第七話 終わらない
前半が終了し1-0
大川高校のリードで前半を折り返した。
ベンチに戻ってきた神奈川第一。
「みんな、給水して!」
顧問の斉藤がみんなに飲み物を持ってきた。
飲み物を受け取りベンチに腰をかけた吉田。
「あいつのジャンプ力やべーぞ!
しかも、空中での体の使い方が上手くて、、、
すいません!」
「気にするな、まだ前半だ。
ビデオの映像でも凄い選手だとは思って警戒はしていたが
まさかあそこまでの物とは思っていなかった。
間近での高さに正直驚いている。
だが、まだ終わってない。安心しろ」
秀人は吉田を励ましつつ
打開策を考えた。
「あのジャンプ力をどーするかだが
大川はまだまだ狙ってくるだろう。
だがわかっていてもあの高さで出されてしまうとこちらが先に触る事は難しい。
なら、ボールを蹴る前に止めよう。
空中戦に持ち込まないようにする」
ディフェンス陣は頷いた。
そして、
ミッドフィルダー陣(中盤)の選手を見て続けた。
「星野にボールを渡す前に必ず星野を見る。
そこがカットするチャンスだ。
出される前に足を出して少しでも正確なパスを出させないようにしよう」
「ナツ。高さあるボールはやはり通らないかもしれないからグラウンダー(転がるパス)で渡してくれ」
ナツも頷いた。
そして、後半が始まる。
ボールは大川。
まずボールを持ちパスを回しつつ周りを見ていた。
「マークを確認しろ!」
秀人は星野に警戒していた。
ドリブルにて攻め立てる。
ナツもボールを持ったディフェンスに付いて行く。
「仁!出所を頼むぜ!」
ナツは仁に出した所を狙えと頼んだ。
ナツにより前にパスを出す場所を失ったディフェンスは
体を反転しキーパーまでボールを戻した。
「神奈川!ライン揃えて前に上げよう!」
佐々木はオフサイドを取ろうとラインを上げた。
ディフェンスの列を揃えて少し前に出た。
キーパーは戻って来たボールをダイレクトで
前方に蹴った。
苦し紛れの大きく前に。
ピンチになるよりは一度落ち着こうとしての
キックだろう。
そんな風に神奈川第一は思っていた。
ボールはディフェンスの上を大きく通り越しそうだった。
キーパーの安井はディフェンス陣を超えたら
自分が先にボールに触り、
神奈川の攻めに転じる予定だ。
まさに速攻だ!
前に飛ばしたボールは
ディフェンスの頭を超える!、、、予定だった。
吉田は
そのつもりでボールを背にして
超えたボールを追いかける用意をしていた。
だが、マークしていた星野は動かない。
(おいおい、まさか届くのか、、、!?
それとも落ちる場所を予想出来てないのか!?
そんなバカじゃねーはずだが。。。)
吉田の予想では
自分の頭を越えるはずと踏んでる。
しかし、星野は頭を超えるだろうボールを
ジャンプでギリギリのヘディングをした!
そしてボールはまた大川の選手へ渡った。
(まじかよ、、、!クソッ!)
吉田はすぐに星野に体を寄せた。
受けたボールをもち更に前にドリブルする大川。
そして、星野を見た!
(これは星野に出すボールだろ、、、!?)
星野には吉田が付いている。
だがボールを持った相手の選手には
誰もマークに付いていなかった。
神奈川の選手はタイミングをずらされていて
付いていけてなかったのだ。
仁はダッシュで戻るが間に合わない!
そして、蹴るモーションに入りボール蹴る!
しかし、直前で秀人がスライディングを繰り出し
蹴り出したボールを触り
ボールは相手のコーナーキックになった。
周りからは「おー!」っと声が聞こえてきた。
「ナイスー!!ヒデくん!」
ナツも秀人に声をかけた。
でも、ボールは大川。
そして空中戦が得意なコーナーキック。
ここでディフェンスにいた大川の長身選手が
前に上がってきた。
「ディフェンスから背高いの上がってきてるぞ!
マーク確認しろ!」
安井は声をかけ空いている選手にマークをつけた。
もちろんここに星野はいる。
吉田は星野とくっつくように張り付いた。
「君じゃあ届かないと思うよ。誰か違う人と代わった方がいい!これじゃあさっきと同じようになるよ」
「あー、、、ご忠告サンキュー、、、!
でも、俺も負けっぱなしじゃあ悔しいんでね。
何としてもお前から先にボールを触ってやるよ」
吉田は星野に言った。
「そっか、、、んじゃあ、もう一点もらうね!」
そう言うと吉田から離れるように走り出した。
ボールから離れた所でもらう気だった。
走り出した星野を見た大川はコーナーキックでボールを
大きく弧を描くように蹴った。
方向は星野の方に。
吉田も同じくボールが落ちる地点に走った。
両者が身体をぶつけながら上から来るボールを待つ!
先にジャンプしたのは
星野だった。
「負けねーぞ!気合だけは絶対負けねー!」
そう言った吉田も星野に並ぶ位置までジャンプした!
2人の頭はボールへ同時に当たり
ボールはペナルティエリア外に出た。
「なにっ!」
星野は先に触れずに相手ボールになり焦っていた。
そして、飛んでいった先に
待っていたのは勇気だった。
「おしッ!任せろ」
勇気は前を見てドリブルを開始。
隣に金田が走っていた。
「行けー!勇気さん!」
吉田は声を出し自分も後ろから追走した。
神奈川は全員で一気に上がる。
ボールは金田に渡りナツ、そして秀人とボールをパスし
あっという間に大川のペナルティエリア直前まで来た。
そこで、
秀人はゴールを見て思い切りシュートを放った!
ボールは
大川選手の頭を超えゴール角の方向へ。
、、、だが、
ボールはポストに当たり跳ね返ってしまった。
溢れたボールはサイドを走っていた勇気に
また渡る。
ちょうど良いポジションにいつもいる勇気だ。
「勇気さん!」
風間は勇気に声をかける。
勇気は中央にいる風間にパスを出した。
風間は少しボールをキープして
もう一度勇気にワンツーの形でパスを出した。
勇気は中に入り込みながら
早く低いボールをナツに向かって出した!
「これで一点ッ!!」
ナツはそのボールをダイレクトでシュートする!!
しかし、またポストだ。
なんて運が悪い事だろうか。
ナツは諦めずにボールを追ったが
キーパーは跳ね返ったボールをすぐにキャッチした。
「くっそーーー!!
いや、まじ今のは良かったのになぁ、、、!」
ナツは入るはずのシュートが入らなかった事に
悔しがったが
すぐボールは蹴られて再スタートしていた。
大川はパスを回しなかなか攻めて来ない。
何かチャンスを伺っているのだろう。
神奈川もあまり取りに行かずに取れる所で
勝負をかけるつもりだ。
「大丈夫かい?試合も終わり近いよー」
吉田に話しかける星野
「うるせー!勝手に余裕ぶっこいてろ」
しかし、星野の言う通り時間は過ぎていく。
後半ロスタイムに入り
試合終了も近くなってきた。
時間もなくなり
ナツは思い切って前から追い詰めて行った。
残り時間もない。
全力で追いかける。
それしかないと、、、!
すると、
大川は前から全力で走ってボールを取ろうとする
ナツに焦ってしまいパスを出せず慌てていた。
「落ちつけ!キーパーまで戻せ!」
星野はディフェンスに声をかけたが
そのまま
キープを出来ず前に大きく蹴った。
「何やってんだ」
星野の声は届いていなかった。
パスミスをした先には佐々木がいた。
佐々木はボールを中央にいる秀人にパスをする。
「9番に気をつけろ!」
星野はディフェンスにまた叫んだ。
だが、その前に
ナツはディフェンスラインギリギリから裏に出る。
オフサイドにならないように
大川の選手を見てボールが出るタイミングを
見計らっていた。
そこに合わせるように秀人はディフェンスを超えるボールを出す!
キーパーは副審を見たが
オフサイドはなし!
前方を見たナツは
秀人からのボールを
そのまま豪快にシュートを放つ!!
ボールは無回転となりゴールに吸い込まれていった!
キーパーはボールがブレて見えてしまい反応出来ず
立ち尽くしてしまった。
キーパーの背中でゴールネットが揺れている。
「ゴーーール!」
ナツは
すぐにボールを取りリスタートをするように
センターサークルに戻ってきたが
ここで笛がなり試合終了。。。
1-1 引き分けで今日の試合を終えた。
第7話 終わらない end...