【7】
くるみはハローワークに通い、建設会社の事務員に決まったのだった。ただし、妊娠をしているのは内緒だった。バレたら採用してくれないと分かっていたからだ。
「ーはい、お茶」
仕事内容はお茶くみにコピー、パソコンの簡単な打ちこみだった。従業員はそれほど多くなく、やりやすい環境だった。
ーママ、頑張るね。
お腹に触れ、心の声で話しかける。条件は悪くないので、このまま続けて働きたかった。しかし、運命は意地悪だった。
「う」
急に吐き気を催し、トイレに向かう。順調に育っているらしいのだが、まだたまに体調を崩すのだった。
「…ふう」
個室から出、口にハンカチをあててると、洗面台に嫌なおばさんが待っていた。若い子は敵だと思っているのか、怖い表情だった。
ー無視しよう。
手を洗おうとすると、おばさんが鋭く言ってくる。
「ーあんた、妊娠してるんじゃないの?」
「…」
核心を突かれ、くるみは何も言えなかった。お腹もそんなに出てないのに、女の勘は恐ろしいものである。
「上司に言ってやろう」
おばさんが勝ち誇ったように言い、去っていく。声をかける余裕がなかった。
ーマズい。今、辞めるわけには…。
焦っているのはくるみだけで、言い渡されたのはクビだった。妊婦なんか厄介なものだと思い知る。社会は甘くなかった。くるみは反省し、どうしようかとか途方に暮れるのだった。