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追放された最弱スキル〈保存庫〉で世界の秘宝を独占しました ~気づけば誰も勝てない最強冒険者に~  作者: 妙原奇天


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第4話 噂と後悔の始まり

 竜を斬った翌朝。

 森を抜けたルークは、小さな辺境の村にたどり着いていた。


 「……ここは、デルン村か」


 冒険の途中で一度だけ訪れたことがある。人口は百にも満たない、小さな農村だ。

 竜が森に巣食ったことで、長らく苦しめられていると耳にしていた。


 村の入口に立った瞬間、子どもたちの声が上がった。

 「お兄ちゃん! お兄ちゃんが竜を倒したの!?」

 駆け寄ってきた小さな少年少女の目は、純粋な輝きでいっぱいだった。


 「……どうして知ってる?」

 ルークが問いかけると、近くの農夫が肩を竦めて笑った。

 「昨夜、竜の咆哮が途絶えたんでな。森の方から光が走るのを見たってやつもいる。みんな“竜が倒された”って噂してるんだ」


 その言葉に、村人たちが集まってくる。

 恐る恐る尋ねるような目。

 ルークは静かにうなずいた。


 「……俺が倒した」


 その瞬間、村人たちの間に歓声が広がった。

 「竜が……!」「本当に!?」「これで畑が荒らされない!」

 歓喜の声が波のように押し寄せる。

 老女が涙を流し、農夫が大地に手をつき感謝を捧げる。


 「ありがとう……! あなたは救世主だ!」


 ルークは照れくさそうに頭を掻いた。

 けれど、胸の奥では熱いものが広がっていた。

 無能と罵られた自分が、今は人々に感謝されている――。

 こんな光景は、一度もなかった。


 村に招かれ、素朴な食事をご馳走になる。

 焼いた麦パンとスープ。大したものではないが、どんな豪華な料理よりも温かかった。

 村人たちの笑顔が、何よりのご馳走だ。


 「やっぱり……俺のスキルは無駄じゃなかったんだな」

 呟きながら、ルークは保存庫の奥に眠る光の数々を思い浮かべた。

 剣だけではない。昨夜、竜の死骸と共に流れ込んできた宝石や魔石も保存庫に収まっている。

 ――この力があれば、どんな困難も打ち破れる。


 * * *


 一方その頃。

 ルークを追放した勇者パーティは、別の街道で竜討伐に挑んでいた。


 「くそっ、まだ生きてやがったのか!」

 リーダーのエドガーが剣を振るう。しかし刃は竜の鱗に弾かれ、火花が散るだけだった。

 魔法使いのセリナが焦燥に顔を歪める。

 「どうしてこんなに数が多いのよ!? 群れになってるなんて聞いてない!」

 回復役の僧侶が悲鳴を上げた。

 「もうポーションが足りません! 補給が……!」


 その言葉に、エドガーの脳裏をよぎったのは、数日前に追放した仲間の姿だった。

 「……あの荷物持ちがいれば……」


 だが即座に首を振る。

 無能なはずだ。保存庫など、ただ物を入れるだけの役立たず――そう信じていた。


 だが現実はどうだ。

 補給が足りず、荷物は重く、ポーションも底を突いた。

 彼らは疲弊し、竜の群れを前に押し込まれていく。


 「まさか……いや、そんなはずはない」

 エドガーは歯噛みした。

 だが胸の奥で、拭いきれぬ不安が膨らんでいく。


 * * *


 その夜。デルン村では祝いの宴が開かれていた。

 焚き火を囲み、村人たちが歌い踊る。

 子どもたちはルークの周りに集まり、竜を斬った話をせがんだ。


 「どんなふうに倒したの!?」「剣は光ってた?」

 「剣が……雷みたいに光って、竜を斬ったんだ」

 ルークがそう話すと、子どもたちは目を輝かせた。


 村長が近づき、深く頭を下げる。

 「勇者様……いや、ルーク殿。あなたのおかげで我らは救われた。もしよければ、この村を拠点にしてくださらぬか」


 ルークは少し驚いた。

 けれど、その言葉は心に沁みた。

 「……俺でよければ。力になれることがあるなら、手を貸そう」


 拍手と歓声が広がる。

 “無能”と追放された男が、今ここでは“英雄”として讃えられていた。


 その瞬間、ルークの胸に決意が芽生えた。

 もう過去の仲間に縋ることはない。

 自分の力を信じ、この村と、そして出会う人々を守って生きる――。


 だが彼はまだ知らなかった。

 竜を斬った噂が、王都にまで届き、かつての仲間の耳を打つことになることを。

 そして彼らが、遅すぎる後悔と恐怖に震える日が近いことを――。

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