【8】
困ったくるみが行き着いたのは、消費者金融だった。本当はマズいのは分かっているのだが、どうしようもなかった。後輩のユイを頼り過ぎるのもさすがにマズいので、くるみは1人で我慢しようと決めたのだった。
ーとりあえずは生活出来るお金はできたけど。
途中の公園にあったブランコに座り、地面を見つめる。惨めな自分の姿はなく、影はスッキリと伸びていた。それに救われ、
ー次よ、次。
腹に触れ、ポジティブシンキングにもっていく。またハローワークに行こうかと考えていると、スマホが鳴った。
ー…えっ。
相手は和彦だった。あの日以来、会ってもいないし、連絡していなかった。急に何の用だと警戒する。
ーママ、負けないからね。
お腹に触れながら、スマホに出る。
「…もしもし」
「…。俺だ」
「何?」
声が強いものになる。今ごろ何の用かは知らないが、堕ろすことだけはしないつもりだった。
ー堕ろせと言ったら、攻撃してやる。
毛を逆なでた猫みたいに、くるみは戦闘態勢に入っていた。しかし、和彦の方はあっさりしたものだった。
「毎月金を振り込んでやる」
「…はっ?」
急な展開にくるみはついていけなかった。和彦は言いたいことを言ったと思ったのか、
「じゃあな」
と別れを言ってきた。くるみは慌てて、スマホに叫ぶ。
「何で!? 何で急に!?」
「うるさい。いいからそれだけ。じゃあな」
電話が切られた。くるみは呆然とする。何が起きたのか自分でもよく分からなかった。
ー金。和彦が。
ありがたい申し出だが、急にどういうことだろうか。くるみは額に汗をかきながら、影を見つめる。
ー何か耳にしたのかなあ?
思いついたのはユイだったが、彼女は和彦のことを詳しく知らない。おそらく、噂話が広がっていて、くるみが学校を辞めたことなど耳にしたのかもしれない。
ー貰っても罰はあたらないよね。
さすがに暑くなり、くるみはブランコから立ち上がったのだった。