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追放された最弱スキル〈保存庫〉で世界の秘宝を独占しました ~気づけば誰も勝てない最強冒険者に~  作者: 妙原奇天


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第6話 王都への道と新たなる力

 翌朝。

 デルン村の広場には、出発を見送る村人たちが集まっていた。


 「ルーク殿! どうかお気をつけて!」

 「また村に戻ってきてくださいね!」

 「俺たちの英雄!」


 握られる手、差し出される果物や干し肉。

 ルークはその一つひとつを丁寧に受け取り、保存庫に収めていった。

 まるで世界中の“想い”まで保存できるように。


 隣に立つのは、紅のマントを翻す女騎士イリーナ。

 彼女は村人に深く一礼し、毅然とした声で告げる。

 「心配ありません。この方は必ずや、国を救う力を持っています」


 村人たちは歓声で応えた。

 ルークは思わず苦笑を浮かべる。かつて勇者パーティでは罵られるばかりだった自分が、今や人々から“英雄”と呼ばれている――。


 「……行こうか」

 「ああ。王都まで三日の道程です。途中には山賊や魔獣も出没しますが……あなたなら問題ないでしょう」

 「さあな。でも俺は、俺のやり方でやるだけだ」


 二人は村を後にし、王都への街道を進み始めた。


 * * *


 その日の夕刻。

 深い森を抜ける途中、ルークはふと保存庫の中に意識を向けた。

 竜を斬ったあとから、奥底に眠る光が以前よりもはっきりと感じ取れるようになっていた。


 (まだ……剣以外にも何かある……)


 意識を集中させる。

 すると、黒い虚空の奥に、眩しい金色の光が浮かび上がった。

 伸ばした指先が触れた瞬間、光が爆ぜ、ルークの前に新たな秘宝が姿を現した。


 ――それは、一冊の書だった。


 古びた革表紙に、見たこともない文字が刻まれている。

 だがページを開いた途端、不思議なことに内容が理解できた。


 「……これは、神代魔法の書……?」


 イリーナが目を見開く。

 「神代魔法!? まさか本当に存在していたなんて……」


 中には世界の理そのものを書き換える術式が記されていた。

 “炎を操る”のではなく、“炎という概念そのものを支配する”魔法。

 通常の魔導師が生涯を費やしても辿り着けぬ禁術の数々。


 「俺が、これを使えるのか……?」

 ルークが呟くと、魔導書がふわりと浮かび、彼の保存庫と共鳴するように輝いた。

 ページが勝手に開き、文字が光に変わって彼の体に流れ込む。


 ――力が、増していく。


 刹那、森の奥から唸り声が轟いた。

 数匹の魔獣――狼に似た獣が群れで現れ、牙を剥いて飛びかかってきた。


 「来るぞ!」

 イリーナが剣を抜く。だが次の瞬間、ルークの掌から炎が迸った。


 「燃えろ」


 その言葉と同時に、空気そのものが赤々と燃え上がり、魔獣たちを瞬時に包み込んだ。

 炎はただの火ではない。獣の悲鳴と共に、存在そのものを焼き尽くすように消し去った。


 残骸一つ残らない。

 ただ焦げた大地だけが証として残っていた。


 「……これが、神代魔法」

 ルークは呆然と掌を見つめた。

 イリーナはその光景を凝視し、やがて深く息を吐いた。

 「やはり……あなたは選ばれし者。国を救えるのは、あなたしかいません」


 ルークは無言で頷く。

 保存庫に眠る秘宝は、まだ数えきれぬほどある。

 それを一つずつ引き出すたび、彼は確実に――“最強”へ近づいていくのだ。


 * * *


 一方その頃。

 王都に着いた勇者パーティの姿は疲弊しきっていた。

 竜討伐は失敗に終わり、かろうじて命を拾って戻っただけ。

 街の人々の視線は冷たく、彼らが“勇者”と呼ばれることはもうなかった。


 「ルークという青年が竜を斬ったらしいぞ」

 「勇者パーティ? ああ、あの追放をやらかした連中か」

 「英雄を捨てた無能者たち、だな」


 酒場や市場で囁かれる陰口に、エドガーは奥歯を噛み締めた。

 セリナは顔を覆い、僧侶は泣きそうな顔をしていた。

 だが、その耳に届いた新たな噂が彼らを震え上がらせる。


 ――ルークは神代魔法を操り、炎で魔獣の群れを消し去った。


 「……馬鹿な」

 エドガーの顔が蒼白になる。

 もしそれが真実なら、もはや彼らが束になっても敵わない存在に成り果てている。


 「ルークは……もう、俺たちの手の届かないところにいるのか……?」


 後悔は膨れ上がり、やがて恐怖へと変わる。

 彼らが彼を追放したという事実が、まるで呪いのように首を絞め始めていた。


 * * *


 夜。焚き火の前で、ルークとイリーナは休息を取っていた。

 星空を仰ぎながら、イリーナが静かに口を開く。

 「王都に着けば……いずれ、あなたは旧仲間と再会することになるでしょう」

 「だろうな」

 「恥を忍んで、あなたに縋ろうとするかもしれません」

 ルークはしばし沈黙した後、焚き火を見つめながら呟いた。

 「その時は……俺の答えは一つだ」


 炎がぱちりと弾ける。

 彼の瞳には、かつてとは違う確かな光が宿っていた。


 ――ざまぁの時は、すぐそこまで迫っている。

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