第2話 眠れる秘宝
森を抜けた先に、小さな岩窟があった。
ルークは焚き火を起こし、背中を壁に預けながら深く息をついた。
追放の痛みはまだ胸に重い。けれど、同時に心の奥では、どうしようもなく抑えられない衝動が膨れ上がっていた。
「……今までずっと気になってたんだ。保存庫の“奥”には、何があるんだろうって」
〈保存庫〉は、物を収納できる便利なスキル――ただそれだけだと思われていた。
けれど、ルーク自身も不思議に思っていたのだ。
一度も容量の限界に達したことがないこと。
そして、ときどき耳の奥で「開け」と囁くような、不気味な響きがすること。
――今こそ、確かめるときだ。
ルークは保存庫に意識を沈めた。
目を閉じると、視界が暗黒の虚空に変わり、無数の光の粒が漂っている。
手前には自分が入れた食料袋や薬草が浮かんでいるが……そのさらに奥、深淵の向こうに、異様な光が眠っていた。
(あれは……?)
恐る恐る近づき、光に触れる。
瞬間、眩い閃光が視界を貫き、ずしりとした重みが腕に現れた。
――それは一本の剣だった。
漆黒の鞘に封じられた長剣。
握った瞬間、血潮がざわめき、頭の中に古の言葉が流れ込む。
≪汝、選ばれし継承者なり≫
「……ッ!」
息を呑むルークの耳元で、剣が低く唸った。まるで、長い眠りから覚めた獣のように。
鞘から刃を引き抜けば、空気が震える。
銀光を帯びた刃は、ただの鉄ではなかった。炎すら焼き尽くす光を纏い、まるで空を裂く一閃の稲妻のよう。
「これが……保存庫の奥に眠ってたもの……?」
伝説に語られる“神代の武具”。
人類が手にすることを禁じられた、世界を揺るがす力。
その一本が、今まさにルークの手にあった。
岩窟の外で、低い唸り声が響いた。
振り返ると、巨大な影――森に棲む竜が、鋭い牙を剥きながら姿を現す。
追放され、一人きりになった彼を、容赦なく飲み込もうと迫ってきていた。
「……試すしかない、か」
ルークは剣を構える。恐怖よりも、胸を突き動かす興奮が勝っていた。
焚き火の炎が揺れ、竜の咆哮が夜空を裂く。
次の瞬間、保存庫から目覚めた神代の剣が閃き、森に轟音が走った――。




