色めく景色を家族とともに
「む~……歴史は本当じゃないといけないと思いますよぅ」
「それだと都合が悪くなる人がいるのよ。嘘も方便って言うでしょ」
「そういうものですか?」
「そういうものよ」
あたしはベッドから起き上がり、お母さまが用意させたおやつを食べに食堂へとルミカと進んでいる。
アルフが暇そうにしていたから、ラットにあの子の稽古をつけるように言い、後で行くと約束をしたけれど、とりあえずお母さまに許可でも貰おう。
そんなことを考えていると、食堂にたどり着いており、席に座っていたお母さまが上品に笑っていた。
「そうですね、真実が必ずしも人を守るわけではない。それは覚えておいてもいいかもしれないわね。ただ、ルミカちゃんの言うように、本当であることはとても大事です。埋もれないように、ルミカちゃんがちゃんと覚えていましょうね」
「はいっ」
「……一応陛下にも聞いておくよ。知識系のスキルを持っているから裏が取れるかもだし、もしルミカのスキルが有用なら何かしらの対策を取ってくれるだろうからね」
「お願いしますお父様、あたしも少し心配になってきました」
不用心な元神様であたしのメイド、みんなあたしを守ってくれようとするけれど、出来ればこの子を守ってほしい。
あたしはルミカと一緒に席に着き、お母さまに目をやる。
「……本当、ベイルちゃんはお外が好きね。もう体はいいの?」
「はい、むしろ動いていないと落ち着かなくて」
「お嬢様は元気いっぱいです」
ルミカを撫でていると、お父様が思案顔を浮かべており、あたしは首を傾げる。
「う~ん、それじゃあせっかくだし、みんなでピクニックにでも行こうか? 団長が今日は休んでいいと連絡をくれてね」
そう言ってお父様が、置物だと思っていた鳥の形をした陶器を手に持ち、それを食堂の大きな窓を開けて空に放った。
「団長にも一応元気にはなったことを伝えておくけれど、休んでいいというのなら有り難く休ませてもらうよ」
「いいんですか?」
「もちろん、アルフとラットも誘って、少し街を出ようか」
あたしとルミカは顔を見合わせてすぐに準備してくると、食堂を飛び出す。
家族とのお出かけに、あたしも心躍っているらしい。向こうではあまり経験のなかったことだし、正直ピクニックなんて何をすればいいのかわからないけれど、街の外――ここに来る時とスペルを得た時に馬車の中から見ただけだ。
どんなものがあるのか素直に気になるし楽しみである。
子どもっぽいかなとルミカに目を向けるのだが――。
「お嬢様、今は子どもです」
「……そうだったわね。ところでルミカ、ピクニックって何するの?」
「僕も知りません!」
「まあアルフいるし、それっぽくはなるでしょ」
「ですです。でも皆さんとお出かけ、楽しみです。そういえば家族で遊びに行くってあまりなかったですもん」
「そうね、お父様が忙しいからなかなか機会がね」
「ライラ様が怒るのもわかる気がするですよぅ」
「今度あたしもあのジジイに殴りかかろうかしら」
「お供しま~す」
そう言って互いに笑いあい、準備を終えて外にいるアルフとラットにも伝えに行くのだった。




