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食堂でオカンと呼ばれた僕が、ウェイトレスを雇った話

「とりあえず、まずはお風呂かな?」

「お風呂あるの!」

「う、うん」


 シャリテも女の子だ。何日も風呂には入っていないので、匂いや汚れが気になるのだろう。

 お風呂と言う単語を聞いてものすごい食いつきである。


「二階にあるから、後その服も汚れてるから洗わないと……」

 特にマントはかなり汚れが目立つ。


「い、いやッ」

「いや、でも洗わないと汚いよ?」


 マントに触れただけでかなり嫌がるシャリテ。

 このままだと、らちが明かないので無理やりマントだけ取り上げる。


「あっ」

「マントは先に洗うから借りるよ」

「う――」

「う?」

「うわぁぁぁぁああん。パトリがマント取ったぁぁあああ! わたしのマント返してよぉぉおおおぉおおお!」

「えぇ……」


 マントを取り上げただけで駄々をこね始めた。

 ついさっきまで、一人称をわらわとか言っていた少女とは思えないほど幼児退行している。

 どうしようこれ……

 大粒の涙を貯めながら床で駄々をこねている……いや、まじで何でこうなった……

 とりあえず、マントを返してみる。


「ぐすん……ぐす……」


 泣き止んだ。

 もう一度取り上げてみる。


「うわぁぁああああああん!」


 泣いた。

 めんどくせぇ。


「奇麗にしたら返すから、ね?」

「ほ、ほんとに?」

「うん。だから今のうちにお風呂に入って、奇麗になってきな」

「わかった……」


 泣いているシャリテをお風呂に案内し、マントを水につけ始める。

 かなりいい素材が使われているのか、マント自体には傷はなく汚れだけだった。

 実はかなり魔族の中でも、かなり上位の魔族なのだろうか。

 それなら、このマントに逃げてきた理由もなんとなくわかる。

 とは言っても今聞くわけにもいかないし、とりあえずそっとしておく方針で行こう。


「ありがとう、お風呂出た」

「ならこれ着替えね。多分着れると思うから……」

「ありがとう……なんで女の子の服? 妹でもいるの?」

「うぐっ……」


 そこに気づくとは……なかなかやるっ!

 一人っ子だし、妹なんていない……ならなんで女の子の服を持っていたのか。

 理由はシンプルだ。

 服を買いに行くと、お店の人に女装されるのだ!

 先に言っておくが女装趣味が決してあるわけではない。

 そして、その報酬と言うか、無理やりと言うか、服を貰っているのだ。

 女の子の服なんて使うことはないと思っていたが、今だけは感謝しよう。


「ま、まぁそれは置いておいて、着替えてきなよ。マントもまだ乾かないからさ」

「うん……」


 シャリテは渡した服に着替え戻ってくる。


「おぉ、似合ってる」


 お風呂から出てきたシャリテは、控えめに言って綺麗だった。

 真紅の髪が腰まで伸びており、まだ少し水滴がついていて、キラキラと反射している。

 色っぽく見えた。


「最後にその角をどうにかしようか」


 魔族の象徴である角。それをどうにかしないと魔族と速攻でバレてしまう。


「魔法で消せたりしない?」

「苦手でできない……」


 となると、何かで隠さないとだ。

 魔族と人は、休戦しているとはいえ、現在進行形で戦争状態。そんな状況で、魔族がこんな場所にいるとなれば、大騒ぎどころではなくなってしまう。


「その角、布とかで隠すっていうのはだめかな?」

「強い魔法とかを使えなくなるだけ」


 幸い、シャリテの髪の毛は長い。

 パトリは、角の長さを大体図ると。上の寝室から、裁縫道具と布を持ってくる。


「何をするの?」

「カバーを作るんだけど、髪の毛をツインテールみたいにすれば多分ごまかせるかなって思って」

「なるほど」


 パトリはそう言いながら、手早く縫っていく。


「はい、出来た。ちょっと付けてみてよ」

「な、なんか……つけずらい」

「じゃ、僕がつけるね」


 角にかぶせる様にして、カバーを付ける。

 最後に、リボンで根元を止めれば完成。

 シャリテはぺたぺたと角を触っている。


「違和感ある?」

「違和感はある」


 パトリはシャリテに手鏡を渡す。

 シャリテは気に入ったのか、触りながら何度も確認していた。


「これで、魔族ってバレずらくなったと思う」


 こんなところに魔族なんていないと思うだろうし、多分大丈夫なはずだ。


「そしたら、はいこれ」

「マント!」

 奇麗になったマントを渡すと、早速羽織る。


「ふーっはっはっは。わらわ復活」


 マントを付けるとそのキャラになるのね。

 こうして、マントにエプロンを付けた真紅の髪の少女とシャリテとしてパトリ食堂で、働き始めた。


体調を崩していましたが、今日から更新再会します

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