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【9】
季節は過ぎ、くるみは日々順調に暮らしていた。和彦から振り込まれる額は多く、ありがたく使わせてもらっていた。本当は断るべきなのだろうが、噂だと母親が言いつけたらしい。
ーなるほど。お母さんの知恵か。
会ったことはないが、感謝し、くるみはついに出産を迎えた。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
産まれたのは男の子だった。平均体重で産まれてきてくれたらしく、くるみは神様に礼を告げたのだった。
「ーママだよ」
小さな手に人さし指を近づけると、何と握り返してくれた。それが嬉しくて、自然と涙が溢れる。
ーこの子と生きていく。
涙がとめどなく溢れ、柔らかそうな頬に触れる。もう1人ではないし、この子が居るから、淋しくなかった。
「ーママ強くなるから。努力するから」
そう決意し、涙を拭ったのだった。