捜10-02 蛟庇舍
安城の平都縣に住む尹氏は郡治所から東に十里のところに住んでいた。そこは黃村と呼ばれていた。ここに尹家の田畑、および田畑の管理小屋が構えられていたのである。
元嘉23年六月、つまり文帝劉義隆の治世の末期、尹家の子はこのとき十三歳であったが。かれが小屋の管理をしていると、二十歳ほどの人物が白馬に載り、傘をさし、從者を四人連れてやってきた。みな黃色の服を着ており、東方よりやってきた。
門にたどり着くと、尹くんに言う。
「しばし休ませていただきたいのだが」
尹くんが受け入れると青年は小屋の中庭に置かれたベンチに腰掛けた。従者が傘を持ち、青年に代わって掲げる。尹くんが彼らを見れば、その着物にはどこにも縫い目がない。馬には五色の斑点があったが、むしろ鱗という感じであり、毛は生えていなかった。
やがて雨雲が立ち込めてくると、青年は再び馬に乗り、暇を告げた。門を出て少しすると尹くんに振り返り、言う。
「明日、また来ることになろう」
尹くんが西へゆく彼らの後ろ姿を見送っていたら、馬が中空に踏み出し、ぐんぐん登っていった。ややあって雲がどんどんと集まり、昼間にも関わらず真っ暗になった。
翌日、にわかに洪水が周囲を襲いかかり、山谷は荒れ狂い、丘や谷も水浸しとなり、尹家の小屋もあわや飲み込まれかけた。そこに6メートル近くの大きさの大蛟が現れ、尹家の小屋を覆って洪水から守るのだった。
安城平都縣尹氏,居在郡東十里,曰黃村,尹佃舍在焉。元嘉二十三年六月中,尹兒年十三,守舍。見一人年可二十許,騎白馬,張繖,及從者四人,衣並黃色,從東方而來。至門,呼尹兒:「來暫寄息。」因入舍中庭下,坐牀,一人捉繖覆之。尹兒看其衣,悉無縫,馬五色斑,似鱗甲而無毛。有頃,雨氣至。此人上馬去,回顧尹兒曰:「明日當更來。」尹兒觀其去,西行,躡虛而漸升。須臾,雲氣四合,白晝為之晦暝。明日,大水暴出,山谷沸湧,丘壑淼漫,將淹尹舍。忽見大蛟長三丈餘,盤屈庇其舍焉。
(捜神後記10-2)
尹くんはこれ、たぶん少年なりにもてなしたんでしょうね。そうした誠意あるふるまいが蛟の心を打ったのでしょう。うーん霊獣紀、今日も霊獣紀!




