナの声が震える。

 「伝説では、穿たれた矢も、巨竜の炎も通さぬと……本当に、存在していたなんて」


 ルークは拳を握り、試しに軽く振り下ろす。

 床石がひび割れ、衝撃が波紋のように走った。

 その力に、彼自身が驚かされる。


 「剣、魔導書、鎧……まだまだ眠っている」

 「ええ。そして、その力を引き出せるのはあなたしかいません」


 * * *


 翌日。

 訓練場で剣を振るうルークの姿を、数多の騎士や兵士たちが見守っていた。

 その中に、一人の少女が混じっていた。

 年の頃は十五、六。腰まで届く銀髪を三つ編みに束ね、胸に小さな聖印を下げている。


 「あなたが……ルーク様ですね」

 緊張した声で近づいてきた少女は、深く頭を下げた。

 「私はリリィ。聖堂に仕える見習い巫女です。どうか、あなたの旅に同行させてください」


 ルークは少し目を細めた。

 「なぜ俺に?」

 「……聖女の予言に従って。『英雄を見出し、その背に寄り添え』と告げられました。私は、あなたこそがその英雄だと信じています」


 イリーナが腕を組み、真剣な眼差しを向ける。

 「彼女は本物ですよ。巫女としての力は確かです。治癒だけでなく、神託に近い力を持っている」

 「……そうか」


 ルークは短く息を吐いた。

 彼女の眼差しは真剣で、何よりも揺るぎない信頼があった。

 「いいだろう。俺と一緒に来い。ただし、危険な道になる」

 「はい……覚悟はできています!」


 こうして、ルークの仲間にリリィが加わった。

 剣を携えるイリーナと、祈りを捧げるリリィ。

 追放された孤独な冒険者の旅路は、気づけば新たな絆で彩られていった。


 * * *


 一方その頃、旧勇者パーティは王都の片隅でひっそりと身を潜めていた。

 酒場の奥で、彼らは交わす言葉もなく沈黙している。

 エドガーは頭を抱え、テーブルを拳で叩いた。


 「……どうしてだ。俺たちが勇者で、あいつはただの荷物持ちだったはずなのに……」

 セリナは唇を噛み、悔しさに震えていた。

 「竜を一人で倒し、神代の秘宝まで……それに、王に讃えられて……」

 僧侶リシェルが小さく声を上げる。

 「もう、私たちじゃ敵わない。国中が彼を英雄と呼んでいる。私たちは……ただの恥さらし」


 その言葉に、誰も反論できなかった。

 彼らの耳に、また新しい噂が届く。


 ――ルークは神代の鎧を纏い、巫女を仲間にした。


 「……っ!」

 エドガーは歯を食いしばった。

 今や国が求めるのは勇者ではなく、ルークだ。

 彼を追放したという事実が、彼らの存在を完全に否定していた。


 * * *


 夜、宿舎の屋上。

 ルークは剣を膝に置き、星空を見上げていた。

 イリーナとリリィが隣に並ぶ。

 「いずれ、旧仲間たちと正面からぶつかることになるでしょう」

 イリーナの声に、ルークはゆっくりと頷いた。

 「その時は……俺の全てを見せてやる。俺を追放したことが、どれほど愚かだったか」


 保存庫の奥には、まだ数えきれぬ光が眠っている。

 剣、魔導書、鎧――その先に待つものは一体何なのか。


 英雄となった男の旅は、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ