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色づく世界の首狩りドラゴン  作者: 筆々
第1章 首刈る竜と忘失の女神
2/24

彩色々色とりどり

 初めてこの世界で目を開けた時、その視界は相変わらず灰色で大声を上げて泣いてしまったが、赤ちゃんの視界は徐々に明るくなっていくということを思い出し、1か月、2か月、3か月と過ごすうちに、世界が色づいていく。

 初めての花の色、初めての空の色、初めての火の色、初めての光、そして――初めての人の色。



 私は一日中、人の顔を触りまくっていた。

 そんな赤ちゃん時代を過ごして早4年、私は相変わらずあちこち色に触りに行っていた。



 この世界で名づけられた私の名前はベイル=ドラゴニカ、ベイルとかベルと呼ばれている。

 昔の私とは違い、真っ赤な髪に金色の瞳、髪は切るのが面倒で長く、ポニーテールにしていた。



 あの生意気なクソガキによって落とされた世界を最初は恨んでいたけれど、色の在る世界で、両親からは愛され、何不自由のない暮らしに私は満足していた。

 しかし不満があるとするならば、このドラゴニカ(・・・・・)という家のことだろう。

 名前から嫌な予感がしていたけれど、竜を信仰する家柄らしく、その歴史は古く、大昔に竜と心を通わせて国を救ったことがあるとか、故にドラゴニカは竜を呼ぶ巫女として国から重要なポジションに就かせてもらっていると、両親が話していた。



 しかし竜か。

 私はどうにも縁があるらしく、名前を呼ばれるたび、竜で象られた家紋を見る度にげんなりとしていた。



「お?」



 私が今日も今日とて庭にある花壇の花を愛でていると母さん……お母様の姿が見え、私は彼女――今代竜の巫女、ライラ=ドラゴニカに飛びついた。



「わっと。ベイルちゃん、また突進の威力が上がったわね」



「うん! 絶賛鍛えているからね」



「お父さん似なのねぇ」



 微笑む母の顔を、私はペタペタと触る。

 色がある。景色と同化していないだけで、こんなにも人の顔を人間(・・)だと認識できるのか。



「ベイルちゃんは甘えん坊……よね? なんかちょっとニュアンスが違う気もするのだけれど、お母さんの気のせいかしら?」



「う~ん?」



「わからないわよねぇ――」



「お母様の色を、触っているの」



「……見るんじゃなくて?」



「ううん、触る。お母様の色は、暖かい。優しい。心が落ち着く」



「ベイルちゃんは色が好きなのね。それじゃあ――」



 するとお母様が突然私をぎゅっと抱きしめてきて、そのまま頬ずりをしてくれる。



「ベイルちゃんの色は何色かしら? 髪色だと赤だけれど、お父さん譲りの金色の目も素敵よね」



「私の、色?」



「ええ、人にはそれぞれ色がある。その人を表す色、その人が彩る色、その人がなぞった色」



 自分の色なんて考えたこともなかった。

 所謂、イメージカラーというものだろうか? でも如何せん、私は色の持つ意味に関して疎い。

 この世界に来て初めて色に触れたんだ、灰色の意味以外は知らなかった。



 でも――。



 私はお母様の腕から飛び出すと、花壇に直行してそこに咲く一輪の花を指差す。

 桃色……いや、もっと薄いような、これは……そう、多分桜の色、白っぽいのにどこか赤みがかった優しい色、文章ではほんのり赤みがかった白だと言っていた気がする。



 あとから来たお母様にその花を指差して見せる。



「お母様の色!」



「このお花が?」



「うん。私も、こう言う色になれるかなぁ?」



「……」



 お母様が後ろから私を抱き上げてくれ、私の頭に顔を埋めた。少しくすぐったい。



「たくさんの色に触れて、たくさんの色を纏って、そしてそうなりたい色が見つかったのなら、きっと素敵な色になれるはずよ」



「頑張る」



 私が鼻を鳴らしてそう言うとお母様が微笑み、頭を撫でてくれた。

 そしてふと、屋敷からメイドが走ってきたのに気が付き、私は走ってきた彼女に目をやった。



「奥様、お嬢様、旦那様がお戻りになられましたよ」



「わっ」



 私はお母様と目を合わせて喜び、そのまま屋敷の中へと駆け出していく。

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