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食堂でオカンと呼ばれた僕が、依頼を受けた話

 俺たちは、Aランク冒険者として活動している『カドリフォリエ』だ。

 しかし、最近は一旦休暇という形で休んでいた。

 原因は俺にある。何故だが、最近充実感がない。


 最初の頃は良かった。皆で冒険者ランクを上げようと必死になり、色々な依頼を受けた。

 依頼を達成する度、ランクが上がっていく度に達成感を味わえていた。

 だがしかし、最近はそんなことがなくなった。


 同僚からは、燃え尽きたんじゃないのか? などと笑われてしまった。

 そんなことはないと。理由は他にあると思い、一つの可能性を考えた。

 それが飯だ。


 飯は、自分の体を作る大事なものであり。次につなげるモチベーションにもなるものだ。

 最近は同じ場所で食べていたため、飽きていた。

 これを機に、いろんな場所に行ってみることにした。

 パーティメンバーにそれを話すと、文句も言わずに了承してついていくと言ってくれた。感謝してもしきれない。


 まずは、数同拠点のある王都。

 幸い、資金には余裕があったので色んなものを食べた。

 しかし、満足のいくものがなかった。

 どれも美味しい、美味しいのだが何かが足りない。

 そんな時、とある冒険者から『ランソンブレ』と言う街で『オカン食堂』という飯屋があって、そこが美味いと聞いた。。

 王都からあまり離れていないし、今度はパーティメンバーでそこに向かうことになり、馬車に乗った。


 〇    〇     〇


「いらっしゃ……いませ?」


 シャリテが仕事をし始めて一週間が経った頃。

 見かけない四人が入店する。

 かなり防具や武器を外しているが、大きな体。周りをすくませるような圧。

 すぐに冒険者だとわかる。


「おい、あれって……」

「あぁ、Aランク冒険者の『カドリフォリエ』だろ? なんでこんなところに」


 カドリフォリエ、聞いたことがある。

 F~Sある冒険者のランクで、Aランク冒険者として認められた四人のパーティ。

 男性二、女性二からなるパーティで、実力が高く様々な依頼を受けているとか。

 そんな人たちが、なんでこんなところにいるのか少し不安だ。

 シャリテが魔族ということもあって、かなり気が気ではないパトリ。

 そんな四人は、テーブル席ではなくパトリの目の前のカウンターんに座る。

 店内がピリつくのを感じる。

 常連の冒険者はいつでもパトリのカバーに入れるように準備していた。


「ご注文はありますか?」

「いや、今日はちょっと依頼があってね」


 リーダーらしき大きな男が、優しい口調で話しかけてくる。


「ここに、オカンと呼ばれている店主はいるかい?」

「一応僕がオカンです」

「君がかい?」

「そうですね。オカンじゃないって、否定してるんですけど……」


 男は、とても驚いた顔をしている。

 自分より年下の子どもが、オカンなどと言われていたら誰だって驚くだろう。


「すいません。自分なんかがオカンと呼ばれていて……驚きましたよね」

「いや、すまない。驚いたが、そういうことなら問題ない。さっきも言ったが、実は君に依頼があって来たんだ」

「一応料理人なので、依頼なんて受けれるかどうか」

「そこのところは大丈夫だから、安心してくれ」


 ちゃんとパトリにもできる依頼だったらしく、安心する。


「それで、依頼っていうのは?」

「うまい飯を作ってほしい」

「それだけ……ですか?」

「まぁ、それだけっちゃそれだけなんだが。あぁ、その前に自己紹介がまだだったな。俺はレオノア」


 ちょっと怖い顔をした体の大きい冒険者。


「私はジェシカだ」


 長髪が綺麗な冒険者。先程のエスポワールの次に身長が高く、パトリも少し見上げる形にはなっている。

「わたくしはイザベラと申します」


 ショートカット冒険者。フォワとは違い、綺麗というより可愛らしいという言葉が合う女性。パトリと同じくらいの身長だが、大人びた口調で子供らしさを感じさせない。


「最後にオレっちは、トリトン。よろしくな!」


 すごく元気な冒険者。物凄く声が大きいが、わりと常連にいるタイプなのでパトリも安心する。


「俺たちの自己紹介も終わったところで、そろそろほかの客の警戒を解いてくれないか? これじゃ、落ち着いて話しずらい」

「あ、すいません。皆さん心配してくれてありがとうございました。もう大丈夫ですので、食事を楽しんでください」


 パトリが常連に呼びかけると、やっとカドリフォリエに対して警戒を緩めていく。

 その光景を目にして、レオノアは少し笑う。


「愛されているんだな、この店は」

「わかりますか?」

「もちろんだよ。普通Aランク冒険者が来たら威圧されて動けないやつもいる。なのに、ここにいる奴らは格上相手でも臆していなかった。それだけあんたのことが好きなんだろうよ」

「お、わかってくれるかい? いい人なんだなあんちゃんたち」


 常連のおじさん。エトワーが絡みに入る。


「ああ、オカン食堂と言われてるだけはある」

「ちょっと待ってください。オカン食堂ってどこで聞きました?」

「確かですが、ギルドの町案内掲示板に書かれていたとわたくしは記憶しています」

「おれっちも、そう覚えてるぜ。なんなら、ギルド嬢に聞いたらオカン食堂おすすめされたっす」

「あのギルドかァ!」


 この街にある唯一のギルド。

 どうやら、案内板にはオカン食堂と書かれていたらしい。


「それに、町の人に聞いたらオカン食堂ならあっちだよ。と、案内もされたと私は記憶している」

「町の皆さん⁉」


 親しまれているのはとてつもなく嬉しい、愛されていることも分かっている。でもさァ! ここはパトリ食堂って名前なんだよね!


「諦めな、オカン。これは宿命か何かのたぐいだ、んでもって俺たちからの敬愛の証だ」

「その称号が、オカンってどうなんですか……」

「満場一致だよそれに関しちゃ、なぁ皆!」


 エトワーは後ろを振り返り、他の常連に呼びかける。

 それに反応して、笑いながら「オォー」と元気よく帰ってくる光景を見て、パトリは笑いながら頭お抱える。


「それで、以来の方ですけど。うまい飯を作れですか……うちじゃなくてもいいのでは?」

「もっともな意見っすね。説明はイザベラにお願いするっす」

「任されました!」


 こほん。と軽く咳しイザベラは説明に入る。


「わたくしたちは、自分たちでいうのもあれですけど有名な冒険者です。それなりに腕もたちますし、お金も仕事内容に応じてもらっています。なので、王都の色んな料理店に行きました。どれも美味しかったです……ですが、何にか足りないと思いました。これが飽きただけなのか、もっとおいしい料理を求めているのか、それがわからないから今は活動をやめて旅をしています。ですので、今回の依頼はおいしい料理というのはもちろん。わたくしたちを唸らせる料理を作ってほしい。と、いうことです」


 なるほど、確かに難しい。普通の料理店なら。そう、普通の料理店なら難しいが、ここは普通の料理店ではない。


「わかりました。依頼をお受けします。期限はいつまでなどありますか?」

「そうだな……一週間でどうだ?」

「十分ですね」


 そういえば大事なことを聞いていなかった。


「小さい頃、どの町に住んでいたか教えてもらえますか?」

「アントワーヌという辺境の村で育った幼馴染だな。それがどうかしたか?」

「いえ、少し気になったので」


 確認したいこともできた。しかし、今回の依頼はさらに手の込んだことをしたいので、食堂を休みにしたい。


「すいません皆さん、一週間ほど店を休みます」

「オカンの料理を食べれなくなるのは悲しいが、今回ばかりは仕方ないか。それで、一週間後に来たらカドリフォリエさんたちと同じもの食べれんのかい?」

「まぁ、一応」

「じゃあ、文句ねぇ」

「それじゃあ、俺たちの依頼お願いします」

「わかりました」


 こうして、パトリと何も聞かされていないシャリテは次の日アントワーヌに向かって馬車に乗った。


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