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色づく世界の首狩りドラゴン  作者: 筆々
第1章 首刈る竜と忘失の女神
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スキルの色々

 ルミカが屋敷にやってきてそれなりの時間が経った。



 あの子はまあ流石神様なのか仕事の覚えは早く、お母様やお父様、教育していたメイドや執事の前では完璧な仕事ぶりを見せた。



 私の前では――。



「ルミカ、私のベッドの上で寝ながらクッキー食べるの止めろ」



「え~……」



 すると寝そべりながら本を読み、クッキーを食べているルミカが布団の上に落ちている食べかすに目を落とすと、大きく息を吸い、フ~~と息を吐いた。

 私はすかさずルミカの頭を引っ叩く。



「いたぁぁっ! 何するんですかぁベルお嬢様ぁ」



「何じゃない何じゃ。あとでちゃんと掃除しておきなさい」



 頬を膨らませるルミカに肩を竦ませる。

 私以外の前だとよく仕事をするのだけれど、こうして2人っきりだと甘えてくるしダラダラするし、何というか妹が出来たような感覚だ。

 身の回りの世話をしてくれるという話だったけれど、夜は結構な頻度で私の布団に潜り込んでくるから、着替えとかの朝の身支度はむしろ私がやっているという現状だ。



 まあこんな現状を誰かに告げ口するつもりもないし、そもそも自分のことは自分でやりたかったから特に問題はないのだけれど、この甘えん坊、くっ付いてくる頻度が本当に多い。



 私がベッドの傍にマットを敷き、そこで座禅を組んでいるとルミカが今すぐにでも抱き着いてきそうな顔でこちらを見てうずうずしていた。



「ちょっと待ってて。30分はこれやらせて」



「それって意味あるです? ただじっとしているだけに見えますけどぉ」



「少なくとも、私はこれを続けていたからパンチ力が上がった」



「んなバカな。あなたの世界は魔法はおろか、異能力すら存在しない世界だったはずです。特に鍛えていないのにパンチ力が上がるはずないですよぅ。まあとりあえず【神眼】」



 この間も使っていた気がする。

 神眼と言ったか、ルミカは親指と人差し指で丸を作り、それを目に沿えて穴から私を見ている。

 何か神的な力なのだろうかと首を傾げていると、彼女も同じように首を傾げた。



「【闘気開放】【集気法】【生命力変換】これぇ……かな?」



「あんたそれはなにやってるの?」



「スキルの確認ですよぅ」



 スキル、確か習ったけれど、何だったかしら……ああそうだ、人の素質ではなく、その人の軌跡に名を与えられた力、だったっけ。



「この神眼もスキルです。読んで字のごとく神の目、神に属するものが持つスキルですよぅ」



「ふ~ん、スキルって教会で確認できるんだったっけ?」



「そうですけど、ベルお嬢様は見せちゃ駄目ですよぅ。教会にもいかない方がいいです」



「なんで?」



「スキルに【神を砕く者】とか、【神に反乱する者】とかあるので、一発で処刑されるですよぅ」



「何でそんなもの持ってるの。記憶にないんだけど」



「いや、この世界に来る前、僕と遊んだ時ですよぅ。そこまでのスキルを開花させるつもりはなかったですけれど、あなたが必要以上に力を発揮したので」



 あの時かと思い出し、私は座禅を組みながら体に巡る血液を意識するように集中し、力を高めていく。

 これが一番落ち着く。



 薄目を開くとルミカがベッドで寝そべり、頬杖をつきながら興味深そうな視線を向けてくる。



「魔力以外のエネルギーかぁ。今度どうやって使うか見せてくださいです」



「いやだから知らないっつうの。魔力とか気とか前の世界になかったし」



「スキルになってるってことは使ってたんだよぅ。僕と遊んだ時に得たスキルは所謂特典で、この世界に属するスキル、でもその気とかそういうのはベルお嬢様が向こうで培った軌跡に名前が付いたもの」



 納得いっていないルミカだけれど、知らないものは知らないのである。

 私は部屋に転がっている羽ペンを手に取ると、さっきの延長で体に巡る血液を手に持ったペンにまで及んでいるかのように流し込む。

 そしてそのペンをそっと投げるとルミカの顔を横切って壁に突き刺さった。



「いやなんでさ」



「ペンくらい壁に刺さるでしょ。喧嘩するのも面倒な時、小銭投げて沈めてたもん」



「もんって言うほど可愛げのある状況じゃないからねぇ」



 今日は随分と突っかかってくるな。

 私は瞑想を止め立ち上がり、ルミカが寝そべるベッドに腰を下ろす。

 すると彼女はのそのそと動いて来て、私の膝に頭を乗せてニヘヘと笑いながら手を伸ばしてくるから、その手を取って軽くにぎってやる。



「まあスキルについては追々――今ベルお嬢様が気にしなければならないのは『素質をなぞる唯一魔法(ユニークスペル)』だね。そろそろ開放式があるんだよねぇ?」



「あ? あ~……そういやぁそうだった。得体のしれないことはこれ以上勘弁なんだけどなぁ」



「きっと気に入るよぅ。お嬢様がどんな魔法を使えるようになるのか、僕は楽しみだけどねぇ」



 そんな呑気に話すルミカを撫で、私は大きく伸びをする。

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