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色づく世界の首狩りドラゴン  作者: 筆々
第1章 首刈る竜と忘失の女神
8/25

魔法で出来る色々

 あの後、お父様にこっぴどく……というほどでもないが叱られ、部屋での謹慎を言い渡されたけれど、特に悪いことをしたという感覚はなく、しっかりとヴィルランド爺にもけん制していたし、確認も取った。

 その上であの小僧が地雷を踏み抜いてきたのだ、私は謝らない。



 そんなこんなで2日目の謹慎、もちろんルミカもいるから特に退屈はしていない。

 昨日はあの後ルミカをずっと愛でていたから話も聞けなかったけれど、今日はもう良いだろう。

 そう思い私は、ベッドの上で私の膝に頭を乗せて本を読んでいるルミカに顔を向ける。



「ねえルミカ、スペルについて教えてもらっても良い?」



「あぅ? ああそう言えば話していませんでしたね。スペル――『素質をなぞる唯一魔法(ユニークスペル)』人の持つ素質を魔法に変換、生涯伴っていく魔法となる。です」



「魔法は1人につき1つ?」



「はい。この魔法は人に備わるエネルギー、所謂魔力を消費して扱うことができます。魔力は結構素質に左右されて、量もそれぞれ」



「魔力、魔力ねぇ、あまりピンと来ないわ。私にもあるの?」



「そりゃあります……けれど、お嬢様は気にしなくていいですよぅ。最大量もスキルの影響でそれなりに多いですけれど、何よりお嬢様は【気力変換】【生命力変換】なんてスキルを持っているので、気力や命が尽きない限り、半永久的に魔力の使用が出来ますので、なくなるなんてことはないと思ってもいいかと」



「ふ~ん」



「……というか、前の世界でどんな戦いをしていたんですか? これ僕由来のスキルじゃないので、普段から命や気力を振り絞って死地を爆走していないと得られないようなスキルですよぅ?」



「う~ん? 刃物とかバッド持った連中に単騎で毎日のように噛付きに行っていたことかしら?」



 やたらと喧嘩吹っかけてくる奴らが多いこと多いこと。まあ私も律義に全部相手していたのも悪いかもしれないけれど、それがまさかこんなところで役に立つとは思ってもみなかったわ。



 するとルミカが手を伸ばして私の頬に触れてきた。とても心配気な顔をしている。



「……僕の前で、あんまり危ないことしないでくださいねお嬢様」



「あ~うん、善処はする」



「もぅっ」



 この話題は少し旗色が悪いな。私はルミカを撫でると話題を変えるために、ルミカが読んでいる本に挟まっている桃色の花のしおりを抜き、そこから色を抜いた。しおりの花は灰色になり、抜き取った色を宙に取り出した。



「で、今の話だと、私はこの魔法と一生を共にするの?」



「うんぅ? ええ、はい。僕、長くこの世界を覗いていましたけれど、初めて見る魔法です」



「そうなの?」



「ええ、唯一魔法と言っても似たような魔法は当然在ります。けれどお嬢様のように色を使う魔法は聞いたことないですよぅ。多分認識に作用していると思うのですけれど、まだ詳細はわからないです」



「認識?」



「うん、だって色を抜いた時、普通は透明になるはずですよね? でもお嬢様の魔法は灰色になる。つまりお嬢様の中で、色のないということは灰色って言うことかなって」



 ルミカの言う通りだ。私にとって色のないと言うのは灰色のこと、透明ではない。

 それで認識に作用する魔法と言うことか。

 私がそう思っているからそうなると言う。ということはつまり……う~む、ちょっとやってみたいことも出来たけれど、今は謹慎中の身だ、あまり目立たない方がいいだろう。



「そう言えばルミカ、何だか微妙な顔をしていたけれど、なにかあったの?」



「あ~……うん、見せた方が早いですね」



 ルミカがそう言うと、私の体に触れた。



「『天上に坐する剣匠(ヴィヴィラブリジッド)』」



 すると彼女の手に突然2つのメリケンサックが現れた。

 正直見覚えのあるデザインで、この世界では見慣れないメリケンサックに2人で首を傾げていたが、ルミカが咳払いを1つし、口を開いた。



「スキルを武器に変える魔法、です」



「へ~、便利そうじゃん」



「……戦える人には便利ですよぅ。でも僕、メイドですが? 武器の使い方もよくわからないですし、正直宝の持ち腐れかなって」



 確かに、ルミカはお世辞にも戦闘が得意な子ではない。以前剣を持たせてみたけれど、基本的にへっぴり腰だし、何より戦うための心構えが1つも出来ていない。

 故にこんな最前線で戦うような魔法は……いや、別にルミカが戦う必要もないだろう。

 今やってもらったけれど、この魔法は自分以外も対象に出来る。ならば――。



「ずっと私の隣にいなさい」



「えぅ?」



「ルミカが戦えなくても私がいる。私のために武器を出しなさい」



「……わぁ~」



 ルミカが瞳を輝かせながら私の腹に顔を埋めてグリグリしてくるから、それを受け止めて頭を撫でてやる。



「王都での暮らし、どうなりますかねぇ?」



「そうね、退屈はしないんじゃない? ルミカの言う通り、面白おかしく暴れ回ってやるわよ」



「はいっ、期待していますよぅ」



 私たちは顔を見合わせ、変わり始める生活に笑い声を上げた。

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